骸の本当の望みはなに?
ツナくんの身体を手に入れて、マフィアを殲滅させること…?

復讐を成し遂げた後はどうするつもりなの?



『……、……』



復讐が終わったら道具は不要になる。
千種や犬、ランチアさん、私も「不要」になった時は殺すのかな。



『……』



一人になった骸は、穏やかに微笑むことが、出来る?








どんな時でも



骸は仲間と引き換えにツナくんに身体を渡せと要求する。

沈黙が流れ、私とツナくんは緊張しながら骸を見つめていた。



「さぁ、どうしますか…?」

「……っ」

「おやおや、声も出ないですか。」

「…っリボーン!どうしたらいいんだよ!」

「甘えてんじゃねぇ、お前が自分で何とかしろ」

「そ、そんなぁ!見捨てないでよ、リボーン!」

「女の前でそんな情けねぇ声を出すんじゃねぇ」

「……っ!」

「ツナ、お前の気持ちが答えだ」

『……ツナ、くん』

「………」

「彼の気持ちは逃げ出したい、ではないですか?仲間を、全てを捨てて、ね」



骸は余裕たっぷりに微笑んでいる。
何も言わないツナくんに骸はゆっくりと近づく。



「さぁ、僕と契約してください」

「……ー…たく、ない」

「……おや」

「こんな酷い奴に負けたくない……」

『ツナくん……!?』

「こいつにだけは勝ちたい…!!」

「な……っ!?」



ツナくんが叫んだ瞬間、何かが強い光を放つと部屋には糸のようなものが張り巡らされた。

糸の中心には丸い物体が見える。
どうやら、その丸い物体が光の中心みたい。



「ディーノが跳ね馬になった時と同じだな」

『な、なに……っ?』

「な、なんだよ、これ…!!」

「レオンだぞ」

『レオンくん…?』

「そうだぞ。レオンはオレの生徒に試練が訪れるのを予知して繭になる。」

「……っ!?」

「そして、生徒が成長する時、羽化するんだ。」

「カメレオンって羽化すんのっ!?」

「余計な事を考えるな。さぁ、ツナ専用のアイテムを吐き出すぞ。」

『ツナくん専用のアイテム…?』

「あぁ。ディーノの鞭、エンツィオもレオンが吐き出したんだ」

「エンツィオってレオンの子どもだったのーっ!?」

「クハハハハ…!!最後がペットの羽化とは笑わせてくれますねぇ…!」

「めちゃくちゃ笑われてるぞ、リボーン!!」

「さぁ、終わりにしましょう」

「あぁっ!」



骸はレオンくんを真っ二つにすると中から何かが弾き出された。

それはツナくんの真上に飛び、慌てて落ちてきたものをキャッチした。



『ツナ、くん、それって…っ』

「毛糸の手袋ーっ!?」

『それが、ツナくん専用のアイテム?』

「何で毛糸の手袋なんだよっ!?」



手にとって見ると「27」と数字の入った毛糸の手袋だった。

とりあえずツナくんは手につけてみたけれど何も起こらない。

見た目通り普通の手袋だった。



「リボーン!もっとちゃんとした武器とかでないのかよ!」

「ちゃんとした武器が出た所で使いこなせないだろ」

「それはそうだけど!これじゃあ、ぬくぬく温かいだけだって!!」

「クハハ…!本当に笑わせてくれますねぇ…!ですが、これでおしまいです…!」

「ひぃぃ!!来たーっ!!」

『……っ!!』



骸は隙をつきツナくんに槍を振り下げた。
ツナくんはガードするように手を前に出す。

三叉槍の先が手袋を貫くと思いきや攻撃が当たった瞬間に金属音がして貫通しなかった。



「攻撃が弾かれた…?」

「いってーっ!!って、あれ?中に何か……」

「そいつは特殊弾だな。」

「え……っ」

「ツナ、弾を寄こせ」

「させませんよ……!!」

『だめ…っ!!』

「……っ邪魔をするな!!」

『あ…ー…ッ!!』



骸を止めようとしたけど力では敵うはずなくて、お腹に蹴りを入れられ壁に吹き飛ばされる。

壁に打ち付けられた痛みが全身に響いたけれど翼がクッション代わりになったのか、何とか持ち堪えることが出来た。



「そこで静かに眠っていてください。君には後ほどたっぷりと悪夢を見させてあげますから…」

『……っ!!』

「羽依ちゃんっ!!」

「羽依のおかげで弾が手に入ったな」

「リボーン!それで何とかなるのかよ!」

「見たことがねぇ弾だが仕方ねぇ、試すしかないな」

「試すも何も撃たれるの、オレだぞっ!?」

「これに賭けるしかねぇんだ。それに羽依の行動を無駄にする訳にはいかないだろ?」

「その言い方、卑怯だぞーっ!!」

「どうとでも言え。覚悟しやがれ。」

「撃たせませんよ…!!」



骸の狙いは特殊弾を持っているリボーンくんに変わる。
リボーンくんは骸の攻撃をひらりと交して銃を構えた。



「……っ無傷で手に入れるのは諦めることにしましょう」

「な……っ」



獄寺くんに憑依している骸はダイナマイトを手にしてツナくんに投げた。

無数に投げられたダイナマイトが爆発する。
ダイナマイトによる煙でツナくんの姿が見えない。



『ツナくん…っ!!』



煙が晴れていけば中央にはダイナマイトの攻撃が直撃してしまったらしいツナくんが倒れていた。

憑依されている獄寺くん達は動けないツナくんに一歩一歩、近づいていく。



『……!』



ツナくんの身体を手に入れたら、骸はマフィアの復讐のために、これよりももっと血を流す。

みんな傷ついて欲しくない。
骸にだってそんな事して欲しくなんかない、のに。



…ー…私の声は、届かないの?



