あーあ、退屈。
任務が失敗してまたつまんない牢屋生活に逆戻り!

本当なら今頃は骸ちゃんの任務を終わらせて報酬がっぽり貰って新作のバックに洋服、宝石を買い漁ってるはずなのに。

それにポイズンクッキングでもなく、ここで出されるまっずいご飯でもなく一流のレストランでディナーしてたに違いないわ!

よりによって同じ牢にはバーズと拘束されてるツインズがいるし気分は最悪!



「はぁ……」



私ってどこまでもついてないのね。
キモイったらありゃしないわ。

ちょっと!辛気臭いのが移るからこっちを見ないでよね!

どうせだったら骸ちゃんと同じ牢だったらよかったのに。
髪型が変なだけで落とせば文句なしのカモ……じゃなくて最高の恋人でしょ!

…って、あら?
隣から骸ちゃんの声が聞こえるわ!

さっきまで静かだったけれど隣の牢は骸ちゃん達だったのね。

女の声も聞こえるけど、今回の仕事って私以外に女がいた訳?



「……?」

「ウジュジュ、それは真白羽依、でしょうねぇ」

「ちょっとバーズ、私の頭の中、読まないでよね、キモーイ」

「……」

「それより、ねぇ!真白羽依って誰よ」

「……六道さんが気に入ってる女性ですよ。」

「な…っどういうことよ!」

「M・Mも見たでしょう、ボンゴレ十代目と一緒にいた少女です」

「あー…あのダッサイ技を使う女の他にもいたわね。そういえば、確か骸ちゃんはあの子には手を出すなって言ってたわ。」

「M・Mも言われていたんですか」

「そうよー、他はどうでもいいって言ってたのに!普通の生活をさせてあげたいとか何とか話してたわ」

「随分と大切にしている女性のようですねぇ」

「大切、ねぇ…」

「ウジュジュ、カメラ越しの少女ではなく、目の前の少女に硫酸をかけたらと思ったら興奮したんですが残念でしたよ」

「硫酸だなんて、あんた、趣味が悪すぎるわ。」

「ウジュジュ…お褒めの言葉ありがとうございます…」

「褒めてないっての。」



皮肉混じりのため息を一つ零して、バーズは放置決定。
私は気を取り直して隣から聞こえる話し声に耳を傾ける。

骸ちゃん、脱獄の話とかしてないかしら?

もちろん協力しちゃうわよ!
だって、こんな所にいつまでも長居したくないもの!



「そういえば、羽依」

『…なに?』

「あの時は意識ありました、よね?」

『……?』

「その、最後かと思いまして…その…キスを……」

『あ……』

「キスっ!?骸さん、羽依にキスしたんれすか!?」

「……最悪」



骸ちゃん、あんたってば私達にその子に手を出すなって言いつつ、自分は違う意味で手を出したのね…!!

でも、まぁ、それくらい財産さえあれば許すわよ。
男なら、女に興味を持ってたって不思議じゃないものね!



「犬、千種、盗み聞きは感心しませんねぇ」

「聞こえるに決まってるじゃないれすか!つか、オレ達に羽依に嫌われろって言ってたのに何してるんれすか、骸さん!」

「し、仕方ないでしょう!?傷だらけで潤んだ瞳で僕を見上げてるんですよ……!!」

「……何が仕方ないんですか」

「その瞳を見ていたら、何か、こう…ゾクゾクとしてしまい……」

「それで無理矢理……」

「クフフ、聞こえが悪いですがそうなりますね」

「………」

「……」

『…〜…っ!!』

「羽依」

『な、なに…?』

「そんなのイヌに噛まれたと思って忘れた方がいい」

『え…っ』

「千種、何を言ってるんですか…!!しかもそんなのって言い方はないでしょう…!!」



ちょっと、骸ちゃん…!!
あんた何なの!?シリアスな場面だったろうにゾクゾクって!それでキスしたって…!!

戦いの最中でなかったらR指定突入じゃないの!?

正直、痛めつけた女に見つめられてゾクゾクしたって引くわよ!
骸ちゃんならありえるから余計にね!

ドSにも程があるわ!



「うっひゃー!変態ナッポーがいまーす、牢、移動させてくらさーい!!」

『……?へん、たい?』

「ちょ、ちょっと待ってください、犬!何を言ってるんですか!あ、ゾクゾクしたのは、この場を少しでも和ませようとしたちょっとした冗談ですよ?」

「えー、本当ですかー!?」

「あの場でそんな事を考える訳ないでしょう?」

「話してて目が本気でしたが…。羽依、危ないからこっちに来なよ。」

「なっ!!大体ですね、あの場で襲うくらいなら、もっと早くに襲って僕だけのものにしてますよ!!…って、羽依の前で何て事を言わせるんですか!!」

「それはこっちのセリフです。何てことを言うんですか。」

『……?』

「羽依ー、変態とむっつりの所よりこっち来いって。黒曜の時と違った意味でここは危ねーから」

「……」

「………」

『危ない、の?』

「すっげー危ねぇびょん。仕方ねぇからオレの傍を離れちゃだめだからな!」

『う、ん…?』

「犬、何でちゃっかり羽依の傍にいるんですか。こんな場所でそんな事するなんて僕が許しません」

「何かしようなんて思ってないれす!骸さんこそ何を考えてるんれすか!!」

「それは決まっているでしょう?羽依と○○や×××ですよ、クハハ…!!」

『……?』

「もっかい輪廻を巡ったら変態道のスキルを身につけちゃいますね、骸さん」

「犬、もう遅いよ。輪廻を巡らなくても自ら身につけてる。それよりも羽依、傷の手当てをするから腕と翼、出して」

『あ…っ、うん…』

「千種、服を脱げだなんて僕が許しません」

「誰も脱げだなんて言ってません。骸様は自分で出来ますよね。さっさと自分で治療してください」

「つ、冷たいですね、千種。もしかしてむっつりって言ったのを気にしてます?」

「……」

『千、種…?』



はぁ…。
寄ってたかって女の前で何てことを話題にしてるんだか。

そういえば、真白羽依ってポイズンクッキングで倒れた私を介抱してくれたのよね。

見た感じ、あの変態どもに的確なツッコミするような子ではないし、この状況、収まるのかしら…?

