ジョットは、戦う時の顔が・・・・・とてもキツくなってて、正直なところ怖い。グローブを両手に嵌めて、敵のマフィアを次々と倒していくあの姿が、最初に見るジョットの姿だった。私は、彼と出会って、本当に良かったと思ってる。初めて会った時の彼は怖かったけれど、実際は全然違ったもの。あの日、私は何故かマフィアに追われていて…もう死んでしまう寸前だった。ジョットに助けて貰って、ジョットが筆頭のあの有名な『ボンゴレ』のメイドとして働いて。そして、いつの間にか『恋人』、と言う関係になっていた。パーティの時、彼に手をぎゅっと握られたあの感触が今でも忘れられない。ドレスなんて綺麗な服を着たことのない私が、盛大なパーティに招待されて良かったのかな?ジョットが私に似合うものを…と、ボンゴレが運営している店で色々と着せられたけど、それをジョットに見られるのはとても恥ずかしかった。でも、ジョットはふわっと笑って…「似合うよ、名前」と言ってくれた。マフィアなんて、どうせ女の人を攫って、遊びの道具として使って…使えなくなったら捨ててしまう人間ばかりかと信じきっていた私にとって……ジョットは、私の大切な…大切な恋人だ。
若くしてボンゴレの初代ボスとなって、6人の信頼する守護者を従えて、ジョット自身にとって大切なものを守っている。オレンジ色の炎は、決して恐ろしいものじゃない。前に、ジョットの手を「血塗れたモノだ!」と死ぬ前に叫んだ男が居た。私はそれが許せなくて、その男を護身用に持っていた銃で……一発で殺してしまったことがある。初めて人を殺した気持ちって、こんなに残酷なものなんだって…ジョットに抱き付いて、声がガラガラに枯れるまで、私は泣いた。ジョットは、そんな私を優しく、全身で抱きとめてくれた。(大好きだよ、ジョット…)



「名前、俺お腹すいたんだけどー」
「え、さっき夕食で結構な量を食べてたじゃん!ジョットって、大食いなのね」



また、ジョットの意外な一面を知ることが出来た。パーティの時は、あのボンゴレのボスなのだからはしたないところなんか1つも見せずに、少食で済ませて、色んなファミリーの話し相手になってた。けれど、私だけに甘えてくるその仕草とか…私だけに意地悪してくることとか。まぁ意地悪はしないで欲しいけれど、可愛いジョットも私は大好きだから…喧嘩しててもすぐに許しちゃう。でも、ジョットの我儘が「お腹すいたー」でよかった。私はミラクル的に料理だけがとりえだから、ジョットに私の自慢料理を食べて貰いたい。洋食?和食?中華?それとも……お菓子?とジョットは気まぐれだから何が食べたいのかまで聞かないと分からない。私は彼の隣に座って彼の顔を覗き込んだ。どうやら疲れているご様子。昨日は、ファミリーの令嬢に散々付き合わされていたし、その時のジョットの顔なんてもう思い出したくもないな、流石に・・・・。真っ青になっててとても可哀想だった。私がジョットに近づくと、女の人たちが変な目で私のことを見るから、パーティの時は俺にあまり近づくな…ってジョットに言われてる。けれども、けれども!それでも私は彼のことが凄い心配なの。パーティは私も一応参加するけれど、男の人たちが私に寄ってきたら駄目だって嵐と雨に付いてもらって、3人で世間話をして楽しい?パーティはいつもそれでおしまい。(あ、ちなみに霧と雲は色んな意味で危ないからやめとけって嵐が言ってた!)



「ねぇ、ジョット?本当に大丈夫…?もう今日は何も食べないで、早く寝た方が良いよ。明日、守護者たちと会議なんでしょ?」
「うーん…そうなんだけど、寝る前に何かが食べたいんだよ」
「その『何か』を教えてくれないと、私何も作れないわ」



ジョットは私の肩に顔を預けて、私に甘えるように言葉を返してきた。特に熱もないし風邪も引いてないっぽいけど…疲労が結構きてると思う、ジョット、今でも私の肩に顔を預けて寝そうな顔をしているんだもん。ジョットの綺麗な金髪のつんつんとした髪が私の頬に当たってくすぐったい。私の腰に腕を回して、横から抱きつく状態になった。そのまま寝ても良いよ?私、全然気にしないから、とにこっとジョットに笑いかけて私は言う。ジョットの顔の色が少しピンク色に染まったように見えて、何故かこっちも顔が赤くなってきた。腰に回している手の指を見ると、ボンゴレボスの証である大空のリングがちら…っと見えた。これを見る時、改めて「ジョットって強いんだなぁ」と思う。
私は、彼の全てを知らない。もっと知りたいと思うけれど、私に知ってほしくない過去もあるに決まってる。それと同じく、私もジョットだけには知ってほしくない過去を持ってる。(私の方が我儘、だよね)(ごめんね、ジョット……)最初は、若くしてマフィアのボスになるものだから誰も信じてくれなかったんだって。ボンゴレも、最初から大きいファミリーじゃない。私も、少しだけどジョットに地道に協力して、守護者たちと一緒に戦ってきた。彼の暗殺をつけ狙う者もかなり多かった。血塗れで帰ってくるジョットの姿を見ると、その血が彼自身のものなんじゃないかって思って体がブルブルと震えてしまう。でも、それは違った。ジョットは「ただいま、名前…ごめんね、怖い思いをさせて」と、頬、額、手の甲…そして唇にキスをしてくれる。(愛してる、私も愛してる)



「あのさ、名前って昔から鈍感だよな…。俺が今何が食べたいか、本当は分かってるんだろ?」
「――え……ま、まさかそれって、もしかして・・・・」
「そ!名前が思っている通り、俺が食べたいのは、名前なんだよ……」



そんなの……爽やかな笑顔で言われても困る。ジョットの「私が食べたい」ってことは、つまり世間で言う「夜の営み」?ってやつなんでしょう?冷や汗が出てきてハンカチでそれを拭く私。逃げようとしたけれど、ジョットの抱きしめる力はとても強いから、もう逃げられそうにない。何だよ、一つも疲れてるようには見えないじゃん!ジョットにそう言おうとしたけれど、きっと逆らうようなことを言ったら・・・すぐにでも襲われるに違いない。横目でジョットを見ると、何とも言えない黒い笑顔がこっちを向いてる。すぐに目を逸らして、机の上に置いてある本を手にとって私は適当にページを開く。どうすれば、この状況から脱出することが出来るのだろう。(あ、そう言えばこの本さっき読み終えたばっかじゃん!)(あぁっ、他に本ないのかよ!)
適当にページを開いて本を読んでいると、ジョットが本を持っている私の手を自分のそれと重ねて、口から出る息を私の耳に吹きかける。私は耳が一番弱いことを知ってるから、ジョットは自分の顔の方に振り向いて貰おうと意地悪しているのだ。我慢だ……我慢しなくちゃ、彼の好む反応をしたら彼の思うツボ!悪戯を楽しんでいるかのような目でこっちを見ているジョット。少しばかり腹が立ってきたよ…何で私ばっかりがこんな目にあわなきゃいけないの?嵐って、そう言えばジョットのことを凄い慕ってたよね?だったらジョットと嵐がイチャコラサッサすれば良いじゃん・・・って、私の方がおかしいことを考えてる。もう……諦めるべき、なのかな?




「――やっ、優しくしてよ!?」
「…フフ、分かってるって」











end



綾瀬柚夏さまに捧げます。1周年&70万ヒット記念!




2008/3/24

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