ある晴れた休日の午後。
パパのザンザスそっちのけで娘は今日もまたベビーシッターのスクアーロにべったり。

そして、これまたいつものようにスクアーロ達を見てザンザスの眉間には皺が寄っている。
カッ消す、そう言うような視線でスクアーロを睨んでる。

今日はせっかくヴァリアーのメンバーが遊びに来たのに、雰囲気が悪いったらありゃしない。



「スクアーロ!お庭であそんで〜!」

「う゛ぉ゛ぉい、ちょっと待ってろぉ、茶の用意してからなぁ…」

「やぁ〜!いまーっ!!」

「う゛ぉ゛ぉい!じゃれつくなぁ…」



きゃっきゃっとスクアーロの背中に飛び付いて困らせている、娘。
スクアーロは口では困っている感じなのに表情はデレデレして締まりがないから満更じゃない様子。

その様子を初めて見たベル、マーモン、レヴィ、ルッスーリアは呆れたような何とも言えない表情をしている。



「名前、スクアーロっていつもあぁなのか?デレデレしてキモいんだけど。本業を忘れてんじゃねぇの」

「スクアーロって本当に馬鹿だよね、ただ働きだなんて」

「ボスもスクアーロも娘ちゃんには甘いのねぇ」

「ぬ、ボスの大事な娘に何とも馴れ馴れしい…!!」

『スクアーロに懐いちゃってるからねぇ…。ちなみにマーモン、お給料は出してるから。』

「ふぅん、僕は給料を貰ったって子供のお守りなんて嫌だね。それより、ねぇ、名前…」

『なぁに?』

「ボスが憤怒の炎を出してる」

『ザンザス、いい加減にしなさい!』

「……チッ」

『舌打ちしないの!』



スクアーロを暗殺しようとしていたのがばれてザンザスはテーブルに頬杖をついた。

まったくもう!やんなっちゃう!
隙さえあればスクアーロを消しカスにしようとするんだから!

そんな事、絶対にさせないわ!
こんな有能なベビーシッターがいない生活なんて考えられないもの!!



「ママ〜!ねぇ、ママ!」

『……!』



ふいに声をかけられて足元を見るとエプロンの裾をつんつん引っ張る娘の姿。
そんな仕草が可愛くて自然を笑顔になり、しゃがんで話を聞いた。



『どうしたの?』

「このおにいちゃんたち…だぁれ?」



娘は私の後ろに隠れてベル達を見つめる。

あぁ、そうか。
小さい頃に会った事しかないから覚えてないんだ。



「うしし、うわー、ちぃせぇー」

「ボスに似ちゃだめだよ」

「可愛いわね〜、んもー!さすが名前の子供!」

「ぬ…、小さいな…」

『この人達はパパのお仕事の仲間よ。ベル、マーモン、ルッスーリア、レヴィ』



順にゆっくりと説明すると私の後ろから顔を覗かせる。
彼女の大きな瞳は目の前のベル達に向けられた。



『ベル達、この子と遊んでやってくれないかしら?』

「もちろんいいわよ!貴女はたまにはボスとゆっくりしなさいな」

「んー、ま、いいぜ。暇つぶしになりそうだし」

「ぬ、オレも構わん」

「僕は嫌だよ」

「マーモン、Yesって言わねぇとボスが睨んでるぜ」

「………仕方ないね。…何をして遊ぶんだい?」

「……!おままごと!」

「あら!やっぱり女の子ね!可愛いわ!」

「ぬぅぅ…」

「ままごと……」

「は…?」



笑顔で無邪気に「おままごと」を提案した娘。
その言葉にピシッと固まるベル達。
ルッスーリアだけは乗り気みたい。



「マジ…?マーモンはまだイケるとしてオレとレヴィ、ルッスーリアまでかよ」

「ちょっとベル、僕はままごとなんてする歳じゃないよ」

「ぬ、ぬぅぅ…!ボスの為ならば…!」

「う゛ぉ゛ぉい、準備したぞぉ…」

「お前もやんのか、カス鮫」

「どういう意味だぁ…!!」

「ほらほら、ケンカしないの!じゃ、さっそく始めましょうか!」

「わーい」



こうしてヴァリアーメンバーと娘の異様な「おままごと」が始まった。

あぁ、数時間前までは人に言えないような仕事をして来ただろうに。
あのメンバーに「おままごと」は似合わなすぎる。
だからと言って「かくれんぼ」や「だるまさんが転んだ」をやってるのも想像つかないけど…。



『あら、パパはおままごとに参加しないのかなー?』

「いつでもカスをカスに出来るように待機だ。…それより、名前。」

『なに?』

「…今くらい名前で呼べ」

『二人の時はいつも名前で呼んでるじゃない』

「……」

『ふふっ、…ザンザス、お茶にしましょうか』

「……あぁ」



ティーセットを用意して私とザンザスはのんびりとティータイム。
二人きりの時間なんて本当に久しぶり。

ゆっくりお茶をして過ごして、外では愛しい娘と仲間の笑い声が聞こえる。
なんて幸せなんだろう。



「ママー!パパー!」

『……?』

「……」



駆け足でこちらに来た娘。
小さな可愛いエプロンを着て、頭にティアラを身につけていた。

エプロンの胸元に鮫マークがあるのはあえて気にしない事にしよう。
ティアラはベルのものかしら?



「どうした?」

『そのエプロンとティアラはどうしたの?』

「スクアーロとベルおにいちゃんからもらった!」

『よかったわねー、ちゃんとお礼を言った?』

「言った!ありがとって言ったらベルおにいちゃん、だいじにしろよって!」

「ベルったら何だかんだ優しいんだから……と、それにしてもベルのティアラを貰って大丈夫なのかしら』

「すぺああるって言ってたよ!」

『あ……、そ、そうなの…?』

「うん!ねぇねぇ!ママもパパもおままごとしよっ!!」



ぐいぐいっと私とザンザスの手をひく可愛い、お誘い。

ザンザスと二人で顔を見合わせると自然に笑顔になった。
二人の時間も幸せだけど、みんなといる時間はもっと幸せになる。









(早くー!!)(そんなに引っ張らなくて大丈夫よ)(転ぶなよ)



「何でカスが、こいつの夫役でオレが息子なんだ」

「わりぃな、ボスさんよぉ…」

「カッ消す、カス鮫…!!」

「いいかげんにしなさぁい!!もう!ぱぱになんてくちきくの!」

「なっ!!」

「うしし、名前の真似してやんのー」

「将来が楽しみね!」

『ザンザスも私に言われるより娘に言われる方が効果あるみたいだわ』

「ぬぅ…!!それにしても何故にオレがペットなんだ…!!」

「犬が喋るなよ、レヴィ。ママが怒るぜー」

「僕はそろそろ飽きてきたよ。」

「まーまー、付き合ってやろうぜ。スクアーロが珍しく優位でおもしれーじゃん。」

「確かに。」

「しかもボスが我慢してるなんて中々見れねーし。」

「じゃあ、ボスが我慢が出来ない方にSランク報酬分を賭けるよ。あんな強気で調子に乗ってるスクアーロ相手に我慢が出来る訳がない」

「オレはこのまま、スクアーロが勝ち逃げる方にSSランク報酬分、賭けてやるよ」



end



加筆修正
2009/5/17
400000hitキリリク、マナ様へ!

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