私がいた場所は暗くて冷たくて寂しい世界。

飛び立つための翼はあったけど空を羽ばたくことは許されていなかった。

いつも憧れているだけだった。

だけど、いつしか私は恋焦がれるように空を求めて、そして願ったの。



『……』



この場所じゃなくて、外を見てみたい。

綺麗な世界で生きたい。

どこまでも青く高い大空を羽ばたきたいと思ったの。



きっとそれは、とても祈りに近い、願い。








prologue



例えるなら、心は大空と大地。


大空。
そこには真っ白な雲が流れてる。

太陽が輝いて、雨は大地を潤し木々を育てる。
時に雲は青空を隠して嵐になる。

些細な空の変化は嬉しいや悲しい、好きや嫌い、色んな感情。


大地。
そこには色とりどりの花や木がしっかりと根を張って息づいている。
深い地の底には誰も知らない種が埋まってる。

それは思い描く夢や希望、決意や欲望、まだ見ぬ可能性。

空から降る感情の雨が潤いをもたらして成長していく中、落雷で失う事もあるけれど木々達は思い思いに育ってる。

時に大地は霧で覆われて行く道を見失う。

だけど心地いい風が吹いて道を示す。



『……』



私は色んな大空と大地を見て来た。

温かかったり冷たかったり寂しそうだったり、一つとして同じものはなかった。

でも、共通してるものを知ったの。

形は様々だけど一つ目は好き、愛情というもの。
二つ目は嫌い。誰かを憎む心。

この二つの感情は誰の心にも少なからず存在していて、私はこの二つの感情は似てるって思った。

誰にだってある好きと嫌いというものは些細なことで心に募っていって次第には一杯になって溢れてしまう。

自分じゃどうしようもならないくらい止まらない想いは雨となって大地を濡らす。

雫を受けた種は成長していって芽を出して、ぐんぐん成長して木になるの。



『………』



ほんの少しの好きは大好きに、そしていつか実をつける木になる。愛になる。

ほんの少しの嫌いから憎しみになる。

憎しみは憎悪となって他の芽や木を侵食する。



それは瞬きも出来ないほど、速く。



『……』



私はみんなの芽が出る瞬間を見逃していたの。

例え気付いたとしても、もう遅かったけど。



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加筆修正
2012/03/09


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