『ふぅ……』

「……」

『……はぁ』

「………」

『ねぇ、六道君…』

「何でしょうか、苗字さん」

『隣の席のクラスメイトがこんなに、ため息を吐いてるっていうのに普通は何か聞かない?』

「聞きたくありませんねぇ、どうせ下らないことでしょう」

「骸さん、お菓子食べますかー?」

「犬、先にちゃんと食事をなさい」

「虫歯になるよ、犬」

「うるへー!ちゃんと歯、磨いてるっつーの!」

『……』

「大体、君、昼休みはいつも友人と屋上へ行くのに今日は何故、教室にいるのですか」

『そんな気分じゃないんだもん…』

「……あぁ、あの日ですか、女性は大変ですね」

『違うー…というかそれってセクハラじゃないのかな、六道君…』



お昼休み。
私はお弁当に手をつける事なく机に伏せていた。

隣の席の六道君は昼休みはいつも教室にいない私がいる事がうざったいのか冷ややかな瞳でこちらを見ている。



『……』



いつも昼休みは友達と屋上でご飯を食べる。
だけど今日は一人で教室。

友達と喧嘩をした訳じゃない。
ただ、今日は一人でいたいから。

教室にいるのはわざわざ屋上で食事をする目的がなくなったから。



『……はぁ』



屋上で私が片思いしている先輩が男友達と一緒にいるのを見るのがささやかな幸せだった。

だけど、それは昨日までの話。



『はぁ……』



ため息の原因、それは通学中に起きた出来事。

通学中はスキップしちゃいそうなくらい気分もよかったのに片思いをしていた先輩に出会って急降下。

「おはよう」と先輩が後ろから声をかけてくれて、さっそくいい事があった!と振り向いて元気よく挨拶したら可愛い女の子と一緒にいたの。

手を繋いで割って入れない雰囲気。
彼女が出来たんだって一発で分かった。

恋愛運がいいって占ったやつ、誰よ!まったく!!



『……』

「柿ピー、購買に行こうぜ」

「めんどい」

「いいだろ!骸さん、何か買ってきますかー?」

「…そうですね、…それでは、飲み物を頼みます」

「はーい、行ってきまーす」

『……』

「………」

『はぁ…、せんぱーい…』

「煩いですよ、さっさとその先輩の元へ行けばいいじゃないですか」

『無理…』

「いつもなら屋上で影からこそこそ覗く者が何を言いますか」

『こそこそしてないもん。…それにもう屋上に行かない。』

「は…?」

『今頃、屋上で彼女といるんじゃないかな。そんなの見たくない…』

「……」

『……はぁ』

「…もしかして、振られたんですか?」

『……うん、今朝の占いだと恋愛運絶好調だったのに』

「クフフ……」

『……っ』



ちらりと見た六道君はどこか楽しそうに笑っていた。

あぁ、もう!そりゃ楽しいでしょうよ!
恋愛運絶好調の日に好きな人に彼女が出来たことを知って告白する前に撃沈なんて!

でも、さすがに笑われるなんてムカつくんですけど!!

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