みんなのこと、大好きだよ。 今でも大切な仲間だって思ってる。 また、前みたいに仲良くなれるかな? みんながいて、そこに私もいて、笑ってる。 私は、そんな穏やかな日々がまた来るって信じてる。 『……』 雨が上がれば虹がかかる。 闇があるから光が輝く。 夜は必ず朝になるの。 だから、辛いことにも終わりは絶対に来るんだよ。 辛いことを精一杯、頑張れば、その先には幸せが待ってるんだ。 純白の翼、どこまでも広がる大空 獄寺くん。 ぶっきらぼうだれど優しい人。 沢田くんと私の間にいて苦しい思いさせちゃった。 何よりも沢田くんが大切なはずなのに、友達になって日が浅い私のために悩んでくれて、夕焼けの中、手を差し伸べてくれた。 あの時の行動は獄寺くんの中で沢田くんへの裏切りの行為だったのかも知れない。 手を差し伸べてくれた、それだけで心強かった。 なのに、攻撃なんて出来ないって屋上で言ってくれた時、死ぬほど嬉しかった。 『……』 沢田くん。 争いが嫌いで、本当はとても優しい人。 私を殴る時、いつだって彼は震えてた。震えを払うかのように私を殴った。怒鳴った。 それは全部、京子を守りたい一心から来た行動。 やり方を間違えただけ。 周りが見えなかっただけなんだよね。 『………』 山本くん。 私をずっと信じてくれた。 友達だって言ってくれた。 山本くんがいなかったら、私はきっとここまで来れなかったと思う。 彼は本当の強さを教えてくれた人。 『……』 京子、笹川先輩、花ちゃん、シャマル先生、リボーンくん、雲雀先輩もみんな、大切で大好きな人達。 瀬戸さんや及川さんとも、向き合えば、友達になれると思う。 もちろん、黒谷さんとだって。 『………』 自分から心を開いて周りを見て。 何でもいいから、気持ちを伝えて。 嬉しかったら、ありがとう。悲しかったらそれを伝えて欲しい。 何も出来ないかもしれない。 だけど、傍にいる事は出来るから。 だから、死にたいなんて言わないで。 …ー…生きたいって言って。 『……(あったかい、それに…いい香り)』 私は恐る恐る瞳を開ける。 光が眩しくて、チカチカした。 ふと横を見ると傍に置いてある真っ白な花が目に映った。 「羽依……?」 『あ……』 「…ー…羽依っ!?」 『山、本、くん、だ……。どう、したの…?』 「……はは、第一声がそれ、かよ、羽依」 『………だっ、て』 「一週間……」 『え……?』 「一週間も眠りっぱなし、だったんだぜ」 『一週間、も……?ここ、は……』 「学校の保健室」 「おい!野球馬鹿!真白の奴、起きたのかよ!?」 私達の話し声が聞こえたのかベッドカーテンを勢いよく開けたのは獄寺くんだった。 目を覚ましている私を驚いたように見ている。 そして上半身を起こした私の額を、軽く握った拳でこつんと小突いた。 『う…っ、いた、い……』 「…ー…っ!」 『獄寺、くん…?』 「馬鹿真白。」 『ば、ばか……?』 「そうだ、馬鹿だ!何が大丈夫だ!全然、大丈夫じゃねぇだろうが…!!」 『………』 「笹川をオレに任せておいてよ…、何、手首を切って寝込んでんだよ!!バカバカバーカッ!!し、心配させやが…っ」 「うるせぇよ、隼人」 「て……っ!!」 獄寺くんの後ろから顔を覗かせたのはシャマル先生。 思いっきり獄寺くんの頭を手で叩いて言葉を強制的に遮った。 「いってぇな!何しやがる、ヤブ医者…!!」 「俺の可愛い羽依ちゃんをバカ呼ばわりするんじゃねぇ。」 「はぁ!?いつからお前のもんになったんだよ!つか、さ、最後まで言わせろよ…!!」 「馬鹿馬鹿、悪態ついてただけだろうが!意識が戻った怪我人に真っ先に怒鳴りかかるお前が間違いなく大馬鹿だ。」 「……の野郎っ!」 『シャマル、先生…』 「シャマル先生が学校に内緒で特別に保健室で治療してくれたんだぜ。設備もしっかり整えてくれてさ!」 「羽依ちゃん、手首の痕は日が経てば消えていくから安心しろ。」 