『骸……!!』

「おや、僕を止められるとでも?」

『……っ!!』

「代わりはいくらでもいるのですよ。やはりいっそのこと、この場で……僕の手で殺してしまいましょうか」

『む、くろ……私は…骸にこんな事、して欲しくない…』

「………」

『私、は…骸が大切……』

「……」

『仲間だって思ってくれなくても、いい……私を、殺したって……好きに使ってくれたって…構わ、ない…』

「………」

『だけど…みんなが傷つくようなこと、しちゃ…嫌、だよ…っ!!』

「……犠牲は自分だけでいいと考えですか。」



犬の姿をしている骸は私の話を聞いていてくれてるのか、こちらを向いて近寄ってきた。



「……」

『む、くろ……』



座り込んでいる私を見下ろして睨んでいる。
私は傷口から血が出るのも気にしないで、身体に力を入れて立ち上がった。



『……っ』



ツナくんは言ってた。
自分に何が出来るか分からないけど一人じゃないから前に進めるって。

本当は怖い。
けれど、私だって"守りたいもの"がある。

ツナくんたちを守りたい。


骸たちも守りたい。



『…ー…みんなを、傷つけないで』

「…君もやはり、こちらの世界には向いていないですねぇ」

『骸、だって向いて、ない、よ……優しい、人だか、ら……っ』

「僕が、優しい…?」

『優しい、よ……いつも…』

「…えぇ、確かに優しかったかも知れませんね」

『骸……』

「全ては君を利用するためです」

『……』

「君はエストラーネオファミリーのボスに気に入られていた兵器。何も分からない君は僕にとって都合がよかった。」

『………』

「情報を聞き出すのに大いに役立ってくれました。」

『その、後は…もう…いらなかった…の?』

「…えぇ、そうですよ」

『今、邪魔になる、なら…殺せばよかった、のに…』

「その能力はいつか使えるだろうと思っていましたから。これは僕の誤算だ。」

『………っ』

「僕が憎いですか?クフフ、自分の意識があるうちに存分に憎んで下さって結構ですよ」

『……』



骸は私を見つめて今までのことを話した。
利用していただけ、嫌悪感を抱いていた、と。

私は骸を見つめ話を聞いていると、ふと、あの時の言葉を思い出した。

学校で問題が起きた時、骸と一緒に黒曜に行くことを"行かない"と答えた後に言われた言葉を。



『………』



おかしい、かな…?
冷たい言葉を言われているのに、温かい言葉ばかりを思い出してるなんて。



『……』



おかしくない、よね?
だって、私が知っている骸はいつだって優しく微笑んでいた、から。



『骸、あの時の言葉、も嘘……?』

「……あの時、とは?」

『並盛で、問題があった時に会いに来てくれて抱き締めて言ってくれた、言葉…』

「……」

『想ってる、って……、"例え、これから何がっても"って言ってた…』

「………」

『骸、もしかしてこうなる事を分かってた……?』



骸は私の問いかけに答えようとはしない。
私はいつまでも続く沈黙を破り、もう一度、骸に問いかけた。



『あの時に私が言ったこと、覚えてる…?』

「……さぁ、君の言葉などいちいち覚えていませんよ」

『じゃあ、もう一度、言うよ…、忘れたなら、何度だって…』

「……必要ありませんよ。」

『私は、骸が大切』

「………!」

『私はどんなことがあったって骸を信じてる。大切な仲間だって…っ!!』

「……」

『私が守りたいものはツナくんたちだけじゃない』

「ボンゴレだけではない…?」

『そうだよ、私は……』

「……」

『私は骸を守りたい…!!骸に傷ついて欲しくないの…!!』

「…ー…っ!!」



私の声が静かな部屋に響く。
骸はそれっきり俯いていた。

彼の名前を呼ぶと嘲笑うかのようにふっと口角を上げて私を見た。



『骸……?』

「……煩いですよ」

『………!』

「それ以上、話すな」

『あ……っ!?』



髪を引っ張られて遠くに吹き飛ばされ、再び壁に叩きつけられる。

背中に強い衝撃が走り、倒れこみ咳き込むと喉に生暖かいものが流れた。

ゴホゴホを咳をすると赤い液体が地面に落ちた。



「……少々、お喋りが過ぎましたかねぇ」

『むく、ろ……っ』

「ボンゴレも君のような役立たずは必要ないでしょう」

『………!』

「戦えない、守れない、弱くて小さい何も出来ない君なんて、ね」

『……ッ』

「……君とボンゴレはとても似ている」

『……っ』

「さぁ、眠ってもらいましょう」

「…ー…羽依に触るな」

「………!!」

『ツナ、くん……っ?』

「六道骸、お前を倒さないと…」



…ー…死んでも死にきれねぇ。

静かに呟いたツナくんの額には綺麗なオレンジ色の炎が灯っていた。

死ぬ気弾を撃たれた時みたいに荒々しい雰囲気じゃない。



これが新しい特殊弾の効果……?



『ツナ、くん……?』

「羽依……」

「馬鹿な。あれだけの攻撃を受けて立ち上がるなど…っ!!」

『……』



骸の言った通り、私は誰かと比べると何も出来ないかもしれない。

何が出来るのかって言われたら分からない。



『………』



誰かを守れるような力がない。
誇れるものがない。

すぐに弱い気持ちになっちゃうし、迷っちゃう。

あげたらキリがない。



『……(…でも)』



心から想う人がいるなら今より強くなれる。

そう思っちゃだめ、かな?



『……』



守るために勇気が出る。前に進める。

弱いことはいけないことじゃない。



弱さは今よりもっと強くなれる証拠。



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加筆修正
2011/12/17


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