***


『やった!私の勝ち!』

「そもそも勝負なんてしてないだろうが」

『な…っ!ちょっと、早すぎない!?』

「そりゃ急いだからな。」

『もう少し遅いと思ってたのに』



口を尖らせるとGは、くっと笑ってコーヒーカップを私の頭に乗せた。
Gが手を離す前に頭に手を伸ばしコーヒーカップを取る。



『もう!普通に渡してよ!』

「先に行った罰だ」

『最初にGが先に行くとか言うからじゃない』

「それは……、つか元はと言えばお前が…」

『私?私が何かした?』

「…してねぇ、けどよ。」

『でしょ?』



そう言って椅子に腰をかけるとGは隣に座った。
少し納得をしてなさそうな表情。
どうしたのか、と声をかけると彼にしては珍しく小さく呟いた。



「Dが好きなのか?」

『え…?』

「だから、Dが好きなのかって言ってるんだ。静かに頭を撫でられてよ」

『Gはあまり良く思ってなさそうだよね』

「……まぁな」

『スペードさんの事は好きか嫌いかだったら好きだよ』

「……」

『それにアラウディさん、ランポウ、ナックルさん、雨月さん、ジョットのことも好きだし、もちろん…』



Gも好きだよ。

そう言おうとして一瞬、戸惑う。
いくらlikeの意味と言えど面と向かって言えなくてコーヒーカップに視線を移して「Gも好きだよ」と呟いた。



『……っ』



皆の事はちゃんと好きだって言えたのにGだと顔が熱くなる。
自分を落ち着かせるため、温かいコーヒーをぐっと飲んで一息ついてから言葉を続けた。



『…Gだって皆のこと好きでしょ?仲間だもん』

「……まぁ、皆、何だかんだいい奴らだ。」

『…ねぇ』

「……んだよ」

『その中に私も入ってる……?』

「………」

『G…?』



言葉に詰まっているG。
考え事をしているのか黙ったまま、ぼーっとしている。
覗き込むとハッと我に返ったようだった。



『ちょっと!人の話、聞いてた?』

「あ、あぁ、聞いてたぜ」

『嘘!肝心なところで黙るなんて酷いなぁ、私の幼なじみは!』

「わ、悪かったって。ぼーっとしちまったもんは仕方ねぇだろ」

『そう思ってるなら、ちゃんと言ってよね』

「何をだよ」

『皆も私の事も大好きだって!』

「はぁ!?」



ニヤリと笑うと、からかわれている事に気づき顔を引き攣らせるG。



「んなの、早々、言葉にするもんじゃねぇだろ」

『言葉にした事ないくせに』

「…後悔すんぞ」

『はぁ、何で?』

「ま、遅かれ早かれ、いつかは言うつもりだったけどな」

『えっ、皆が究極に大好きぞーっ!!って?』

「馬鹿。…お前の事が好きだって事を、だ」

『へ……?』

「言っておくがお前みてぇにからかってるつもりはねぇからな。」

『……っ』

「名前、お前が好きだ」



真剣な顔のG。
意味、分かるよな?と真っ直ぐに見つめられた。

幼なじみとしての好きじゃないの?

本当に、私のことが好き、なの?



『…ー…っ!?』



嬉しい。

すごく嬉しいけど、その余裕そうな顔、ちょっとだけ悔しい。
私はGの言葉でこんなに顔が熱くなってるっていうのに。



「まぁ、元から返事なんて期待してねぇから、今まで通りで頼むぜ」

『G…っ』

「ん?」



ガタッと音をたてて立ち上がる。
Gが私を見上げた瞬間、額にキスを贈った。



『……わ、私だってGのこと大好きだよ』

「…ー…っ!」



呆然と私を見つめるG。
見つめられたら、ますます顔が赤くなった。

その私の表情を見てGは「幼なじみとしての好き」ではない事に気づいたようだった。



「名前…」

『と、という事で……っ』

「ん…?」

『…〜…っ』



恥ずかしさが最高潮に達した私はGに背中を向けてダッシュ。

目指すは出口、一直線。



「てめぇ!何で逃げるんだよ、ふざけんな…!!」

『だって、恥ずかしいんだもん!』

「……っのやろ。待て!」

『やだ!』



追いつかれるのも、捕まるのも時間の問題。

だけど、今度は先に行くことも置いていく事もしないよね?

きっと隣を歩いてくれる。



だって、二人の気持ちは一緒なんだから。












「待てって言ってんだろ!」

『やだ!』

「まだ逃げるつもりなら捕まえたら絶対、離してやんねぇぞ」

『…っじ、Gならいいよ!』

「な……!」



end



2011/04/29

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