『そ、っか……』 「気分はどうだ?」 『気分は、大丈夫、みたい…』 少しだけ、クラクラするって言ったらシャマル先生は「そりゃあれだけ血を出したらな」とふっとため息を零した。 そして、お仕置きのつもりなのか額をピンッと弾かれる。 獄寺くんに小突かれた場所と同じ。 赤くなってそう。 『うぅ、痛い……』 「おぉ、生きてるって証だ。もう無理するんじゃないぞ。オジさんの寿命を縮ませないでくれよ」 『ごめん、なさい…』 「おい、シャマル!聞いてんのか!」 「あー、うるせぇうるせぇ!ガキは静かにしてろ。他のレディー達も起きるだろうが!」 『他の、レディー…?』 「あっ、笹川と三浦の事だぜ」 『京子と、みうら、さん?』 三浦さんって誰だろう? 隣のベッドカーテンを開けて見てみると京子と黒髪の女の子が眠っていた。 看病してくれていたのか、二人は制服のまま。 「オレ達、ずっと保健室で待ってたんだ」 『ここ、に…?』 「あぁ、羽依が目が覚めた時には傍にいてぇじゃん。なっ、獄寺!」 「ま、まぁな。つか、言っておくけどな」 『……?』 「オレはシャマルが女共に手を出さないかが心配だっただけだからな!勘違いするんじゃねぇぞ!」 『……?勘、違いって?』 「はぁ?だ、だから、それはだなぁ、その…」 「まぁ、獄寺の事はおいといてな。」 「おい、野球馬鹿……!!」 「まぁまぁ、いいだろ!んで、昨日は笹川達、徹夜。今さっき、オレ達と交代して眠った所なんだぜ」 『保健室に泊まってた、の…?』 「おぅ!羽依を一人にさせたくないからな。オレも大賛成。」 「で、シャマルに頼んだって訳だ。」 『………』 「酷いんだぜ。オレ達がいくら頼んでもめんどくせーって聞いてくんねぇの。」 「エロ医者だからな」 「でさ、笹川と三浦が二人で頼んだらあっさりOK。ひどくね?」 『ふふ、シャマル先生らしいね』 「ん〜、もうそんなに食べられないですぅ…」 「私、も……」 『え……?』 山本くんと獄寺くんは順を追って話してくれた。 その途中、ふと聞こえた寝言で横を見ると黒髪の女の子がゆっくりと目を開けた。 私を見て、びっくりしているのか目をパチパチさせている。 「は……っ、はひーっ!?」 『はひ……!?』 「きょ、京子ちゃん!!京子ちゃん、起きてください!」 「ん……」 「起きました!羽依ちゃん、起きたんですよーっ!!」 「……もう、食べられない、よ」 「あぁ、もう!お、き、て、く、だ、さ、いーッ!!」 「わぁ…っ!?」 中々起きない京子に痺れを切らした黒髪の女の子。 すぅっと大きく息を吸って、京子の耳元で思いっきり叫んだ。 「な、何…!?ハ、ハルちゃん…っ!?」 「起きたんです!羽依ちゃんがグッドモーニングですーッ!!」 「えっ!」 『きょ、京子…、その…、おはよう…』 「羽依……?」 『京子……』 京子は大きな瞳を擦り、私に駆け寄る。 そして、飛びつくように私を苦しいくらいギュッと抱きしめた。 「羽依……っ!!」 『きょ、京子…っ!くるし……っ!は、はなし……っ』 「だめっ!!私、怒ってるんだから!」 『………へ?』 「大丈夫って言ってたのに何でこんな事になってるの!」 『あ……』 「このまま目覚めなかったらどうしようとか、たくさん考えちゃったんだから…っ」 『ごめん、ね…』 「羽依が目を開けてくれたから、いい…っ」 『京、子……』 「よかった…っ、本当によかった…っ」 私も京子をぎゅっと抱きしめた。 しばらくして身体が離れると、京子は涙を拭いながらふふっと笑い、私を見る。 「でも、残念だったな…」 『何、が…?』 「えっとね、目が覚めた羽依に一番、最初に会うの、私だって決めてたの」 『京子、あり、がとう…』 「ううん!そうだ!花もお兄ちゃんも、一昨日、顔を出してくれたんだよ」 『花、ちゃんと、笹川先輩、も……?』 「そうだよ!すっごく心配してたんだから!あ、あとね、雲雀さんも来たんだよ。」 『………』 「羽依?