私にとって初めての後輩、フラン。
ベルに強要されたカエルの帽子を被ってて可愛い。
かなりの毒舌だけど、それもまた、ご愛嬌。

ヴァリアーに拉致られた日から毒を吐きつつも頑張ってる。
そんなフランにご褒美としてクリスマスプレゼントをあげようと思ったけれど彼が欲しいものが分からない。

だから、クリスマスが近づいてきた、ある日、私はそれとなく聞いてみた。



「欲しいものですかー?」

『うん!』

「あー…お気遣いなくー名前センパイー」

『べ、別にフランにあげるって訳じゃないからね!?』

「はぁ、そうですかー」



いつもと変わりない表情で私を見るフラン。
もうすぐクリスマス、プレゼントという単語でピンとしたらしくフランには私の考えがばれているみたい。

だけど、気付かないふりをしてうーんと唸って考えてくれてる。
後輩にいらぬ気遣いをさせてしまって先輩として情けないような気がする。



「あ」

『……!欲しいものあった!?』

「じゃあ、簡単なもので堕王子の首とかー」

『そんな物騒なもの、サンタさんはプレゼントしないから!』

「チッ」

「舌打ちしてんじゃねぇよ、クソガエル」

「あ、プレゼント候補ー」

「やんねぇよ、刺されてぇの?ナイフならいくらでもやるぜ?」

「もうブスブス刺してるじゃないですかー、やめてくださいよ、ベルセンパイー」

「おい、名前、フランに気を遣うことないって」

『何が?』

「どうせ、お前の事だからクリスマスにプレゼントとか考えてるんだろ?」

『う……、ばらさないでよ…』

「ていうか、元々バレバレですけどねー」

『うぅ……、じゃあ、単刀直入に聞くけどフランの欲しいものは何!?』

「だから堕王子を暗殺してくれればミーはものすごくハッピーなクリスマスになるんですけどー?むしろ今すぐお願いします、名前サンタさんー」

『だから!そういう物騒なのはなし!サンタさんはそんな事しません!』

「えー…でも映画とかで割とサンタクロースが殺人鬼って奴ありますよー、ありですよ、ありー」

『なしです!それは映画!映画の話でしょ!』

「じゃあー…、この趣味の悪いカエルを脱ぐ許可か堕王子暗殺許可が欲しいですー」

「そりゃ未来永劫ねぇな」



カエルの帽子をナイフでペシペシ叩くベル。
面白そうにししっと笑うベルにフランは酷くむすーっとして一言。



「堕王子ー」

「だから堕王子じゃねぇっつーの、クソガエル」

「というかベルセンパイ、何でここに来たんですかー、邪魔なんですけどー」

「ちょっとな、どうでもいいだろ。」

「よくないから聞いたんですけどねー…あ、そうだ、ベルセンパイー」

「今度は何だよ」

「ミーからのクリスマスプレゼント、受け取ってくれますー?」

「は?」

「何と特注のカエル帽子ー…」

「てめぇがちゃんと被っとけ」

「ゲロッ」



フランとベルが同じ場所にいると口喧嘩が延々と続く。
普段は別に困る事はないけれど今は話がまったく進まなくて困ってしまう。



『ねぇ、ベル』

「なんだよ、名前」

『フランをからかうのもそれくらいにしてよね!話を戻していい?』

「話も何もプレゼントなんてやる必要ねぇだろ」

「うわー、今のやり取りってヴァリアーではからかう程度のレベルなんですかー」

「てめぇは黙ってろよ、つか、そういうお前は貰うなら何がいいんだ?」

『私?』

「そ。女なら何かあんだろ。」

「ベルセンパイ、まさかそれが目的でここに来たんじゃー…」

「フラン、少し黙ってろ」

「ミーを出しにして聞き出そうって所がまさに堕王子ですねー」

「……」

『あ……』



私の欲しいものを聞いてきたと思ったら、ベルとフランは二人でこそこそ話し出した。

だけど、こそこそと話すのはほんの一瞬だけ。
気がつけば再び雲行きが怪しくなり、また口喧嘩が始まってしまった。

ベルはいつものように笑うとナイフを取り出しカエル帽子に向かって投げた。



『…また始まった。ねぇ、二人ともやめなよ。暴れたらボスに怒られるよー』

「ししっ、やだ。だってオレ王子だもん。」

「堕を忘れてますよ、堕をー」

「忘れてねぇよ、元からついてねぇし」

「ゲロッ、もういい加減、ナイフを投げないでくださいー、痛くて涙が出てきますー、名前センパイーオタスケー」

『だ、大丈夫?フラン?』



私がフランのカエルに刺さったナイフを丁寧に取って返すとベルはチッと舌打ち。
素早く私の後ろに隠れたフランはべーっと舌を出してベルを挑発していた。



「てめぇ、後で覚えてろよ」

「嫌ですー」

『もう喧嘩はやめてよ!フラン、欲しいものを考えてくれた?』

「……物騒な事じゃなければ何でもいいんですかー?」

『ん?どういう事?』

「物じゃなくてもいいですかー?って事ですー」

『例えば?』

「イヴとクリスマス、ミーと遊んで欲しいですー、息抜きにどこか遊びに行きましょうよー」

『フラン…』



それがプレゼントじゃだめですかー?と問われたら、だめだなんて言えるはずがない。
遊びに行きたいなんて、さっきの物騒なプレゼントに比べたら可愛いお願いじゃない!?



「ちょっと待て。」

『どうしたの?』

「んなの、いい訳ねぇだろ」

『え?別に私はいいけど?』

「だめだっつの。王子が許可しねぇ。」

「……」



私の後ろにいるフランはベルの前に立つと、またこそこそと内緒話。
そんな二人を見ていると実は仲がいいんじゃないの?と思ってしまう。
喧嘩するほど仲がいいとか言うもんね。



「堕王子の許可なんていらないですよー、ベルセンパイと名前センパイ、ただの同僚でしょうー?」

「……ッ」

「おぉ、ベルセンパイが言い返せないなんて初ですねー、実は相当、長い片思いしてたりーしてなかったりー?」

「…いい加減にしねぇと刺すぜ?」

「おぉ、図星ー。見かけによらず一途なんですねー」

『……?ねぇ、何の話?』

「おい、名前。」

『ん?』

「オレも可愛いくないコーハイに頼まれて仕方ねぇからイヴとクリスマスに付き合ってやる」

「ミー、そんな事は一言も頼んでないんですけどー、むしろ遠慮しますー」

「うるせぇ、クソガエル」

「少し静かにしてくださいー、あのー名前センパイは何か欲しいものとかありますー?」

『えっ?』

「ミーもお返しをしたいので是非、教えて欲しいですー、何でもいいですよー」

「抜け駆けしてんじゃねぇよ。名前、欲しいもんあるならオレに言えよ。特別に何でも用意してやっから」

『何でもいいの?フランみたいに物じゃなくても?』

「おぅ」

「もちろんですー、堕王子の命でも何でもいいですよー」

「もう一度、刺されてぇのか、フラン」

「えー、名前センパイの願いもミーの前々からの野望も叶って一石二鳥、クリスマスの奇跡でいいと思うんですけどー」

「んだと、てめぇ…!!」

『こらこら、喧嘩しないで!プレゼント、決めたよ!』

「いいぜ、言ってみろよ」

「どんと言ってくださーい」

『それじゃ……』












『ベルとフランが少しでも仲良くなって欲しいなぁ』

「ゲッ」

「ゲロ…ッ」



end



2010/12/25

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