てくてくてく。
今日は天気がいいから当てもなく一人でお散歩中!

お散歩日和だなぁと気分良く歩いていたら、そう思っていたのは私だけではないらしく一羽の白いフクロウに出会った。

黒曜中に通う六道骸君のペットだ。

おいで、おいで。
手を伸ばしたら私に気がついて地面に降りて来てくれた。

しゃがみ込んで話しかけると骸君とお揃いの色をした瞳で私をじっと見ている。



『こんにちは!…って、話しかけても雲雀さんの鳥みたく話せない、かぁ』

≪……≫



残念、と呟いたらムクロウ君は返事をするように大きな翼を広げた。

もしかして私の言葉、分かるのかな?



『さすが骸君が飼ってるだけあってお利口さんだね!』

≪………≫



笑いかけてそっと触れてみたら静かに撫でられている。

そのまま撫でていたらぴょんぴょんと跳ねて私の膝へと飛び乗った。

あれ?フクロウってこんなに人懐っこいの?

びっくりしたけれど、懐いてくれている事が嬉しくてぎゅっと抱きしめた。



『ぬいぐるみみたいっ』

≪……!≫

『君は幸せだね、骸君の傍にいられて』

≪……?≫



抱きしめながら骸君の事を話すとムクロウ君は私をジッと見て、聞いてくれているようだった。

話せないけど人間の言葉を何となく理解してるのかな?

と、言うよりもただご主人の名前に反応しただけかもしれない。



『私ね、骸君のことが好きなんだー』

≪……っ!?≫

『学校、違うからたまにしか会えないんだけど、ね。思い切ってこれから遊びに……なんて、迷惑だよね?』

≪……!≫

『君のご主人は好きな人いるのかなぁ…』



犬猫ならまだしもフクロウに恋の相談を持ち掛けるなんて私くらいじゃない?

でも、誰にも言ったことがなかった気持ちを言葉に出来てすっきりしちゃった!



『この際、どーんと思いきって告白しちゃおうかなぁって、それは思い切りすぎ…』

「名前?」

『うわぁっ!?』

「何、そんなに驚いてんだよ?」

『な、何でもない!ツ、ツナはどうしてここに…っ!?』

「母さんに買い物を頼まれちゃってさ」



しゃがみ込む私に声をかけたのはクラスメイトの沢田綱吉。
京子を通じてあだ名で呼ぶまでに仲良くなった男の子だ。



「何してたんだ……って!そのフクロウ…っ」

『えっ、あ…っ!今、ムクロウ君とちょこっとお話してたんだよ!』



ツナの様子からして私の独り言、聞かれてないよね…っ!?
でも、もしかしたら聞かれてたかも…?

そう思ったら急に恥ずかしくなって、赤い顔を隠すようにムクロウ君を両手で持ち、ずいっとツナの前に出した。



≪……ッ!≫

「骸っ!?お前、何やってんだ!」

『む、骸君じゃなくてムクロウ君だよ!』

「ち、違うんだよ、名前!あぁ、何て説明したら…!!って!いてーっ!!」

『わっ!?』

「ちょっ!おまっ、骸!突っつくな!」



ツナがムクロウ君を骸と呼ぶと私の手から飛び立ち、くちばしで執拗な攻撃を始めた。

ひぃっ!と逃げ回るツナを逃さないと言わんばかりにムクロウ君の目がギラギラと光っている。

あれは狩る目だ。



「ひぃぃーっ」

『……』



フクロウに狩られるクラスメイトを見る日が来るとは思わなかったよ。

どうしたらいいんだろうかと悩んでいると、ツナは私の背中にササッと隠れて盾にした。



≪沢田綱吉!名前さんの後ろに隠れるなんて卑怯な!≫

『そうだよ、ツナ!いくら何でも私の後ろに隠れるなんてー…って、んん?』

≪……ッ≫

『………』



ここにいるはずがない人物の声が聞こえて私の身体が固まった。

今、骸君の声がしたような……?



『……』

≪………≫



声がした方を見るとそこにはムクロウ君が飛んでいるだけ。

何となくムクロウ君が怪しく思えてじぃぃぃと穴が開く程、凝視したらダラダラと汗が流れているように見える。



『ツナ…、今さ…』

「な、なに?」

『ムクロウ君から骸君の声しなかった…?』

「えっ?あぁ、それは……」



何か秘密があるのか、ツナは話してくれそうな雰囲気だったけどハッとしてムクロウ君を見たら顔を引き攣らせた。

ムクロウ君を見るとツナを睨んでいる。

まるで無言で何かを訴えているような…?