どうしたの?」 『え…、あ……?ひ、ばりさん…って、雲雀、先輩…?』 「並盛に雲雀さんって一人しかいないよ?』 『……』 「もうびっくりしちゃった!いつの間に友達になったの、羽依…」 『ともだち……』 「それでね、伝言を頼まれたの」 『伝、言…?』 「うん、"学ラン早く返してよね"って」 『学ラン……?』 「うん!」 『学、ラン…』 「言えば分かるはずだからって言ってたよ?」 『……、……あ』 手首を切った日、屋上で眠っちゃった私にかけてくれた学ランのこと…? 私はベッドの周りを見るけれど、鞄しかない。 日が経ってるし、今の屋上にあるとは思えない。 『ど、どうしよ…。雲雀、先輩の学ラン…』 「え…?」 『な、なくしちゃった、多分……』 「えぇっ!?」 『あ、謝りに、行かなきゃ……』 なくしたなんて言ったら、絶対に怒られちゃう。 後で、ちゃんと雲雀先輩に会いに行って謝らなきゃ。 そう思いながら私は傍にいる黒髪の女の子に視線を移すと、京子が慌しく紹介してくれた。 「あっ、紹介するね!この子は三浦ハルちゃん!」 「初めまして!三浦ハルです!」 『は、初め、まして…、えっと…』 「真白羽依ちゃん、ですよね!京子ちゃんから話は聞いています!以前からお話を聞いていて、ずっとお会いしたいなって思ってたんです!」 『あ…、えっと…、は、はい…っ』 「あぁ!!身体!お体の方は大丈夫ですか!?どこも痛くありませんか!?」 元気に挨拶したかと思えば、おろおろとして私の心配をしてくれる。 三浦さんは表情がコロコロと移り変わる可愛い女の子。 『だ、大、丈夫です。その、えっと、三浦さんは何でここに…?』 「あっ!ハルでオッケーですよ!ハルも羽依ちゃんって呼ばせてくださいね!」 『う、うん……』 「保健室に泊まってた理由はですね…、京子ちゃんから状況をお聞きしまして…」 『……?』 「このデストロイな保健室に泊まると聞いて、いてもたってもいられなくなったんです!」 『です、とろい…?』 「そうです!デストロイ極まりないです!シャマルさんですよ!ヘンタイさんなんですよ!」 『ヘンタイ……?』 「こらこらこら、オジさんをそんな扱いすんなって!ハートブレイク病にかかっちゃうぞ!」 「あぁっ!近づかないでください…!!」 『ハート、ブレイク病?病気…?シャマル先生、大、丈夫です、か…?』 「おぉ!やっぱり、羽依ちゃんは優しー…」 「ダメですよ、羽依ちゃん!」 『な、なに……!?う…っ!?』 ハルちゃんにいきなり頭に被せられたのは防災用のヘルメット。 ヘルメットを被せてハルちゃんはすぐに私に棒のようなものを持たせた。 『なに…っ!?』 「シャマルさんと一緒の時はガードが出来る物必須ですっ!!セクシャルハラスメント対策です!セクハラ反対です!!」 「……羽依ちゃん、オジさんとはまた今度、な。」 『う、うん…?』 「意識もはっきりしてるし、これならもう家に帰っても大丈夫だ。」 シャマル先生はハルちゃんにセクハラと言われ続けたことに凹みつつ、白衣を脱ぎ捨てると保健室を後にした。 その様子に獄寺くんは気分が良さそうにふっと笑う。 「アホ女もたまにはいい事するじゃねぇか」 「たまには余計です!獄寺さん!羽依ちゃんが起きた事ですし今日はハッピーデーです!お祝いです!」 「おっ!それいいな!親父に連絡を入れて寿司パーティーしてもらうか!」 「ふふっ、ねぇ、羽依、何か食べれそう?」 『うん、おなか空いた、かも』 「何がいいですかね?お寿司も魅力的ですがハル的にやっぱりお祝いと言えば甘いスイーツだと思います!」 「あっ、そうだね!ケーキとか!」 「今日は丁度、ハル感謝デーですし!あ!今の時間なら余裕で限定スペシャルケーキが獲得できます!」 『スペ、シャルケーキ?』 「あのケーキならお祝いにピッタリ!羽依、ちょっとお店に行って来るね」 「きっと羽依ちゃんも気に入ると思いますっ!