私のボスであり恋人である骸の代わりに仲間になったのは、それはもう可愛らしいクローム髑髏。 そんな彼女に私はやきもちを焼いてしまう。 だって、クロームはいつでも骸と繋がってるから。 ううん、繋がっているだけじゃない。 夢の中で会えて話せて、まるで見守られてるようなクロームが羨ましくて仕方ない。 だから、出会ってから素っ気無い態度ばかりだった。 けどね、今は違うよ。 今まで素直になれなくてごめんね? 今日こそは、ちゃんと伝えたい。 ……今更、だって思われるかも知れないけど。 『あの、クローム…』 「名前…?どうしたの…?」 『えっと……』 「骸様なら今は…聞こえない…」 『え…?』 「ごめん…」 クロームは眉を八の字に下げて、まるで役に立てないと言っているように見える。 そういえば、犬が言っていたっけ? 骸様と話せないんじゃあいつ、いる意味ねぇびょんとか。 それを気にしているらしくクロームはおどおどと私の様子を窺っていた。 『違うの。骸のことじゃなくて…』 「え……?」 『なんて言ったらいいのかな…』 「名前……?」 『その、クローム…、好きだよ…』 「……?あ……、うん、骸様も貴女の事をいつでも想ってる…」 『違うよ!…クロームも大好きなの!』 「………私?」 『そう!』 クロームは大きな瞳をパチパチさせて私を見ている。 必要以上に私から話しかけるのは初めてだからすごくドキドキする。 クロームも私達の前に初めて現れた時は、こんな感じだったのかな。 今まで私は自分と仲間の事しか考えられなかった。 仲間じゃない、って頑なにクロームを拒んでた。 クロームは私達のために戦ってくれているのに。 『ごめん、なさい。最初、いきなりで受け入れられなかった、けど…』 「………」 『今は、クロームのこと、ちゃんと仲間だって、思ってるの…』 「仲、間……」 最初は疎ましかったり、何でこの子なの?とか思った。 知らない子を使うならいっそ私の身体を使えばいいのにって何度も思った。 私の身体、骸のためだったら使って欲しい。 救われた日からずっとそう思っていた。 『……』 きっとクロームは私達と同じように骸に出会った。 今までのクロームを見てきて、ずっと一人ぼっちだったんじゃないかって、そう感じた。 骸はそういう人間に敏感だから、手を差し伸べたんだと思う。 私も、骸のような人になりたい。 『クロームのこと、大好き』 「名前……」 『……』 「………私」 『……?』 「……私、ここにいても」 『……!』 「ここにいても、いいの……?」 『……もちろん!』 「…ー…っ」 クロームはぎゅっとバックを抱き締めて私を見つめる。 泣きそうな顔は酷く頼りないから、支えになりたいと思って手を握る。 握った手は少しびくっと震えたけれど静かに受け入れてくれた。 彼女は骸の代わりの一時の仲間じゃない。 クロームはクロームで大切な友達、かけがえのない仲間。 「………」 『クローム…?』 「ありがとう…」 『……?ありがとう?』 「嬉しい…。ずっと仲良くなりたい、って思ってたから」 『……!』 「名前は骸様の大切な人…」 『……』 「だから、私も名前が好き…、大切…」 『……』 「私、骸様と貴女を守りたい。この命に代えても」 『クローム……』 私達は皆、一人だった。 エストラーネオファミリーで誰も信用出来なくて、一人きりだった。 骸がいたから、仲間が出来た。居場所が出来た。 だけど今、骸は一人ぼっち。 暗く冷たい水牢で脱獄なんて不可能。 『……』 骸は私達が助け出す。 仲間という存在を教えてくれた貴方を一人になんてさせない。 大切なものがまた一つ増えた日! 『これからもよろしくね、クローム!』 「……うん!あれ…?」 『どうしたの?』 「骸様が拗ねちゃってる……」 『え、何で…?』 「…仲良くなるのはいいですが、もう少し、僕の事を忘れないでください、だって」 『……す、好きだよって伝えてくれる?』 「…うん。」 『……』 「…僕は愛してますよ、名前、だって」 『……っ!?』 「…ふふ、名前、顔、赤い」 end 2009/01/09 |