『……そ、それにしても、まさかハロウィンに参加する事になるとは思わなかったよ』

「……、何で?白蘭だってハロウィン楽しんでるんだろ?」

『今頃、正一あたりにしつこく絡んでそう』

「正一は菓子、持ってなさそうだな…」

『悪戯されてそうだね…』

「……あぁ」

『まぁ、ハロウィンに限らずいつも白蘭にからかわれてるから普段とあまり変わりないかも』

「……、…だな」



ゆったりした時間が鼓動と熱くなった頬を落ち着かせてくれる。
深呼吸をすると、やっとまともにスパナの顔が見れた。

数分ふりに見たスパナ。
さっきまでは緑茶を飲んでいたはずなのに今はまたキャンディーを食べていた。



『………』

「名前…、どうした…?」

『…何でもない』

「…なら、いい。…そろそろ仕事に戻るか。今日中に仕上げたい」

『うん、私はデータの整理すればいいんだよね?』

「あぁ、それと後で正一の所に行ってデータ受け取ってきてくれ」

『了解』

「………」

『ん?どうしたの、スパナ』

「……、…Trick or treat」

『えっ?』

「……」

『あ……ハロウィンか!そういえば、スパナは言ってなかったね』

「あぁ。」

『お菓子、辛いミントガムでいいならあるけど?』

「……、…遠慮する」

『じゃあ、甘いものは仕事が終わった後で買ってきてあげる』

「……今、欲しい。」

『そう言われても今はキャンディを食べてるじゃない?』

「………」

『あ、白蘭達から貰ったのならあるけど…』

「……、それはいやだ」

『うーん、じゃあ、他に甘いものなんて持ってないわよ。我慢して?』

「……、あるだろ、甘いもの」

『……?どこに?』

「……ここ。」

『…ー…っ!!』



スパナにグッと引き寄せられたと思ったら唇に柔らかいものが触れる。
甘い香りが鼻に届いた後、すぐにスパナが食べてるキャンディの味が口内に広がった。

数秒後、唇が離されて、やっと何をされたか理解して唇を手のひらで隠した。



『…ー…!!』

「……ごちそう様」

『ス、スパナ…っ!?』

「……どうした?変な顔してる」

『だって、今…っ!!』

「だめだったか?」

『だめ、じゃない…けど…っ』

「……、なら、いいだろ。…もう一回する?」

『な…っ!!』

「あ……Trick or treatって、もう一度、言った方がいいか?」

『そうじゃなくて!な、何で…!!』

「……?何でって…?」

『だ、だから!何でキスしたのかって言ってるの!ハロウィンの悪戯って言ったら本気で怒る…!!』

「名前が好きだからに決まってる」

『……!!』

「また変な顔してるな」

『…〜…バカ!!正一の所、行ってくる!!』

「あ……」



私はバンッとチャブダイを叩き、勢い良く作業場を飛び出した。

火照った頬を両手で包み廊下を早歩き。
だけど全然、冷めてくれない。

突然のキス、告白。
スパナのマイペースに私はいつも狂わされる。

今度は私がスパナのペースを崩すくらいの事してやりたい。
そう思っていても今は気分を紛らわせたくて仕方がなくて、ふと手に持っていたスパナから貰ったキャンディをやけになって口に含む。

何か食べれば気も紛らわせる事が出来るだろう。
そう思っていたのに、先程のキスと同じ味が広がって心臓がドクンと大きく鳴った。



『…ー…!!』



甘い味に先程の出来事を鮮明に思い出してしまう。
気分を紛らわせたかったのに、これでは逆効果。
余計にドキドキしてしまった。



『……っ』



甘いものは好きじゃない。
好きじゃないはずなのに、このキャンディの味は、嫌じゃない。

それは、きっと…












たまには甘いものも悪くない、なんて思っちゃう。



end



2008/10/04
長月様へ!

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