今日はヴァリアーの同僚であるスクアーロのお誕生日!

日頃、お世話になってるから何かプレゼントをしようと思って私は大広間で悩んでいた。

密かにスクアーロに片思いしてるから喜んでもらいたい。

でも、ここで問題が一つ発生。

彼は一体、何をあげたら喜ぶだろう?



「何だよ、お前、スクアーロにプレゼントやる気?」

「名前は隊長大好きですからねー」

『悪い?あーあ、何がいいんだろうなー』

「……」

『どうしたのよ、フラン』

「そう素直に返されると面白くありませんー」

「ししっ、同感」

『人で遊ぼうなんて悪趣味だよ』

「というか、スクアーロ隊長の好きなものなんて簡単じゃないですかー」

『えっ?』



悩んでいた私の所にやって来たのはベルとフラン。
どうやらフランはスクアーロの事をよく分かっているらしい。

でも、スクアーロの好きなものなら私だって知ってる。
スクアーロの好きなものと言えば、食べ物だったらマグロよね?



『まさか私に漁に出ろって言うの?』

「どう考えたら、そういう発想が出てくるんですかー」

『だって、スクアーロの好きなものでしょ?マグロ好きじゃなかったっけ?』

「もっと好きなものもあるんですよー、ねぇ、ベルセンパイー」

「まぁ、確かにあるな。」

『なになに?剣?戦い?』

「……」

『肩叩き券ならぬ修行付き合っちゃう券でもプレゼントした方が実用的かな?』

「……こりゃだめだ。」

「まぁ、名前ですからねー」



遠い目をして呆れている二人は何だか今日は妙に仲がいいように思えた。

私一人、除け者みたい。
失礼しちゃうよ、その態度!



『っていうか、二人はスクアーロに何かプレゼントしないの?』

「ん?」

『プレゼントよ。しないの?』

「まぁー、たまにはしてやってもいいかなとは思ってますよー」

「ししっ、借りを作っておくのも悪くねぇだろ」

『へぇ、珍しい。あっ、じゃあ、プレゼントはもう用意したの?』

「これからですー」

「つーか、獲りに来たって感じ?しししっ」



そう言ったベルとフランは大きな網と縄をどこからともなく取り出した。

一体、何で網と縄なんか持ってるんだろう?



『獲りに来た…?やっぱりマグロ…って、ヴァリアー本部にいる訳ないか…』

「お前、マグロから離れろよ」

『だって、二人とも……、ハッ!』



急に殺気を感じてベルとフランから距離を取った。

一体、何事かと思っていたら不意打ちに失敗した二人は不機嫌な様子で私に話しかける。



「チッ、大人しく捕まれよ」

「たまげましたー、名前って意外と反射神経いいんですねー」

『何で私を網で捕まえようとしてるの!?』

「そりゃ、お前がプレゼントだしー」

「ちょっとスクアーロ隊長と食事に行ってくれればいいんですよー」

『はぁ!?そんなの嫌よ!』

「…ー…ッ!」

「あ……」

「ゲロッ」

『何よ、二人とも…、私に何かついて……』



ベルとフランは口を開けて私を見ている。

何でそんなに驚いているのかと、私は自分の身なりを確かめたけれどどこも変わった所はない。

だったら私の後ろ?一体、何があるの?



『……?』



そっと振り返ると見慣れたヴァリアーの隊服。

そのまま視線を上に向けると、そこにいたのは話題にしていたスクアーロだった。



『あ、スクアーロ…』

「う゛ぉ゛ぉい…」

『スクアーロ?』

「隊長は今、ブロークン状態ですからそっとしてあげた方がいいですよー」

『何かあったの?』

「たった今、お前が言った一言が突き刺さってんじゃねぇ?」

『私が言った一言?』



別にフランみたくスクアーロの悪口を言ってた訳じゃないのに、傷つく要素があった?