ほっぺた落ちちゃいますよ!」 「うん!ハルちゃん、早く行かなきゃ!」 「そうですね!!京子ちゃん、行きましょう!ついでに色んなケーキたっくさんゲットしてきます!皆で一緒に食べましょうね!!」 「んじゃ、待ち合わせは竹寿司な!」 「了解しました!!」 『あ、ありがとう…っ!京子!ハル、ちゃん…!』 「……!これくらいたいした事ないですよ!後でもっとお話しましょうね、羽依ちゃん!では!」 二人はケーキを買いに行くため、気合いを入れて保健室を出て行く。 山本くんと獄寺くんは苦笑いして、その背中を送り出した。 「あいつら、ただ自分が食いたいだけじゃねぇか…」 「ははっ、元気なのなー!つーか、羽依は何で目パチパチさせてんだ?」 『えっ!えっと……』 「うるせぇアホ女の思考に追いつかなかったんじゃね?寝起きで余計ボケボケしてっから」 『う…、ぼけぼけ………』 獄寺くんは意地悪そうにニッと笑う。 その後はすっかり静かになった保健室で三人で話した。 陽射しが眩しいけど、今はそれがとても心地よく感じる。 好きじゃなかった保健室の雰囲気も前よりもうんと居心地がいい。 『ねぇ、山本くん、獄寺くん…』 「どうした?」 「なんだよ」 『黒谷さん、瀬戸さん達、それと…、その…』 「………」 「……」 二人を見つめると、二人もじっと私を見つめる。 私が何を言いたいのか分かったようで、二人は視線を合わせ頷くとそれぞれ話してくれた。 「黒谷は表向きは退学。瀬戸と及川は転校する事になったみてぇで学校には来てないぜ。」 「……で、多分、黒谷からだと思うんだけどよ。気づいた時には保健室の前に花と手紙が置いてあるんだよ」 『花、と手紙……』 「あぁ、そこにおいてある白い花。すっげー綺麗だろ。」 『……う、ん。』 「手紙は開けずに置いてあるぜ。」 『これ……?』 花のすぐ傍に置いてある手紙は全部で七通。 封を破って見ると、何も書かれていない真っ白な便箋だけが入っていた。 一通、二通、三通…どれも全部、同じで何も書いてない。 私は、最後の手紙を手にして封を開けた。 「んだよ、全部、何も書いてねぇな」 「…それが最後の手紙だな」 『うん…』 「……」 『………』 「羽依…?」 『……、……』 「何か、書いてあったのか?」 『……ううん。何も、書いてないよ。』 「そっ、か…」 『………』 何もないけど、伝わる。 何もないから、伝わる。 きっと、"ごめんなさい"と"ありがとう"の気持ち。 言葉に出来ない気持ちがこの手紙に込めてある。 『……ありがとう、黒谷さん』 あの時、感じたから分かるの。 気絶する前に受け止めてくれた温もりをちゃんと覚えているから、伝わってくる。 あなたの、気持ちが。 「……なぁ、羽依」 『どうしたの、山本、くん』 「……これからも、さ」 『……?』 「これからも、オレ達と…、並盛にいてくれるか?」 『え……?』 「居づらいって思う、けどよ…。オレは、ここにいて欲しいんだ。」 『……山本、くん』 「楽しく、やっていけるって思うんだ。これからは。」 『………う、ん』 「……」 『並盛に、いたい。』 「羽依」 『みんなと、ちゃんと友達になりたい。』 「……!」 『なれる、よね……?』 「当たり前だ!」 「……あぁ」 「それに、そんな事、言わなくても、もうちゃんとダチだぜ!」 『え……?』 「……だよな、ツナ!」 山本くんは扉に向かって話しかけるとガタンと音がした。 扉についている小窓には人影が映っている。 『沢田、くん……?』 「………」 「十代目、入って来て大丈夫っスよ」 「入って来いよ、ツナ!」 「……」 二人の声を聞いて、沢田くんは扉を控えめに開ける。 けれど、そこに立ったまま部屋に入って来ようとしない。 「ツナな、保健室で一緒にいようぜって言っても聞かねぇの。ずっと廊下にいて、さ」 『沢田くん…』 「………っ」 『……』 「オ、オレ……っ」 『……、……』 俯いてしまった沢田くんの姿を見たら、いてもたってもいられなくなりベッドから降りた。 