「骸くん、今日は何の日か・・・・・・知ってる?」

「ん?何でしたっけ・・・・忘れちゃいました」




こうやってじゃれあう様にして会話をしているのは・・・六道骸と苗字名前。
名前が数ヶ月前に黒曜中に転入してきて、偶然骸と同じクラスになって・・・仲良くなった。

名前は、クラスの男女にもとても人気のある女の子。
成績も優秀で、スポーツは特に日本の国技系が得意・・・誰も彼女を嫌う者は居ない。

そんな彼女のことを、骸はずっと見つめていた。
『一目惚れ』…と言うべきなのか、彼はいつも名前のことを眼で追いかけているようだった。

犬と千種に話かけられても、いつも呆けた顔をするばかりで。




「きっと、名前に恋してるんだびょん!」




と、千種にヒソヒソと話しているのを耳にした骸は・・・自分の中でも『そうなのかも・・・』と思い始めていた。



そして、今。

珍しく名前から遊びに誘われて、街中をブラブラと歩いて・・・ペットショップで動物と賜れたり、
カフェでコーヒーを飲んで、ゲームセンターで大はしゃぎして・・・

それから名前の心からの『笑顔』を見ると、骸の理性がぶっ飛んでしまいそう・・・。




(これって…デートってヤツ、なんでしょうかね・・・?)




骸は、心の中でそう思っていた。

僕は、名前とあんまり話したこともなければ…学校でも一緒に授業の実験をしたり、
家庭科で調理実習の班を一緒にしたことなんてないのに、
名前から誘ってくるなんて…。

でも、本当の僕を知ってしまったら…名前はきっと僕の元から離れて、消える。




「骸くんは、イタリアから来たんだよね?イタリアでは…今日は…」

「今日は…何ですか?」




名前の真っ赤な顔を、見ると…思わず抱きしめたくなる。
そして、骸はそんな彼女のことを悪戯したい気持ちになる・・・・・・・・・・。




「お菓子とかあげたり、お菓子あげなかったら・・・悪戯とかされないの?」

「えっ?」




(そう、だ・・・・・・・・。今日はハロウィンでしたね。すっかり忘れてました)




骸は、無意識に笑っていた。

――僕は、小さい頃の思い出なんてそんな楽しいものはありません。
だから、『ハロウィンの日』に何をしたのかも・・・全く覚えていません・・・・・・。

覚えてるのはたくさんの血を流した・・・・・・・・・・・・・・・・・くらいでしょうか?




「Trick or Treat!!」

「・・・・・・・・・名前・・・・・・・・・・・・・・・??」

「骸くん、お菓子くれないと・・・・・・・・・悪戯しちゃうぞ!」

「・・・・・・・・・・・・・・ぷぷっっ」

「なっ、何笑ってるのよ〜!!骸くんの馬鹿・・・・・・・・・・・」




僕が名前に悪戯される?
逆ですよ、名前・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。




「名前・・・・・・・・・・・・『Trick or Treat』、それは僕の台詞ですよ?」




今は、僕が名前に悪戯したい気分なんです。
耳元で囁くと、顔だけではなく耳まで真っ赤になった名前。




「・・・・・・うぅっ////お菓子・・・・・・・持ってない・・・」

「なら、大人しく僕に悪戯されますか?」




名前が本当の僕と・・・犬と千種を知った時、どんな顔をするか。




それは、『今』の僕には関係ありません。




名前なら・・・・・・・・・・僕のことを信じてくれる。





そんな気がした。




end

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