「おい。アホ面してねぇでガキはそろそろ帰った方がいいぜぇ…」

『えっ!今、何時ですか?』

「十六時を過ぎた所だぁ」

『それくらいならまだ平気です!もう少しお話したいです!』

「はぁ?オレとか?」

『はい!どこから日本に観光に来たんですか!?』

「…イタリアだぁ。」

『イタリア!私、行った事ないです!どんなところなんですか!?』

「……」



それからは質問の嵐。
たいして面白くない話、何気ない会話ばっかりなのに、名前はよく笑う。

こんな普通の会話、久しくしてなかったからか心が安らぐ。

もうどれくらい話し込んでいたんだろうか、辺りはすっかり暗くなってしまった。

会話は絶える事はなかったが背後からの嫌な視線を感じ振り返ると、そこには見慣れた奴らが揃っていた。



「ししっ、スクアーロ、はっけーん。」

「ベル、マーモン、レヴィ…!!てめぇら何で、ここにいやがる…!!」

「そんなの教える筋合いないし。つかスクアーロこそ何でガキをナンパしてんの」

「はぁ!?」

「そいつ、並中生だろ?何年?」

『ちゅっ、中一です…』

「スクアーロ、ロリコンけってーい。ししっ」

「貴様がロリコンだとは思わなかったぞ、スクアーロ」

「ナンパしてた訳じゃねぇ…!!ロリコンって言うならレヴィ!てめぇだって霧の術士に頬を染めてただろうが!!名前と同じくれぇだろ、年齢!!」

「あの女は妖艶だ。この娘とは違うだろう。」

「クローム髑髏だったっけ。確かにこの女より大人びてたな。」

「まぁ、年齢的に言ったらレヴィもスクアーロもロリコンって事には変わりないよ」

「ぐ…っ」

「だな、マーモン。つーかお前、名前っていうのか」

『は、はい……』

「ふぅん…」

『……っ!?』



興味深いようで名前に近づいて顔を覗き込むベル。
名前はベルに驚いたようで固まってしまった。



「ベル!むやみに近づいてんじゃねぇ!!」

『……!!』

「王子よりスクアーロの声の方が怖いんじゃね?」

「ぐ…っ」

「…う゛ぉ゛ぉい!!名前!お前はもう帰れぇ!」

『えっ!あ……は、はい。あのー…』

「ん…?どうかしたのかぁ?」

『まだ日本にいるんですよね?』

「まぁ、な。」

『じゃあ…明日、また会えますか?』

「はぁ!?」

『タオル、洗って返しますね!タオルを貸してくれたお礼がしたいです!明日、またこの公園で!!』

「なっ、ちょっ、待て…っ」

『それじゃ!』



オレの話など聞く耳持たず。
立ち上がったと思ったら名前は小走りでこの場を離れる。

そして、振り向いて「約束ですよー!!」と懐っこい笑顔でぶんぶんと手を振っていた。



「う゛ぉ゛ぉい!!前を見ろぉ!!走るんじゃねぇ!また転んでも知らねぇぞぉ!!」

『はーい!!気をつけまーす!』

「……、…ったく。」

「スクアーロに春が来たって感じ?」

「かなり年下だけどね。気になるなら家とか粘写してあげるけど。もちろん有料で。」

「はぁ!?何でそうなるんだぁ!!」

「"…ったく"って面倒くさそうに言っても満更じゃなかっただろ」

「な…〜…っ!!」

「明日も会うのか?」

「そっ、それはだなぁ…」

「行く気だな。面白そうだし暇だからちゃちゃ入れに行くか」

「んな…ッ!!来るんじゃねぇ!!」

「ねぇ、スクアーロ」

「マーモン!!今、てめぇに構ってる暇なんてねぇ!」

「ベルがスクアーロをからかってるから、つい忘れてたよ」

「はぁ?何をだぁ?」

「ししっ、そうだったな。ついうっかり王子も忘れてたー」

「ぬ…!オレとした事が…!!」

「……」



ベルの笑う顔は妙に不気味かつ楽しげ。
レヴィは神妙な面持ちでマーモンはふぅとため息を吐き口を開いた。

これは嫌な予感しかしねぇ…!!



「ボスが待ちくたびれてるんだよ」

「……!!」

「そーそー、食材を切らしてるからシェフも何も出来ないしー」

「だからスクアーロ一人で買出しに行かせるのは不安だと言っただろう。オレならばボスを待たせる事などしない。」

「んじゃ、ちょっと時間がかかったけど、ちゃんと伝えたからなー」

「それじゃ。僕らはもう行くよ。」

「オレはボスのため、酒を調達に行く。」

「おい、待ちやがれぇ!!ベルとマーモン!てめぇらはどこへ行くつもりだぁ!!」

「竹寿司だよ。」

「肉は食い飽きたし日本に来たならやっぱ寿司だろ。じゃあな。」

「……!!」



一人で屋敷に戻ったオレは怒りMAXのボスにグラスを投げられたのは言うまでもない。
最悪な夜だったが明日の事を思えば自然と口角が上がり気が和らぐ。

戦いや任務以外で楽しみだと思うのも、誰かにもう一度、会いたいと思うのも初めてだ。



「……名前、か」



あいつの言葉が頭から離れない。
優しいなんて初めて言われた。

明日、名前に会ったら出来るだけ怖がらせないようにしてぇ。

そう思いながら深く眠りについた。












これが恋だと気付くのはもっと先のこと。



end



2010/4/16
ここあ様へ
三周年フリリク企画
リクエストありがとうございました!

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