骸の殺気が私に向けられる。

私が骸の復讐の標的の一つ…?



『……っ!?』



それじゃあ、骸は最初から私を仲間だと思って、なかったの…?

どういう事なのか分からなくて私は呆然と骸を見つめていた。








偽りの絆



「羽依ちゃんが復讐の標的の一つってどういう事なんだ…!!」

「その娘にとっての絶望とは何か分かりますか?」

「え……」

「信じていた仲間、大切な者に裏切られ孤独になることです」

「………!!」

「ボンゴレ…、君も一度、その娘を憎み孤立させ絶望を味あわせたでしょう」

「それ、は…っ」

「クフフ、礼を言います。とても楽しませて頂きました。」

「……ッ」

「信頼していた僕らに裏切られ、存分に絶望を味わった上で地獄に送ろうかと思っていたんですが…」



以前の出来事を思い出して震えているツナくんを他所に骸は私を見て考え込む。

そして何かいい事を思いついたように口角を上げた。



「あっさり殺してしまっては面白味にかける。君にはランチアの代わりになってもらいましょうか」

『………!!』

「君の真っ白な翼は血で赤く染まる…、とても美しいでしょうね…」

「な……っ」

「精神をじっくりと破壊し、永遠に血の海をその翼で舞って頂きましょう」

「骸、お前……っ」

「ボンゴレ、僕よりも先に痛めつけていた張本人が何か言える立場ではないでしょう」

「………っ」

「君はあの時、思っていたはずです。その娘が憎くてたまらない、いなくなればいいのに、と」

「…ー…っ」

「言葉も出ませんよねぇ?」

「…ー……だ」

「震えていますねぇ。全然、聞こえませんよ?」



ツナくんは拳を握って俯いている。
その拳は痛いくらいにギリギリと握っていて震えていた。



「…ー…後悔するんだ!」

「……!」

「何であんな事を言ったんだろう、何であんな事をしちゃったんだろうって…!!」

「………」

「後悔、したんだ……!今もずっと後悔してる…!!」



泣きそうな声でツナくんは叫ぶ。

震える拳をぐっと握って、俯いた顔を上げると力強い瞳で骸に見た。



「骸、お前も絶対に後悔する…!!」

「おやおや、面白いことを言いますねぇ」

『ツナ、くん…』

「後悔したって遅いんだぞ…!!骸、本当はお前だって羽依ちゃんを大切に思っているんじゃないのかっ!?」

「………」

「仲間だって、思っているんだろ…っ!?」

「…ー…っ!」



ツナくんの言葉に骸は小さく反応をした。
けれど、すぐに余裕の笑みを零し、低い声で答えた。



「僕は仲間と思ったことなんて一度たりともありませんよ」

「……っ!!」

「…犬と千種は君に情が移ってしまったみたいですが、ね。」

『むく、ろ……』

「侵入者はボンゴレ以外どうとでもして良いと言っていたのですが…、千種達は君を壊せなかった。」

「……!」

「一時の下らない情のせいでね」

「………!!」

『……っ』

「お喋りはここまでです。さぁ、そろそろ始めましょう…」

「な……!!」

「ツナ、気をつけろ。奴の槍に傷つけられると憑依をされるぞ」

「ほぅ…、よくお分かりで…」

「……」

「クフフ、僕はこの行為を"契約する"と言っているんです」



骸は獄寺くんからビアンキさんへ移る。
ビアンキさんに憑依した骸は近くに倒れていた雲雀先輩を傷つける。

傷が付くと先程から動かなかった雲雀先輩がピクリと動いた。



「クフフ…」

「ひぃぃーっ!今度は雲雀さんに憑依ーっ!?」



雲雀先輩が起き上がってツナくんに攻撃をしようする。
だけど、攻撃をする前に倒れてしまった。

倒れた雲雀先輩から骸の気配が消えると、再び獄寺くんとビアンキさんが立ち上がった。



「雲雀さん…!?何で倒れて…っ」

「その身体は使い物にならなかったんですよ。先程はよくあれだけ動けたものだ。」

「え……!!」

「ツナ!気をつけやがれ!」

「……っ同時に二人!?」

「クフフ……」

『……っ!?』



ドアを破壊して入って来たのは犬と千種だった。
雲雀先輩に外まで吹っ飛ばされていたはずなのに動けるものなの…?



