骸がいるであろう最上階へ続く階段を上がる。
一段一段、上がる度に息苦しさが増していく。

ツナくんとビアンキさん、リボーンくんは無事…?

今、骸と一緒にいるの、かな?



『……』



骸は、ツナくんを狙って何をしようと、してるの?








初めて見る姿



雲雀先輩の案内でやって来たのは三階の映画館だった場所。
劇場のドアに手をかけようとした時、中からツナくんの叫び声が聞こえた。

その声を聞いて獄寺くんは足で乱暴にドアを開ける。

ドアが開いた瞬間、雲雀先輩はトンファーを投げて、獄寺くんはツナくんの周りにいる蛇にダイナマイトを投げた。



「十代目!伏せてください!」

「え……っ!?」

『ツナくん、リボーンくん……ビアンキさん、フゥ太くん…っ!!』

「羽依ちゃん…!!獄寺くんに雲雀さんも…!!」

「思っていたよりも早かったな。」

『だ、大丈夫……っ!?』

「オレは平気だけど、みんなの方こそ…!!」

「こんなのたいした事ないっスよ、十代目!!」

「……あぁ、そう。だったら、もういいね。」

「んなっ!!」

『あっ!』

「捨てたー!!」

「ふざけんな、雲雀…!!」



雲雀先輩はたいした事ないと言った獄寺くんを躊躇もせずポイッと捨てた。

支えがなくなり雲雀先輩も立っているのでやっとの状態。
それでも一人で立って投げ付けたトンファーを拾い、目の前の人物を睨んだ。

雲雀先輩が睨んでいる人物は紛れもなく私が知っている「六道骸」

笑っているけれど、いつもと違う微笑みを雲雀先輩に向けていた。



「おやおや…」

「君はここで咬み殺す」

「これはこれは外野がゾロゾロと……千種達は何をしているんでしょうねぇ」

「へっ、メガネ野郎とアニマル野郎は仲良く伸びてるぜ!」

「……なるほど」

「す、すごいよ、獄寺君!」

「い、いえ…オレが倒した訳じゃないんです…」

「えっ!?じゃあ、羽依ちゃんがっ!?」

『……、…雲雀先輩』

「やっぱり雲雀先輩、すげぇーっ!!」

「煩いよ、草食動物」

「ひぃ!す、すみませんーっ!!」

「……さて、と」



雲雀先輩はトンファーを握り一振りする。
そして、骸に向かって構えた。



「覚悟はいいかい?」

「怖いですねぇ。ですが今は僕とボンゴレの邪魔をしないでください」

「……」

「大体、君は立っているのがやっとの身体…その状態で僕に勝てるとでも?」

「遺言はそれだけでいいのかい」

「……面白いことをいいますね。君とも契約をしておくべきでした。」



骸と雲雀先輩。
二人の雰囲気は険悪そのものでツナくんは震えながら見ていた。

見たことがない骸の雰囲気に緊張して震えてしまうけれど、私は思い切って彼の名前を呼んだ。



『…ー…っ骸』

「……」

『骸……っ!!』

「………」

「真白羽依、こいつと知り合いなのかい」

『雲雀先輩、骸は…ー…っ』

「話をしている暇なんてありますか?僕も見くびられたものだ。」

「………」

「いいでしょう。君から片付ける事にします」



私の声は骸によって遮られた。
ほんの一瞬、私を見たけれど名前を呼ぶ声に反応はない。

まるで私なんていないかのようにだった。



「一瞬で終わりますよ」



骸は瞳に炎を灯し、雲雀先輩に攻撃を仕掛ける。
三叉の槍とトンファーのぶつかる音が激しく響く。

私とツナくんは目の前で繰り広げられる戦いを目で追うことしか出来ない。



「ね、ねぇ、羽依ちゃん…やっぱり、あいつが君の言ってる骸なの?」

『……う、ん』

「フゥ太、マインドコントロールっていうので操られてた…」

『……っ!!』

「あいつ、人をおもちゃって言ってた」

『おも、ちゃ……?』

「オレを見つけるために関係のない人も巻き込んで許せないよ……ッ」

『…ー…ツナ、くん。』

「…こんな事を言ってごめん。羽依ちゃんの大切な人なのに」

『……。これも…この、傷も……骸、が…?』

「………うん」



改めて見るとツナくんは傷だらけだった。

ツナくんだけじゃない。
雲雀先輩やビアンキさん、獄寺くん……フゥ太くんまで怪我をしてる。