先程の会話を思い出していると、ベルとフランが溜め息を吐いてフォローするように話しだした。



「ちょっとスクアーロ隊長と食事に行ってくれればいいんですよーってミーが言ったら…」

「お前は"そんなの嫌よ"っつってたろ?」

『あ…、あぁ!それね!』

「う……」



もう一度、繰り返した先程の会話を聞いてスクアーロはひくひくと口元を引きつらせた。

そんなにショックだったのかと覗き込むとピクリとも反応しない。



「オレ、しーらね。」

「ミーも一抜けですー」

『あっ、ちょっと、二人とも!』



二人とも面倒になったのか私とスクアーロを置いて大広間を出て行ってしまった。

残されたのは私とひたすら無言のスクアーロ。

一体どうしたものかと汗をかきながら彼を見た。



『ねぇ、スクアーロ、今日は誕生日よね?』

「……!あ、あぁ…、まぁな…」



さっきからだんまりしてたけど、話しかけたら我に返ったようで一言二言、話してくれた。

ほっと安心して話を続ける。



『プレゼント、何か欲しいものある?』

「つーか、お前、その……」

『なに?あっ、プレゼントじゃなくてもいいなら、食事に行こうか?奢るよ!』

「はぁ!?」

『え……!?』



食事に誘ってみたらスクアーロは急に大声をあげた。

ビリビリと耳が痛くなって、しかめているとスクアーロは捲し立てるように言葉を続ける。



「ちょっと待てぇ!今のは一体、どういうことだぁ!」

『い、一体どういう事ってなに!?』

「名前、てめぇはさっきオレと食事なんて嫌だと言っただろうが!」

『へっ?そんなこと言ってないよ』

「言ってただろぉが!絶対に嫌だってなぁ!」

『あ…、それはベルが私にプレゼントになれって言った事にたいして嫌だって言ったつもりだったんだけど…』

「は……?」



大口を開けて私を見てるスクアーロは何だか間抜け。

くすくす笑うと彼はしゃがみこんで深く息を吐いた。



「紛らわしいにも程があるぞぉ……」

『……』



私はスクアーロと同じようにしゃがみ、同じ視線になる。

彼と同じ視線になるとスクアーロはばつが悪そうに視線を逸らした。



『嫌だと思ってる人にプレゼントなんてあげないよ』

「……っ」

『スクアーロ、さっきのショックだったの?』



はっきり聞いたら顔を赤くして慌てて立ち上がった。
いつもは煩いスクアーロだけど、今は妙に静か。

その無言は肯定?



『……』



期待、しちゃってもいいよね?



『ねぇ、スクアーロ』

「……なんだぁ?」

『ベルとフランからの誕生日プレゼント、受け取ってよ?』

「は?」

『プレゼント、私なんだって』

「…っ嫌だっつってただろぉが!」

『さっきはね。気が変わったの。』

「……!」

『……』



貰ってくれる?と言うように両手を伸ばしたら、スクアーロは私を抱き上げる。

私はそのままスクアーロにぎゅうっと抱きついて、彼の耳元で囁いた。












「名前、一生、大事にするから覚悟しとけぇ」

『う……、スクアーロの誕生日なのに、私ばっかり嬉しいんだけど』

「オレの方が嬉しいに決まってるだろぉ」

『本当?』

「当たり前だぁ。やっと好きな女が手に入ったんだからなぁ」

『……!大好き、スクアーロ!誕生日おめでとう!』

「……あぁ、サンキュ。オレも好きだぜぇ」

「………お二人さーん」

「ししっ、さっそくイチャついてんじゃねーよ」

『……!フラン、ベル!?まさか覗いてたの!?』

「まぁな。それよりスクアーロ、王子の誕生日にはそれ相当のプレゼント、ちゃんと返せよ」

「何だとぉっ!?」

「ミーの誕生日も期待してますー」

『ちょっと、二人とも!それってずるくない?』

「ずるくないですー、ミー達のおかげでスクアーロは名前をゲット出来たんですからー」

「く……!」



end



2012/03/13

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