『あ……っ!?』



千種たちの瞳を見ると獄寺くんたちと同様に「六」の文字が浮かび上がっていた。

骸が憑依している千種たちはフラフラとしている足取りでツナくんに襲い掛かる。



「……四人に憑依するなんてな」

「クフフ、それだけではありませんよ…」

『ツナくん…!!』



骸が憑依した獄寺くんが不気味に笑うとダイナマイトを取り出してツナくんに向かって投げた。

このままじゃ直撃しちゃう……!!

私は翼を羽ばたかせ、ツナくんを抱き上げ骸と距離を取った。



「乗っ取った奴の能力も使える訳か。」

「クフフ……」

『ツナくん…っ』

「羽依ちゃん!ど、どうしよう……っ!!」

「どうしようじゃなくて、お前が早く何とかしやがれ。女に守ってもらってどうする。」

「だって、オレにどうこう出来る問題じゃ…!!」

「オレの生徒なら乗り越えるはずだ」

「んな事を言われても!」

「ディーノだって越えてきた道だぞ。」

「えっ、ディーノさん…!?」



リボーンくんは骸たちの攻撃を避けながらディーノさんの話をする。

ディーノさんが生徒だった時も絶体絶命のピンチがあった。
けれど、それを乗り越えた時、「へなちょこディーノ」から「跳ね馬ディーノ」になった、と。



「そう言ったってオレとディーノさんじゃ…っ!!」

『ツナくん……っ』

「うわぁぁっ!?」

「慌てるな、これも幻覚だ」



上空に逃げる私たちの進路は火柱によって絶たれる。

リアルに感じる火柱。
だけど、これは幻覚だ。

怪我なんてしない。



「羽依!上空に逃げたからって油断するんじゃねぇ!」

『……ッ!』



私は火柱に気を取られていて、上空に投げられたダイナマイトに気づけなかった。

リボーンくんの声で気づいた時には遅い。
間一髪、避けたものの、爆風で飛ばされてしまった。



「……っ」

『あ……っ!!』 

「さぁ、終わりにしましょう」

『ツナくん…っ!!』

「ひぃぃ…!!」

「おや……?」

「え…っ」

「く……ッ」



地面に落ちた私たちに瞳に炎を宿した千種が近づいてくる。

ツナくんに狙いを定めて襲い掛かってきたけれど、途中で身体の力が抜けたように倒れてしまった。



「憑依しているのに何で倒れるんだ…っ!?」

「よくある事ですよ…」

「ど、どういう事だよ…っ」

「乗っ取ったとはいえ、肉体が壊れていれば動きませんからね」

『え……っ』

「まさか、怪我で動けない身体を無理矢理に使ってるってこと…!?」

「クフフ…」

「……!」

『千種、犬…っ』

「僕は痛みを感じませんが身体が限界では使いようもないですねぇ。」

「仲間がどうなってもいいってことかよ…!!そんなのおかしいよ…!!」

「仲間ではありませんよ。憑依したならばこれは僕の身体です」

『……!』

「どうなろうが僕の勝手だ」



みんなの身体から血がドクドクと流れ出ている。

それでも立ち上がって、ツナくんを狙う。

骸の意志で今にも倒れてしまいそうな身体を無理矢理、動かされてる。

このまま無理をしたらしたら、もしかしたら……



『…ー…やめてっ、骸っ!!』

「このままじゃ死んじゃうよ…!!」

「ほぅ、こんな時に他人の心配をするとは面白い。」

「……っ!」

「…ー…そう、でしたね。君はバーズとの戦いでガールフレンドのためにナイフを突き刺そうとしたんでした。」

「そ、それが何だよ…」

「クフフ、それで行きましょう。君はその甘さ故に僕に乗っ取られる。」

「……!」

「これ以上、お仲間の身体を傷つけられたくなければ大人しく契約してください」

「え……っ!!」

『ツナくん…!!』



いつもの日常は楽しくて温かくて、優しい。

今朝までだったら、そんな日がいつまでも続くんだって信じて疑わなかった。



『……っ』



だけど、たった数時間で変わってしまった。



『……』



みんな傷ついて、血を流してる。
マフィアに復讐するなら、もっともっと血が流れる。



『…ー…っ』



骸はそれを望んでいるの?

エストラーネオファミリーにいた時と変わらない、戦いばかりの"日常"を望んでいるの?



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加筆修正
2011/12/16


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