十月三十一日の夜、外からは子供達の元気な声が聞こえて騒がしい。
今夜は子供達が待ちに待ったハロウィーン。
仮装をして家を訪問してお菓子を貰うという行事だ。

うちにも何人か可愛いお化けが訪問して来た。
用意していたキャンディやチョコレートをあげるときゃっきゃっと無邪気に騒いでいた。
可愛かったなぁ、と思い出すと顔が自然と綻ぶ。



『もう来ない、かな?』



お菓子はたくさん残ってるからいつ来ても大丈夫。
ふと、二階の窓から外の様子を窺うと子供ではなく何やら見慣れた姿が見えた。
まさか、と思った瞬間に鳴る訪問ブザー。



『…居留守決定』



何しに来たんだか、悪い予感しかしないもん。
そう小さく呟くと私の考えを見透かしたように相手は何度も何度も訪問ブザーを鳴らす。

イライラが限界を超えると乱暴に階段を下りて玄関の扉を開けた。



「ハッピーハロウィン、名前。トリック・オア・トリート」



扉を開けて視界に入ったのはふわふわとした癖のある金の髪。
訪問ブザー連呼なんてなかったように、にっこり笑うとハロウィンのお決まりのセリフで図々しくお菓子を要求してきた。

彼は我らボンゴレファミリーのボス。
漆黒のマントを纏いヴァンパイアの仮装をしていた。

嫌な予感は的中。
マフィアのボスが一体、何をしてるの、ジョット…!!



『はぁ…、大きな子供だね、ジョット。ジョットにあげるお菓子はないけど訪問ブザー連打の悪戯したからおあいこね』

「悪い、名前…こいつ、名前の家に行くと聞かなくてな」

『子供を持つと大変だぁ…、G…』

「子供なんて冗談やめてくれ、…今じゃすっかり保護者だけどな」

「二人とも随分と言うじゃないか」

「仕方ないでしょう、君は子供のように甘い思考なんですから」

『あれ?スペードもいたんだ』



スペードもGのようにジョットに誘われたんだろう。
横目でジョットを見るとやれやれとオーバーにリアクションをした。



「えぇ、仕方ないので付き合ったまでですよ。それでは、名前…」

『何…?』

「今宵はハロウィン。ですから…」

『…あぁ、だからそんな仮装みたいな服を着てるんだね』

「私にとってはこれが普段着です、失礼な!」

『いつも思うんだけどさ、もっとラフな服でいいのに。』

「……いいでしょう、別に。話を戻しますよ」

『ふふっ、何?』



どうせトリック・オア・トリートとお決まりのセリフを言うつもりだろう。
日頃、ジョットと意見の食い違いが多いスペード。
仕方ないからと言ってもちゃんとハロウィンに付き合うなんて優しい。



「名前、トリック&トリート」

『………え?』

「ですから、トリック&トリート」

『ト、トリック……オア?』

「いえ、トリック&トリートです。もてなして頂き、そして君に悪戯もしたい」

『あ、あの、スペード?』

「その手があったか、オレも&にすればよかった」

「ジョット、お前…」

「………冗談だよ、G、オレがそんな事をするとでも?」

「いつも好き勝手、行動する奴がしない訳ない」

「……」

「んー…その困った顔、とてもいいですね」

『スペード、少し近くない?』

「えぇ、近づいてますからね…」

「そこまで。逮捕するよ、変質者」

「……!」



私に頬に触れようとしたスペードの手にかけられたのは手錠。
手錠をかけた主を見るとアラウディだった。

息を切らしている姿は珍しい。

もしかして、急いで家まで来てくれたのかな?



「間に合ったみたいだね。よかった。」

『えっと、アラウディ…、ありがとう…?』

「あぁ、これくらい構わないよ」

「何、普通に礼を言ってるのですか、名前…!!大体、アラウディが何故、ここに…!」

「オレが通報しておいたんだ。ジョットとスペードが何かしら騒ぎを起こすだろうからな」

「…失礼だな。オレは変な事などしない。考えていただけだ」

「私も変な事などしませんよ。アラウディ、手錠を外しなさい。これでは名前に悪戯が出来ないでしょう」

「悪戯する気満々じゃないか。わいせつ罪で逮捕するよ。」



アラウディの登場により一気に騒がしくなった我が家。
子供達が大人たちの口喧嘩を冷ややかな目で見つめ我が家を避けている。

うぅ、ご近所さんの視線が痛い…!!



『ねぇ、とりあえず皆、入ったら?何か軽いものでも作るよ』

「いいのか?そういえばオレ、夕食、まだだったんだ…」

「そう言われれば、オレもだ。」

「私もです、名前の手料理が食べられるなんて嬉しいです」

「何を言ってるんだい、君はこれから牢屋だよ」

「な…っ」

『まぁまぁ、アラウディも入って?』

「………」

『ね?』

「…まぁ、君がそう言うなら」

「ヌフフ、君も甘くなったものですねぇ」

「煩い」



こうしてジョット、G、アラウディ、それにアラウディに手錠をかけられ連行されているスペードを家に招きいれた。

さてと!何を作ろうかな。
みんながいるから特別なワインもあけよう!

そう思っていたのに冷蔵庫を開けて呆然。



『あ……』

「どうした?」

「どうかしたのか」

「おやおや…」

「冷蔵庫がほとんど空でよく客を招けるね」

『……はは、とりあえずお菓子ならたくさん用意してあるよ?』












可愛い子供たちを迎える準備は万端だったのに!



end



2010/10/31
お題配布元:TOY

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