ある日の穏やかな昼下がり。 仕事仲間の一世とGと一緒に、のんびりティータイム。 Gが入れてくれた紅茶と用意してくれたお菓子は疲れをとってくれる。 一世とG。 この二人は昔からの友人、いわゆる幼なじみで、とても仲がいい。 その上、Gは一世の右腕的存在だから、いつでも傍にいる。 そんな二人を見ていると気になる事が一つ浮かんだ。 『ねぇねぇ、二人とも』 「ん…?どうしたんだ、名前」 『二人ってさ…』 「オレ達がどうしたって言うんだよ」 『恋人っているの?』 「な…っ」 「恋人?」 『うん、恋人』 突然の質問にGは少し動揺していたけど一世はあまりピンと来ていないらしく首を傾げた。 …うん、一世は何だか想像通りの反応だ。 それに比べてGは意外な反応。 ぶっきらぼうでクールなイメージがあるから、こんな話題もサラッと流すと思っていたのに。 もしかして恋人、いるのかな? 何だか、すごく気になっちゃう。 『ねぇ、G!動揺してどうしたの?もしかして……』 「馬鹿。違ぇよ、お前の口から恋愛云々の話が出て驚いただけだ」 『えっ、そんなに意外な質問だった?』 「あぁ。……何でそんな事を聞いたんだ?」 『一世とGって、いつも一緒にいるでしょ?仕事ばっかりだしプライベートが気になっちゃって』 「確かに言われてみりゃ一世の世話を焼く時間が一日の大半を占めてるな…」 『でしょ?一世のお世話係でGの婚期が遅れちゃうよ!』 「婚期って女じゃあるまいし…」 「世話係についてのツッコミはなしなのか、G…」 「仕方ねぇだろ」 「……そう、だな。確かに迅速なサポートがあってこそ今のオレがある。…いつも感謝しているぞ、G。」 「…構わねぇよ。これからも、てめぇの好きなようにすりゃあいいさ。とことん付き合ってやる」 「…あぁ、これからもよろしく頼む」 『はい、はーい!素敵な友情劇、今はストップ!もう一つ質問していい?』 「…今度は何だよ」 面倒くさそうな表情をしつつもGは話を聞いてくれるみたい。 Gってば何だかんだ優しいよね。 てっきり下らねぇ事を話題にすんな!ってげんこつを覚悟してたのに。 Gがちゃんと私を相手にしてくれる事が嬉しくてニコニコしていると一世も穏やかに微笑み私達の話に耳を傾けていた。 『じゃあね、次はGの好きなタイプが知りたい!』 「お前、また変な質問を…」 『いいじゃない!せっかく何だから私の質問に、とことん付き合ってよ!』 「ははっ、G、これは答えないといけない雰囲気だな」 「ジョット、てめぇも答えろよ」 「好きになった人がタイプ、とでも言っておこうか」 「逃げただろ」 「早い者勝ちだ。さぁ、次はGの番だぞ、オレと同じ答えは認めない」 『好きなタイプが答えられないなら、こんな恋愛したい!っていう理想でもいいよ!』 「好きなタイプから随分とハードルを上げたな」 『せっかくだからね、ふふ、何だか楽しいなぁ』 「お前ら二人で楽しんでんじゃねぇ!……大体、こういうのは同性と話すもんだろ、名前。んな恥ずかしい事を語れねぇよ」 『えー、恋愛から程遠そうなGが気になるのに……って、ちょっと待って!』 「どうしたんだ、名前」 『語れないって言うなら理想はちゃんとあるんだ?』 「……!」 図星だったようでGは「しまった!」と言うような顔。 その顔は私と一世の悪戯心に火をつけるには十分。 一世の顔を見ると一世も私と同じような笑みを浮かべていた。 「G、水くさいじゃないか。」 「はぁ?」 「オレにも話せないのか…?」 「な…っ」 『G!そりゃ私は一世に比べたら、まだまだ付き合いは浅いけど仲間じゃない…!』 「そうだぞ、G、名前もオレ達の大切な仲間じゃないか」 『一世…!そんな風に思ってくれてるなんて…!』 「当たり前だろう、名前」 『一世…っ!!』 「名前…」 『……』 「………」 『……ということで!G、隠し事なんて水くさいよ!』 「てめぇら完璧、楽しんでるだろ」 「そんな事はない。なぁ、名前」 『そうそう!ねっ、一世!』 一世と一緒に笑うとGは眉間に皺を寄せ、ぴくりと口元を引き攣らせている。 これはそろそろ、この辺にしておかないと後が怖いかもしれない。 「…一世、名前、わざとらしい小芝居やめろ」 『ごめん、ごめん!これくらいにしとくよ』 「少し悪乗りしてしまったな」 「……」 素直に謝るとチッと舌打ちをしてGはテーブルに肘をついた。 その状態から、まだ私を睨んでいるから両手を合わせて、もう一度、ごめんと謝った。 『G、機嫌を直して?』 「……」 『…G?もしかして本気で怒っちゃった?』 「………、付き合ってる奴はいねぇ。」 『えっ?』 「いきなり質問に答えて、どうしたんだ?」 「…いつまでも意識されねぇのが馬鹿らしくなってきてな」 「ふ…っ、そうか。ならば邪魔者は退散しよう」 「……やっぱり気づいてやがったな。」 「何年、共にいると思っているんだ、G。」 「……」 「先程の水くさいはオレの本音だ。」 「…あぁ、悪かったな」 「そう言うならば今度、ゆっくり話を聞かせてもらうとするか」 それでは、また後で。 そう言い残して一世は仕事に戻って行った。 二人で通じ合ってる中、私は置いてきぼり。 一体、何が何なの?二人は何を言ってたの? 『……変なの。ねぇ、私達もそろそろ仕事に戻ろうか?』 「待て」 『ん?どうしたの?』 「好きなタイプが答えられないなら、こんな恋愛したい、でもいいっつってたよな」 『え?あぁ、うん…言った、けど…?』 「……」 え……、な、何? 何で真面目な顔で私を見てるの? そんなに真っ直ぐ見つめられたら、ドキドキしてしちゃった。 「理想ならあるぜ」 『……?』 「オレは」 『G……?』 「……」 オレはお前と恋愛がしたい。 Gは私を真っ直ぐ見つめ、いつもより低い声で、はっきりと告げた。 先程のような動揺はなく挑発するように口角を上げて見せている。 今まで仲間以上に思ってなかった私に対して、これから覚悟しろよ、オレを意識しろと言わんばかりだ。 『…ー…っ!?』 「さぁ、オレは全部、答えたぜ。今度はオレの質問に答えてもらうとするか」 『へ…!?』 「お前もちゃんと正直に答えろよ、名前」 『な……っ』 「隠し事なんて水臭い、…そうだろ?」 『……っ』 意地悪そうに笑うGの口から、どんな質問が飛び出すやら。 きっと彼は何でも正直に答えないと解放してくれないと思う。 質問を待つ数秒さえGに意味深に見つめられて、自分でも戸惑うくらいドキドキしていた。 「…名前」 『な、なに……?』 「……オレの女にならねぇか?」 『……っ!?』 そんな質問、反則でしょ? ノーなんて答え、出せる訳がない。 真っ赤な顔でGを見つめると彼は少し驚いた顔をしていたけれど、すぐ余裕のある笑みを浮かべた。 私の表情を見て、きっと彼は全部、分かったんだろう。 私の気持ち、私の答えを。 例えば、こんな恋の始め方 どんなに強引でも、あなたなら許せちゃう。 end 2011/5/1 |