笹川先輩が「誰か」に襲われて病院へ運ばれた。

雲雀先輩は風紀委員や笹川先輩を襲った犯人の居場所を掴み、乗り込みに行った。

大丈夫。
きっと戻ってくる。

そう思えるのは、雲雀先輩の圧倒的な強さを知っているから。



『……』



でも、不安が消えないのは何でなのかな…?








一つの可能性



「羽依…っ!!」

『……!!』



並盛中央病院に着いて笹川先輩の病室に向かう。

病室へ向かう途中、声をかけられて引き止められる。
驚いて振り向くと、そこには京子がいて、どんと抱きつかれた。



『あ…っ京子…っ』

「羽依…っお兄ちゃんが…っ」

『京子……』



肩を震わせている京子は今にも泣いてしまいそう。
家族が襲われたと聞いたら誰だって怖くなる、不安になるに決まっている。

京子にしか聞こえないくらい小さな声で「大丈夫だよ」と囁いてぎゅっと抱きしめ返した。



『……京子、大丈夫、だから。』

「……っ」



大丈夫。
その言葉は京子に言ってるはずなのに、私自身に言い聞かせてるみたいだった。



「羽依…、ごめんね、いきなり…」

『ううん…、京子、笹川先輩に会いに行こう…?』

「……っうん」



先程よりも落ち着いた京子の涙を拭って病室に向かう。
緊張している京子の手を握って私は扉に手をかける。

扉を開けると大怪我をしている笹川先輩が目に入った。
腕や頭は包帯で巻かれていて重症そうだけど、当の本人はけろっとしてニコニコしている。

その様子を見て京子は笹川先輩のベッドに駆け寄った。



「お兄ちゃんっ!!」

『笹川、先輩…!』

「何で銭湯の煙突に登ったの…っ!?」

『一体、誰に襲われ……て?あれ?煙突?』

「トレーニングのためだ!」

『………?』

「嘘…っ、いつもこんなトレーニングしないじゃない!本当に捻挫なのっ!?」

「あぁ、捻挫だ。」

「捻挫でこんなにならないよ…っ!どこか折れてるとか、もっと酷い怪我してるんじゃないの…っねぇ、お兄ちゃん!」

「極限に重症な捻挫なんだ!京子!」

「でも…っ」

「な、泣くな!大したことじゃ事ないぞ!」

「……っお兄ちゃん」

『……?』



お風呂屋さんの煙突?ねんざ…?
あんなにぼろぼろなのに…!?

そんなはずじゃないのに問い詰める京子に笹川先輩は「捻挫」の一点張り。

目をぱちぱちさせて状況を飲み込めずにいるとツナくんが手招いているから、京子に気付かれないように病室を出た。



『ツ、ツナくん、笹川先輩、襲われたんだよ、ね?』

「京子ちゃんが心配するから捻挫って事にしてるみたい。襲ってきたのは黒曜生だって言ってた…」

『黒曜…生…?』

「うん、中学生だって。それと、よく分からないけど歯を五本持っていかれたって…」

『歯…?』

「つーか!お兄さん、風紀委員じゃないのに何でっ!?一体、どうなってるんだよ!」

「うるせぇぞ、ダメツナ」

「し、仕方ないだろっ!?…って、よく見りゃ病院、並中生ばっかりだし!!」

『あ……』



ツナくんの言う通り周りを見ると病院内は並中生ばかりだった。

持田先輩も襲われたとか、ひそひそと噂話をしている。
どうやら風紀委員だけでなく並中生が無差別に襲われてるみたい。



『……』



噂に耳を傾けながら周りを見ていると風紀委員の草壁先輩を発見した。
雲雀さんが犯人の元へと乗り込んだという話をしている。

病院を後にする草壁先輩に挨拶をして、その背中を見送ると緊張が解けたようにツナくんは大声をあげる。



「よ、よかった…っ!!」

『……』

「雲雀さんが乗り込んだって!これで安全だよ!でも、本当なのかなっ!?」

『う、うん…』

「どうしたの?」

『さっき、ね、雲雀先輩が犯人のところ行くって言ってた…』

「じゃあ、本当なんだ!雲雀さんなら強いし、これで一見落着だよ!!」

『う、うん!そうー…』



そうだね、とツナくんに同意しようとした時、リボーンくんの頭に乗っているレオンくんの尻尾が切れた。

床に落ちてピチピチと動くレオンくんの尻尾。
それを見て「不吉だ」だとリボーンくんが呟いた。



「ひぃーっ尻尾が……っ」

『切れた…!?』

「………」

『……っ』



胸騒ぎが止まらない。
知らないところで、確実に何かが起こってる。

犯人側は黒曜生。

黒曜生と聞いて、あの人達の事が思い浮かんだ。



next



加筆修正
2011/11/21


prev next

「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -