十二月二十二日。 本格的に寒くなってきて震えてしまう。 背中を押すように吹く風に縮こまって私とフランはベル先輩の誕生日パーティーの買出しに来ていた。 それぞれ二袋ずつ荷物を持って、今は帰り道。 フランは私と同期にヴァリアーに入った男の子。 年も近く一緒にいる機会が多いからか、季節が何度か変わった今では同期の男の子から恋愛的な意味で気になる人になっていた。 面倒な買出しだけど、フランと一緒だから嬉しいな。 『うー、寒いー』 「寒いですねー、というか新入りだからって何でミー達が買出しに行かないといけないんですかー」 『そりゃ、ベル先輩の誕生日だから仕方ないじゃない。…確かに面倒だけど。』 「ベルセンパイのためっていうのがムカつくんですよー、めんどいですー」 フランがはぁと息を吐くと空気がふわりと白くなった。 そんなフランに苦笑いして私は夜空を見ながら息で手を温めた。 クリスマスが近いからか町はイルミネーションで彩られていて綺麗。 もうすぐクリスマスだね、と話題にするとフランはいい事を思いついたように声を上げた。 「いっそクリスマスとベルセンパイの誕生日を一緒にパーティーすればいいんですよー」 『それ、一番、怒るんじゃないかな…』 「あの人達はお酒とご馳走で騒げればいいんじゃないですかー」 『まぁ……うん、そんな感じがしなくもないけど…』 「このまま逃げるのってありですかねー」 『それはなしですねー』 フランの真似をして答えると隣では「チッ」と舌打ちが聞こえる。 そんなにベルセンパイのために買出しするのが嫌なのか、フランは。 いつも、あんなに激しい喧嘩してたら頷けるといえば頷けるけどね。 「寒いしお腹、空きましたよー名前ー。丁度、レストランもありますし食べていきませんー?」 『遅くなったら怖いでしょ!お腹が空いてるのは私も同じだってば!早く帰ろう!』 「こういうのはスクアーロ隊長がやればいいと思うんですけどー」 『ここで愚痴ってても仕方ないでしょー、もう!』 「だってー」 『寒いならこれをあげるから。使い捨てのカイロ。』 「……確かに、カイロは暖かそうですけどー」 『何?』 「荷物を一つ置いてくださいー」 『え……?』 「いいから置いてくださいー」 『……?』 フランに言われるまま片方の荷物を地面に置く。 何を考えているのか、フランはその荷物と自分の分をまとめて片手で持った。 『ちょっ、フラン!重いでしょ?私も持つから!』 「子ども扱いしないで下さいよー、これでもミーは男なんですから軽いくらいですー」 『だけど…っ』 「ごちゃごちゃ言ってないで、ほらー早くしてくださいよー、寒いんですからー」 『えっ?その手はなに?』 「……」 『あっ!そっか、カイロね!はい、あげる!』 「……んな訳ないだろ、バカ」 『な…っ言ってくれなきゃ分かんないよ!!』 「…こういう事ですー」 『へ……?』 いきなり手を握られてびっくりしてフランを凝視。 そのまま歩き出されると私も歩くしか選択肢はなく、フランのペースで隣を歩く。 お互いに冷えた手、だけど緊張からか熱を持ってしまう。 フランの事だから別に深い意味はないと思うけど恥かしくて顔が見れない。 『フ、フラン……えっと、手……』 「……」 『……フラン?』 「カイロなんて一時的に暖かいだけじゃないですかー」 『……?』 「だったら最初から欲しくないです、からー」 『だから?』 「ミーは名前の方がいいですー」 『……っ』 寒いのは嫌だし買出しも最初は面倒だって思ってた。 だけど、こんなのも悪くない。 体温が伝わってぽかぽかとお互いの手が暖まっていく。 手から熱が伝わって、心も温かくなる。 意地悪なベル先輩の誕生日にちょっとだけ感謝、かな。 一時のぬくもりじゃなくて ずっと君のぬくもりで温めて 誰よりも近い距離で。 end 2009/12/22 |