暗くて寒い、一筋の光りさえない水牢。 僕は、そこで一人、眠りについていた。 考えるのは犬や千種、そして恋人である名前のこと。 名前はマフィアとは全く関係ない普通の黒曜生。 暇つぶし程度になるか。 そんな軽い気持ちで付き合い始めたが今では僕の支えとなっている存在だ。 「………」 彼女は今、どうしているだろう。 僕がいなくなった事を悲しんでいるか、それとも、もう他の誰かと過ごしているのか。 彼女が幸せに、笑顔であればいいだなんで嘘でも願うことは出来ない。 それならいっその事、いきなりいなくなった僕を恨んで悲しんで泣いてくれていた方がいい。 どんな感情であれ君の心の中に僕が存在していてほしい。 僕ではない誰かと名前の幸せを祈ることはしたくない。 「……(名前…)」 願うなら、叶うなら一時でさえ構わない。 ほんの少しだけでいいから、夢を見させて欲しい。 例えば退屈で何気ない授業。 君と歩く帰り道、僕と君は手を繋いで歩く。 休日には出掛けて、笑いあい過ごす。 「……」 そんな、ささやかだけれど奇跡のような夢を、見たい。 今すぐに君に、名前に会いたい。 「……っ」 だけど、それは、どんなに願っても全て叶わない。 こんなにも君を愛しているのに (夢でさえ会うことは許されない) これが罰だと言うのなら、あまりにも残酷。 end 加筆修正 2009/05/15 |