泣いてしまう場面とは、全て唐突に起きると、何処かの学者が言っていた気がする。
‥‥記憶が凄く曖昧だから、詳しくは覚えてないけど。
多分、合っていると思う。





「‥‥‥‥‥」
「…………」



苦しい。
応接室で、無言でしている仕事。
しかも恭弥さんと二人きりなんて……!
や、恭弥さんは大好きなんだけどさ、‥‥‥うん。
二人きりは辛い。会話とか無いし。
音楽掛けたいなー。でも恭弥さんがあんまり好きそうじゃないし。
名前はそんな事を思いながら、汚い字で書かれた報告書を眺めていた。



「‥‥ねぇ、名前」
「はい、何でしょうか恭弥さん」
「其処の書類、取って」
「はーい」



雲雀が言った通りに、名前は指差された書類を取り、雲雀に差し出す。
有り難う、と何時も通りに言われたので名前は黒の革張りソファーに戻ろうとしたが、何故か腕を掴まれてしまう。
少し驚いて、後ろを向いてみる名前。
雲雀はキリリとした目で名前を見ていた。



「ねぇ。手、出して」
「へ?」
「良いから」
「あ、はい‥‥‥」



一体どうしたのだろう、と思いつつも名前は雲雀に片手を差し出す。
その間に、机の引き出しから何か小さい物を取り出した雲雀は、名前が差し出した手の上にそっと置いた。
視線を落として、自分自身の手を見ると、可愛らしくラッピングされている小さい箱が、名前の手の上にあった。



「‥‥あの、此れは?」
「プレゼント。ちょっと前に誕生日だったんでしょ?名前が教えてくれなかったから遅れたけど」
「‥‥‥ふへ?」
「履歴書見て知ったんだよ。名前。付き合ってる子には誕生日プレゼントあげなきゃいけないんでしょ?」



何でそんな事知ってるんですか、恭弥さん。
や、一般常識化してますね、其れ。
色々とツッコミたいけど、どうしよう‥‥。
凄く凄く、嬉しい。

名前は自分の感情が抑えきれなくなったのか、突然涙を流し始めた。
声を上げる事無く、静かに。



「‥‥名前?ちょ、どうしたの?」
「………恭弥さん」
「何?」
「凄く、凄く嬉しいです。有り難う御座います……」
「‥‥‥うん」



箱の中身は、凄く綺麗なネックレスでした。



















(嬉し泣きは、駄目ですか?)





*凄く遅れてしまいましたが、柚夏さんのお誕生日プレゼントとして捧げます!
何時もと変わらず駄目文、本当に済みません!
少しでも気に入っていただければ嬉しいです。


070926

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