綺麗な世界で生きたいと思った。

みんな、笑ってて争いがない、そんな綺麗な世界。

エストラーネオファミリーの"外"はそういう世界だと思ってた。



『………』



だけど、飛び込んだ世界は思い描いていたものと少し違っていた。

争いは絶えなくて、不安、怒り、哀しみがたくさん。

それでも、私はこの世界を綺麗だって思う。



『……』



だって、大切な人がいる世界だから。



『……(む、くろ)』



大切な人がいるから、頑張れる。
どんなことも受け入れようと、一歩を踏み出せるの。

悲しいこと、辛いことがあっても笑顔になれるんだ。


だから、未来を知りたいって思うよ。








「悲しい」の後の幸せ



立ち上がろうとしたけれど、私の足はガクンと力が抜けて、その場に倒れてしまった。
諦めず、もう一度、立ち上がろうと身体に力を込める。

だけど、その時、はっきりと声が聞こえ私は耳を澄ませた。



"羽依"

『……!』



骸の声が頭に響く。

私の名前を呼ぶ声は、とても優しい。



(む、くろ…?骸…なの…?)

"羽依、このまま眠りなさい"

(なんで…っ?や、だ…っ骸たち、連れて行かれちゃう…っ)

"これで、いいんです。君は並盛にいなさい。"

(や、だ…っ骸……っ)

"この先、何があっても大丈夫です。沢田綱吉が傍にいるのなら、例えマフィアの世界でも君は傷つかないでしょう"

(…ー…でも!骸たちは…っ私は骸のこと…っ)

"羽依"

(……!?)

"先程、僕は君に何をしたのか忘れたのですか"

(え……っ!?)

"君を痛めつけたのは、この僕です"

(そんなの別に気にしてない…っ!骸と、一緒にいたい…!!)

"………"

(む、くろ…!!)

"…ー…本当に"

(……?)

"本当に君は甘い。ですが、だから…"

(……っ)

"だからこそ、僕は羽依の事を…"

(……む、くろ…?)

"…ー…何でもありません"

(……っ)

"僕を嫌い、もっと憎んでください……そうすれば、いずれは全て忘れる"

(…ー…!!)



眠りたくないのに、目を瞑りたくないのに、私の身体が限界なのか意識が遠のいていく。

ずるずると這いずって進もうとするけれど身体の力がどんどんと抜けていって、目の前が白くなる。



(や……っ骸……っ)

"……一つだけ"

(……!?)

"一つだけ、約束してください"

(…ー…っ約、束!?)

"笑っていてください"

(む、くろ……?)

"君が君でいられる場所で、君だけの居場所で"

(骸……っ!!や、だ……一人は、や、だ…っ)

"君らしく、笑っていてください"

(………ッ)



私も一緒に行く。
その言葉は骸に届かない。

気がついた時には、もう全てが終わってしまっていた。

意識が途切れる前、最後にはっきりと聞こえたのは「一人じゃないですよ」という骸の優しい声だった。



『……』



これはこの間、見た夢の続きなのかな…?

必死になって追いかけても骸に手が届かない夢。



『…ー…む、くろ』



夢の続きの終わりは哀しそうに微笑み、光へと背中を押してくれた骸だった。


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