ある日の放課後、図書室に寄った私は「花言葉」の本を探す。

何故なら、この間、骸様と散歩した時に花言葉の話題になったから。

骸様は春には赤いチューリップ、夏には向日葵、秋には白の薔薇を私に贈ってくれると指きりで約束してくれた。

何で花を贈ってくれるんだろう?と不思議に思っていたら、骸様が言っていたの。
「どうしても気になるならば花言葉を調べてみなさい」って。

どうやら花に何か意味があったらしいけど、内緒と言われて教えてくれなかった。
内緒にされたら何だって気になるもの。

という事で私はさっそく花言葉を調べに来た。
もう夕方だから、早く調べて骸様達の所に戻らなきゃ!



『えーっと…、あ、あった!』



花言葉の本を手に取り索引を見て、お目当てのページを探す。
春は赤いチューリップ、夏は向日葵、秋には白の薔薇、だったよね。



『……え?』



それぞれの花言葉を調べると、そこに書いてあった花言葉はどれも私の想像と違っていた。
花言葉を見て顔がカァァと熱くなる。

赤いチューリップの花言葉は愛の告白、永遠の愛。

向日葵は、あなただけを見ている。

そして最後は白の薔薇。
赤い薔薇の花言葉は愛だけど白の薔薇の花言葉は「私はあなたにふさわしい」だった。



『……っ』



全部が全部、愛の言葉を含んでいる花。
骸様は「少しは意味を分かって欲しいのですが君にはまだ早いようですね」と言っていた。

…ということは、もしかして?



『……や、そういう意味じゃない、よね?』



ん?でも、気になるなら花言葉を調べてみなさいって言ってた。
そういう風に言うなら、もしかして骸様は特別な意味を込めて私に花を贈ってくれるつもりなのかな?



『…ー…っ』



ちょっと待って、私!勘違いをしちゃだめ!ありえないよ!

…あれ?というか、勘違いってなに!?
勘違いしちゃだめって私が骸様をそういう意味で好きみたいじゃない!?



『す、す、好き……、好きなの、かな…?私、骸様のこと…』



ドキドキする胸を押さえて、もう一度、花言葉の本を見る。

花言葉は一つじゃない。
一つの花に色んな花言葉があって間逆の意味を含むものだってある。

骸様は愛とか、そういう意味じゃなくて他の意味で花を贈ってくれるつもりなのかも!
…だとしたら、ちょっとだけ寂しくて切ないような気がするけど。

そう考えたら気持ちが落ち着いてきた。
パラパラとページを捲り他の花言葉を調べる。

すると白の薔薇には「あなたを尊敬します」という意味もあると書かれてあった。



『……骸様が私を尊敬してる訳ない』



自分で可能性を即、下げてしまうのが虚しい。虚しすぎる…!!

でも、本当のこと。
尊敬というのであれば私が骸様に白い薔薇を贈りたいくらいだもん。



『……あれ?』



他に何か意味がないかな?
本を真剣に読んでいると私が冬に骸様に贈ることになっている「ヤドリギ」のページを発見した。

そのページを見て落ち着いていた鼓動が、また大きく跳ねて顔が熱くなる。



『……っ』



ヤドリギの花言葉。
困難に打ち勝つ、それともう一つ。

キスして。



『…〜…っ!?』



この本には女性が男性に贈る場合のみ「キスして」という花言葉になると書いてあった。
ついでにヤドリギの元でキスをすると幸せになれるんだとか。



『む、骸様…っ』



わざわざヤドリギを指定してきたって事は、まさか本当の本当にそういう意味…?



『…ー…っ!』



今の私の顔は赤いチューリップのようになってるはず。
ドキドキする心臓はどうやっても治まってくれなくて指きりした小指を見たら、さらに鼓動が早くなった。



『……っ』



骸様の事を考えたらドキドキしたり、凹んだりして何でだろうと思っていたけど、やっと理由が分かった。

きっと私、骸様の事……



『……(…好き、なんだ)』

「……名前」

『わ…っ!?む、骸様、何でここに…!?』

「君の姿が見えないので探していたのですよ。君が図書室にいるとは珍しい…、と、それは?」

『あ……』

「クフフ、花言葉を調べていたのですか?」

『……っ』

「その様子だと、いくら君でも意味が分かったようですね」



緊張して骸様を見ていると真っ赤になっているだろう頬を撫でられた。
頬をするりと撫でた後、私の手に自分のものを絡める。
距離が近くて、恥ずかしくなり一歩後ろに下がったら背中は本棚。

骸様は逃がさないというように私の横に肘をついた。



『……っ』

「意味を知って約束、破る気ですか?」

『いっ、いいえ、そんな事は…!』

「クフフ、そんな事を言っていいのですか?答えと受け取ってしまいますよ」

『…ー…っ!』



骸様は何も言えなくなった私を見て気持ちを察したらしく微笑んだ。

夕焼けに溶け込むような綺麗で優しい微笑み。
その表情を見たら息が止まってしまいそうな程、胸がいっぱいになった。



「…名前、約束しましょうか」

『……?何の約束ですか…?』



骸様は私の小指と自分のものを絡めて、また綺麗に口角を上げた。

何の約束をするんだろう?
首を傾げて骸様を見ると小指に微かに力が入った。



『ゆびきりげんまん…?』

「えぇ、嘘を吐いたら…」

『は、針千本…』

「ではなく、キス千回」

『キ、キス…!?』

「クフフ、針千本は怖いと言っていたでしょう?」

『そっ、そうですが…っ、や、約束は…?一体、何なんですか…?』

「簡単な事ですよ」

『……?』

「……」



ドキドキしながら骸様を見つめると、ふっと笑って私の耳元で囁いた。

恋人として、ずっと僕の傍にいること、と。












恥ずかしいけれど、嬉しくて微笑んだら、二人の影が一つになった。



『や、約束、破らなくても破ってもキスするんですか、骸様……っ』

「当たり前でしょう、恋人同士なのですから」

『…ー…っ』

「好きですよ、名前」

『……っふ、冬には、ヤドリギと、赤い薔薇を贈ります、ね』

「クフフ、赤い薔薇は僕が贈るべき花ですよ」

『骸様、何でそんなに花言葉に詳しいんですか…?』

「暇つぶしで君が今、手にしている本に目を通したので」

『……やっぱり全部、仕組んでましたか?』

「当たり前でしょう」

『………』



end



2011/07/06

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