そして、一歩を踏み出し、彼の元に向かう。 「羽依、歩いて大丈夫か…!?」 『大、丈夫……』 「お前の大丈夫は信用、出来ねぇ」 『それじゃ、平、気……』 「言い方を変えてもだめだ。手を貸せ」 「そんじゃ、オレはこっちな」 『あ…、あり、がと……』 山本くんは左手、獄寺くんは右手を握って支えてくれる。 沢田くんは俯いたまま制服の裾を握って震えていた。 私は二人に支えられながら、まだおぼつかない足取りで沢田くんの傍に寄る。 『沢田、くん』 「……ッ真白、さん」 『………』 「その、オレ…っ」 『……沢田、くん』 「…ー…っ」 『手、大丈夫?』 「え…っ?」 『庇ってくれた時の、手……もう、痛くない?』 「う、うん……オレの傷なんて、全然……」 『よかった…』 「……!」 大丈夫?と聞くと、沢田くんはバッと顔を上げ、驚いたように私を見た。 ホッとして微笑むと沢田くんは泣きそうな顔になって唇を震わせる。 だけど、手を握り締めて泣くのを堪えているようだった。 「オレ、真白さんに言いたいこと…言わなくちゃいけないこと、たくさんあるのに言えないんだ…っ」 『……』 「今のオレには、何もいえない…っ」 『沢田、くん…』 「ずっと考えてた…っ!真白さんに言った、言葉…っ」 『………』 「あれは全部、オレ自身への言葉なんだ…っ」 『沢田くん自身への、言葉?』 「最低、だとか…っ、全部…っ」 『……』 沢田くんに言われた言葉は全部、覚えてる。 思い出すと、胸が痛むほど辛かった。 だけど、それ以上に、はっきりと覚えているのは哀しそうな顔。 私のことを「信じたかった」と言った言葉。 『もう、一度…』 「え……?」 『もう一度、やり直せたらって思わない…?』 「真白、さん…?」 『これも、沢田くんが言った言葉だよ』 「でも、オレ…っ」 『私、"ツナ"くんのこと、好き、だよ』 「……っ」 『今でも、大切な友達だよ』 「…ー…っ!!」 ツナくんは眉を下げて私を見ている。 腫れた目を見たら、ずっと泣いていたんだって事がすぐに分かった。 「だめ、だよ」 『……?』 「オレを許しちゃ、だめだよ…っ」 『……!』 「一度、出来た壁はそんな簡単に崩れない…っ」 『壁?』 「ずっと考えてたんだ…っ!!保健室の壁に寄りかかって…っ」 『……?』 「冷たくて分厚くて、壊れない……君とオレの間に出来た壁みたいだって…!!」 『ツナくん……』 とても悲しい叫び。 自分を許せず後悔ばかりだったという事が伝わってくる。 昔の私みたい。 『……』 私には骸がいてくれた。 骸が私を受け止めてくれたから、今、笑顔になれている。 ツナくんも、一人じゃないよ。 『でも、ツナくん、入って来てくれたよ』 「え……っ?」 『扉を開けて、入ってきてくれた。今は遮る壁はないよ』 「……!」 『壁なんて、ないよ』 「…ー…こんな、オレなのに、何でっ」 『握手、してくれた時ね。嬉しかったの。』 「あく、しゅ…?」 『初めましてってね、握手してくれた時、すっごく嬉しかった、の』 「あ………」 『……』 私は、それ以上は何も言わずにツナくんに手を差し出した。 受け入れてくれるかな?と思うと少しだけ、怖くて震えてしまう私の手。 ツナくんは驚いた顔をして見ている。 『……っ』 だけど、山本くんと獄寺くんが彼の背中を優しく押す。 ツナくんは躊躇していたみたいだったけど、泣いた目を擦って手を握ってくれた。 私の手を取り、もう一度、握手してくれた。 「真白、さん…っ、ごめん、なさい…っあり、がとう…っ」 『ツナくん、私も、ありがとう…』 「……っ」 ツナくんが握手してくれて、私の震えは止まった。 言葉なんていらないよ。 「ごめん」だなんて言葉、欲しくないの。 『……ありがとう、ツナくん』 もう一度、握手したツナくんの手はとても温かかった。 最初の頃みたいに。 |