眠い目を擦ってあくびを一つ。 私は今朝もまた昼食を買うため学校に行く前にコンビニに寄る。 そこで目についたのは期間限定発売のチョコレート。 期間限定のお菓子には、いつもつい手を出してしまう私は今日もまた誘惑に負けてお買い上げ! 期間限定って書いてあるだけでいつものお菓子より楽しみになっちゃうんだよね! 早く食べたいなぁっと思えば自然と足取りが早くなり、学校に到着した。 私は真っ直ぐ教室へ向かい席に座るとさっそく封を開けて甘いチョコレートを堪能する。 うーん、やっぱり期間限定だけあっておいしい!幸せ! 「おはようございます、苗字さん」 『あっ、六道君!おはよう!』 声をかけてきたのは隣の席の六道骸君。 六道君は髪型が個性的だけどとってもかっこいい男の子。 女子人気No.1と言っても過言じゃない。 だから隣の席になった時はすごく緊張しちゃった。少し近付きにくい雰囲気がしたから余計にね。 でも、実際に話してみたら紳士で優しくて、私が恋に落ちるのなんてすぐだった。 だけど、私と六道君とじゃどう見ても釣り合わない。 見込みがない恋だっていうのは一目瞭然だから、すんなり納得し諦めている自分がいたりして。 こんな臆病な自分はいやだけど、こうしているだけで幸せなんだ。 六道君が話してくれたり、私の言葉に耳を傾けて微笑んでくれる。 それだけで胸がいっぱいになっちゃう。 彼の言葉と笑顔って甘いチョコレートみたいにじんわり私の心に溶け込むの。 叶わない思いだからたまにビターチョコレートのようにほろ苦い。 分かってるはずなのにね、やっぱりそれは少し辛い。 「おや、それはチョコレートですか?」 『あ……、うん、そうだよ!六道君もよかったらどうぞ!』 「いいんですか?」 『もちろん!おいしいよ』 「ありがとうございます。僕、チョコレート、好きなんですよ」 クフフ、と嬉しそうに微笑む六道君に私も笑い返した。 何とか笑顔をキープしている私だけど心の中では六道君が言った「好きなんですよ」というフレーズが繰り返され心拍数上昇中。 あぁ、好きって言われるチョコレートが羨ましい! 「苗字さん?」 『……っ!な、なに?どうかした?』 「とてもおいしいですね、このチョコレート」 『あ!う、うん!おいしいよね!期間限定につられて買っちゃったんだ!』 「期間限定なんですか、忘れずに今度、僕も買わなくては」 『あ、もしかして六道君も期間限定に弱い人?』 「人並みに興味がある程度ですよ、苗字さんはどうなんですか?」 『私、お菓子とかジュースは期間限定商品を見つけたら一度は買っちゃうかなぁ』 「ほぅ、でしたら…」 『うん、限定って言葉にかなり弱いかも』 「クフフ……」 『……?』 六道君は私とチョコレートを交互に見ると何を考えているのか意味深に微笑む。 …もう一つチョコレートを食べたいのかな? 遠慮しなくていいのに。 『どうしたの?』 「チョコレートのお礼にオススメの限定商品の情報を教えて差し上げましょう」 『えっ、限定商品?』 「はい。とても甘いものですが大丈夫ですか?」 『甘いの?』 「えぇ、チョコレートよりも甘いかもしれません。…いかがでしょう?」 『……』 にこにこにこと今までにないくらいの笑顔を浮かべる六道君をじぃっと見る。 何だか、すごく怪しいなぁ。 でも、気になる。 六道君のオススメって何だろ? あ、もしかして…… 『高い限定物だったりして?』 「それはどうでしょうねぇ。何故、そう思うんです?」 『六道君、コンビニのよりも高いチョコレートばかり食べてるイメージあるんだもん』 「クフフ、そんなことはありませんよ。これに値段はつけられないですが」 『え……?』 「それよりどうしますか」 『うーん…、じゃあー……教えて?』 「クフフ…、では、苗字さん、手を出してください」 『……?』 六道君が今、持ってるものなのかな? 気になるから私は言われるまま素直に手を出す。 すると六道君は私の手を取り自分の胸、正しくは心臓の位置へと持っていった。 『……!』 「……」 君限定の恋心はいかがですか? 「支払いは名前、君でお願いします」 『……っ!?』 さっきまで笑ってた六道君。 なのに今はとても真剣な表情で私の名前を呼ぶ。 落ち着いて見えるけれど指先から伝わる鼓動は私と同じリズムだった。 「自分で言うのもなんですがお買い得ですよ」 『…ー…っ』 言葉が出てこなくてコクンと頷くと六道君は分かってくれたみたいで、安心したように微笑むと今度はチョコレートではなく私に向けて言ってくれた。 好きです、って。 『…〜…っ』 「おやおや、顔が赤いですよ」 『だ、だって…っ』 本当にチョコレートよりも甘いんだもん! 顔を真っ赤にして言った私に六道君は照れ臭そうにして、もう一度、甘い笑顔をくれた。 end 2011/10/15 |