でも、まぁ、私には関係ないから放っておくけどね。



"だ、大丈夫、です、か…?"

"……っ"

"羽依、これくらいじゃ死なないわよ"

"でも、顔色が…っ"




…関係、ないけど。



「……」



関係ないけど、聞いてて、こっちが不愉快だから。

そうよ、そう。
不愉快だから。

それだけよ。



「ちょっと、骸ちゃん!下ネタはやめてよね!こっちまで聞こえて気分が悪いわ!」

「おや?この声はM・M…、もしかして隣の牢ですか?」

「そうよ!ぜーんぶ丸聞こえ!」

『……?だ、れ…?』

「あらー?覚えてない訳ー?」

『え……?』

「そのぼんやり脳みそチンしてあげようか?……って言っても今はクラリネットないから出来ないわね。」

『あ……ビアンキさんと戦った…』

「まったく。あんなダサい女に負けるなんて思ってなかったわよ」

『あの……』

「なによ」

『大、丈夫ですか…?』

「はぁ?」

『ポイズンクッキング…ツナくんたちも食べた事あって…体調、崩してた、から…』

「……」



あー、はいはいはい。何となく分かったわ。
骸ちゃんがこの子に普通の生活をさせたい気持ち。

だって、足手まといだもの。

それに敵だった私に情けをかけるなんて、こっちの世界に向いてない。

一人での戦いだったら、この子はとっくに死んでるわ。



「……」



…骸ちゃんはそう事を思って突き放した訳じゃなさそうだけど、ね。



「骸ちゃん」

「何ですか?」

「残念ー、そういう女がタイプなのねー」

「な……っ」

「キャハハ、珍しく慌ててるわねー、楽しー!」

「M・M、からかわないでください。」

「あんた、真白羽依…、だったっけ?」

「そうですが、それが何か?」

「何で、骸ちゃんが答えるのよ」

「君と関わったら羽依が穢れます。変な遊びや言葉遣いを覚えさせないでください。」

「私より骸ちゃんが関わる方が色んな意味で穢れると思うわ」

「それはそうでしょう」

「真面目な声で言い切らないで。まったく、いつからそんな変態になったのよ。」

「……、…牢に入り色々と吹っ切れました。」

「そこは吹っ切れちゃいけないと思うわよ…、それより、ねぇ!真白羽依!」

『M・M、さん…?』

「黒髪と…あと、銀髪の男といい雰囲気だったわねー?もしかしてどっちか彼氏ー?」

『え……』

「は……?」

「私が見る限り特に黒髪の方ねー。あいつ絶対、その子のこと好きよ」

「……!!」

『黒、髪………山本、くん?』

「や、山本とは誰ですか…!!ランキングに書いてあった奴のことですか…!?」

「はい。戦って犬がやられた奴です」

「犬…ッ!!そこは意地でも勝たなければダメでしょう…!!」

「んな事、言ったって…ッ」



キャハハ、動揺してるわ、骸ちゃん!

でも、私、嘘は言ってないわよ?
銀髪の方は分からないけど黒髪の方は確実に真白羽依に好意を寄せてる雰囲気だったもの!



「ウジュジュ…それでしたら、私も思いましたよ。黒髪の少年の方、守るように前に出ていましたからね」

「でしょー?」

「……バーズ、いたんですか」

「酷いですなぁ、六道さん…ずっといましたよ…」

「硫酸をかけたいと聞こえたのは幻聴ではありませんでしたか…覚えておいてくださいね。」

「……!!」

「口は災いの元って本当ね」

「…それよりもいいですか、羽依。」

『む、くろ…?』

「もうこんな所まで来てしまったのですから、僕ははっきり言いますよ…」

『……?』

「本当は絶対に言わないと思ってたんですが、もう後戻りは出来ませんし…この状況になったのであれば僕は君を誰にも渡しません…」

『渡、す…?』

「羽依、僕は君を守ります。この僕の手で……」

『骸……』

「骸さん、何だか嬉しそうだびょん…こんな状況なのに…」

「開き直ってる……」

「煩いですよ、外野は黙ってなさい」

「……」

「………」

「キャハハ、骸ちゃん、必死ねーっ!」



しばらくの牢屋生活も骸ちゃんのおかげで退屈せずに済みそうだわ!羽依は大変だろうけどね!

こんな辛気臭い場所から抜け出せたなら、羽依を使って骸ちゃんをたくさんからかってみたいわ!

まずはショッピング!
羽依に可愛い服を着せて、アクセサリーをつけてメイクをして骸ちゃんに見せるの。

でも、デートなんてさせてあげないわ!
羽依を着飾るのは骸ちゃんのためじゃない。

私の隣を歩かせるんだからみすぼらしい格好でいてほしくないだけよ。

でも、それなりにお金を弾んでくれたら、羽依と二人きりでデートをさせてあげるわよ、骸ちゃん!



……なーんてね。



end



2009/07/05


prev next

「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -