街散策



「あら、スクお出かけ?」

「あ゛ぁ」

なまえとの電話の後。そろそろ行くかと部屋を出るとルッスーリアに出会った。

「ボスのところには行かなくていいの?」

「…仕事は済ませてある。何かあったら電話しろぉ」

自分の仕事は済ませてある。何も問題が起きなきゃ今日はオレがいなくても大丈夫だろうと言ってそのまま出かけた。


+++


「よぉ」

「あ、おはようございます」

アパートへ行くとなまえは既にエントランスで待っていた。

「待ったか?」

「いや、窓から見えてから降りてきたんで。じゃあ行きますか」

「今日はどこに行くんだぁ」

「…散策ですよ」

歩き出したなまえに声をかけると彼女は振り返ってそう言った。


+++


「あ、お花屋さんだ。可愛い」

「………」

散策と言ったなまえは本当に何の計画もなく街を歩いていた。所々気になった店で立ち止まる。今は花屋。店員の女とつたないイタリア語で楽しそうに話している。一人で散策を楽しんでいるなまえはオレがいない方が良かったかと思うほどに自由だ。

「スクアーロ、今日何時までいけるの?お昼一緒に食べれる?」

店から出てきたなまえに尋ねられる。

「あぁ」と頷くとなまえは嬉しそうに小さく笑った。

「良かった。今店員さんがね、向こうに美味しいサンドイッチ屋さんがあるって教えてくれたの。そこで買って食べよう」


+++


なまえの言った店で昼飯を買い公園で食べる。外で食うとか何年ぶりだろうなぁ゛…

「スクアーロってさ、結婚とかしてるの?」

「ごほっ…!」

いきなり予想もしなかった質問をされ咳き込んだ。
う゛お゛ぉい何てこと聞きやがるんだ…
大丈夫?とお茶を差し出され受け取る。

「…してねぇ。独身だ」

「ふーん…まぁ27だもんね。仕事は?」

何してるの、と聞かれ一瞬思考が止まる。
こいつは一般人。自分がマフィア、しかも暗殺部隊だとはいえねぇ…

「…いいよ言いたくなかったら。そこまで興味ないから」

黙っているとなまえがそう言った。助かったが興味ないってそれはそれでどうなんだ…

「くあーっいい天気!気持ちいいねー」

そう言って芝生に寝転んだなまえ。まさかこんなとこで寝る気か…?

「う゛お゛ぉい、こんなとこで寝るんじゃねえぞぉ」

「んー…目つむってるだけー」

「………」

こいつマジかぁ。こんな来たばっかの国で屋外で…仮にも女だろぉ。不用心にも程があるぞぉ…

「…山本さ、あたしのこと何か言ってた?」

目をつむったままなまえが言う。

「あ゛ぁ?山本?友達だっつってたぞぉ」

そして一般人だと。だからよろしくとなぁ。今思えばむちゃくちゃなこと言いやがってあの脳天気バカ…

「…それだけ?」

「あぁ」

「ふうん」

…?何だぁ…?こいつもしかして山本武のこと…

「あたしはスクアーロいいやつだって言われた」

「あ゛ぁ?」

オレがいいやつ?あいつはどこを見てそんなこと言ってるんだ。

「あたしもそう思うよ」

「は?」

「昨日も今日もスクアーロのおかげで楽しい。ありがとう」

にこと笑って言ったなまえ。んな言われなれてねーこと言われると反応に困るぞぉ…

「はは、照れてる?」

「照れてねぇ!」

起き上がって笑い出したなまえに言い返した所でケータイが鳴った。
…チッ、ルッスーリアか。

「何だぁ?」

『スクアーロ、お出かけ中悪いんだけど少しトラブルで。戻ってこられる?』

トラブルだとぉ?面倒くせぇが仕方ない仕事だ。

「…あぁ。分かった。すぐ戻る」

そう言って電話を切る。

「帰るの?」

「あぁ。急用でな」

じゃああたしも帰ろうかなと立ち上がったなまえに家まで送ると言えばいいよと言われた。

途中まで一緒に帰り別れ道でそれじゃあと帰ろうとするとスクアーロ、と呼び止められ振り返る。

「また会える?」

「あぁ」

そう言うとなまえは嬉しそうに笑いまた電話すると言って帰って行った。



そういやあいつ途中からナチュラルに敬語とれたな。




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