「オ、オレは何も知らない、よ?あ、はは…」

『フクロウに負けないで!誤魔化そうったってそうはいかないんだから!』

「フクロウって言うより骸が怖いんだよ!最近よく見かけるけど一体、何しに来てるんだよ!クロームの様子見かっ!?」

『……?何、言ってるの、ツナ』

「だ、だから!ムクロウは…む、骸なんだよ!」

『……ムクロウ君が骸君?』

「さっき、骸の声が聞こえただろ!ムクロウに憑依してるんだよ!」



ムクロウ君が骸君?憑依?

いきなり訳の分からないことを言い出したツナに向かって首を傾げて見せると、さらに必死に話し出した。



「あ!その目、信じてないだろ!」

『ムクロウ君は骸君のペットって言いたいの?』

「違うって!オレが言いたいのはー…、って!いたたっ」

『あーあ、また狩られそうになってる…』

「名前、助けてぇぇーっ!」

『助けてって言われても…』



一体、どうすればいいの。
いい案が浮かばないでいるとツナはまた隙を見て私を盾にした。



『ちょっ、またっ!?』

「だって、さっき名前の後ろにいたら大丈夫だったし!」

『だからって盾にしなくても!ムクロウ君、こっちにおいで』

「あいつが素直に来る訳……って、静かに抱っこされたぁぁーっ!?」

『いい子だね、ムクロウ君!』



何とかしろって言うからムクロウ君を抱っこしたらツナは驚いて私を凝視する。

気にせずムクロウ君を撫でていたらツナは顔を引き攣らせた。



「む、骸……」

『だから、ムクロウ君だってば!』

「名前!騙されないでよ!そりゃ今はフクロウだけど…っ」



また訳の分からないことを言い出すツナにムクロウ君は身を乗り出して威嚇。

普段はぬいぐるみみたいだけどツナに対しては随分と野性的になるなぁ…!



『ツナを虐めないで、ムクロウ君』

≪……≫

「……え、静かになった」

『言葉、分かるみたいだよ、ムクロウ君』

「そりゃ骸だからな…」

『また変なことを言うんだから!どういう事なのっ』

「憑依って言っても信じないしなぁ…、えーっと、とりあえずムクロウが見たり聞いたりしたことは骸に筒抜けなんだよ」

『………え?』

≪……!≫

「……?」

『と、盗聴器とか盗撮とかそういう類…?』

「まぁ、うん、そんな所…かなぁ?あとさっきの声も骸だよ」

『つ、通信機がついてるの!?じゃ、じゃあムクロウ君に話したことは骸君に…っ』

「骸に話してるのと一緒だよ。」

『………』



それじゃ、私は骸君に告白したようなもの?

そう思ったらくらりと目眩がして目の前が真っ暗になった。

そんな私をムクロウ君は静かにじっと見つめるとツナに視線を向ける。

見つめられたツナは「もう突っつくなよ!」と慌てて私の後ろに隠れた。

本当にダメダメなんだから、なんて思うけど今は私の方がダメダメだ。

どうしようどうしようと頭の中はそればかりで解決策が思い浮かばないんだから。



≪名前さん≫

『はいっ!?え、骸、くん…!?』

≪すみません、その…≫

「骸、お前、猫を被りすぎだろ…」

≪煩いですよ、沢田綱吉。さっさと買い物に行きなさい。狩りますよ≫

「ひぃぃっ!」

『あ、ちょっと、ツナ!』



ツナは骸君が怖いのか一目散に逃げ出した。
あぁぁ!今、一人にしてほしくなかったのに!



≪名前さん、あの…≫

『……っ!』

≪黒曜センターに遊びに来ませんか?≫

『えっ?』

≪あなたに、会いたい≫

『え……っ』



も、もしかして、骸君も私のことを…?

なんて期待しちゃうのは仕方がないと思う。

だって、ムクロウ君を通じて伝わる骸君の声はとっても優しいものだから。








小さな天使がくれたチャンス



走ってあなたのところに行くから。

だから、ねぇ、お願い。



『む、骸君!も、もう一度、ちゃんと告白させて…?』

≪だめです≫

『へ…っ』

≪僕が、告白します≫

『…〜…っ!』



end



2013/02/01

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