『……』



これは骸の行動の結果。

生々しい血の匂いが充満する空間に酷く眩暈がした。



『む、くろ……』

「あっ!」

『ど、どうしたの、ツナくん…っ』

「部屋に桜が…っ!骸の奴、雲雀さんのサクラクラ病を利用する気じゃ…っ」

「十代目、大丈夫っスよ」

「え…っ!?」



薄暗い部屋がパッと明るくなると天井には満開の桜が咲き乱れている。

綺麗な淡い色だけど、この場所で見るとどこか不気味に感じた。



「ほぉら、桜ですよ」

「……っ」

「クフフ……」

「……」

「さぁ、もう一度、僕に跪いてもらいましょう」

「………」



桜が舞う中、雲雀先輩はよろけながら一歩を踏み出す。

そのまま倒れてしまうんじゃないかと思う足取りだったけれど、トンファーを骸に振り上げた。



「おや」

「………」



一度目の攻撃で骸の動きが止まる。
雲雀先輩はそれを逃さず、もう一度、トンファーで攻撃した。



「……!」



避けようがなく骸はトンファーの攻撃をまともに受ける。

その瞬間、天井を覆いつくしていた桜はパッと消えた。

骸は倒れ、手にしていた三叉の槍はカラカラと音を立てて遠くに飛んでいった。



「桜も幻覚だったんだ…!!」

『幻、覚……』

「さっきの蛇もあの目の能力で出したんだよ」

『そう、だったんだ』

「羽依ちゃんは骸の能力、知らなかったの?」

『……う、ん』

「何にも?」

『…ー…うん。何にも、知らなかった。』

「……」



ずっと一緒にいたのに、知らなかった。

能力があってもなくても骸は骸だから、私は知ろうとも思わなかった。



「……ついにやったな」

「雲雀の奴、おいしいとこ持っていきやがった」

「終わったってことは…」

「………」

「やった!家に帰れるーっ!!」

『あ、雲雀先輩……っ!!』

「えっ、雲雀さんがどうかしたの…って、あぁ!倒れたーっ!?」



雲雀先輩は骸が起き上がらないのを見届けると、そのまま倒れてしまった。

リボーンくんが言うには途中から無意識で戦っていたみたい。



「一度、負けた事がよっぽど悔しかったんだろ。」

「す、すげ……」

『ツナ、くん……雲雀先輩やビアンキさんたちを早く治療、しないと…っ』

「そ、そうだ、病院!早くみんなを病院にー…」

「それなら心配ねぇ。ボンゴレの医療チームがこちらに向かってるぞ。」

「え…っ!?」

「ランチアも山本も無事だ」

「あぁ、よかった…!!」

「これで、また遊びに行けるっスね…!!」

「獄寺君!君も無理をしちゃだめだよ!医療チームが着くまで…」

「その医療チームは不要です」

『……!!』

「クフフ……」



不意にかけられた声にぞくりと背中が粟立った。
私達はその声の主の方を振り向く。



『骸……っ?』

「クフフ…」



骸は薄い笑みを浮かべて銃を手にしている。
その銃は私たちに向けられていた。



「てめぇ、何しやがる…!!医療チームが必要ないってどういう事だ…!!」

「クフフ、分かりませんか?」

「……っ」

「生存者がいなくなるからですよ」

『骸……っ!?』

「Arrivederci……」

『…ー…っ!?』



私たちに向けられた銃。
骸はそれを自分の頭に向けて、躊躇いもなく撃ち抜いた。

身体に響く銃声。
目の前で骸がどさっと倒れる。

私は何が起こったのか考えるよりも先に骸の傍に駆け寄っていた。



『骸……っ!!』

「羽依、ちゃん……」

「羽依…」

「………」

「捕まるくれぇなら死んだ方がマシって事かよ…」

『や、だ……っ、むく、ろ…っ』



骸の頭からはドクドクと血が流れて止まらず私の服に染み込んでいく。

ピクリとも動かない骸の身体を抱きしめたら、涙が溢れて止まらなかった。



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加筆修正
2011/12/15


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