テストのあと



『良かったじゃねぇか。まぁオレは何もしてねぇがなぁ』

「いやいやスクアーロのおかげだよ」

テスト期間が終わって久々にスクアーロと電話した。ちょうどスクアーロに教えてもらったところが出たよって報告したんだけど。お前が頑張ったからだろぉなんて言われると素直に嬉しい。

『もうしばらくはテストないんだろぉ?』

「うん。もうすぐ学園祭だ、し……」

自分の言葉にはっとなる。学園祭。思い出してしまった。ダンスパーティーだ。
応援してるからな!とか言われてもなぁ…平日だしスクアーロきっと仕事あるし。

『う゛お゛ぉい、どうしたぁ?』

「へ?いや、何もないよ!」

急に黙ったから変に思ったのかスクアーロに尋ねられる。慌てて返事をすると…そうかぁ?と怪しむように言われた。

「…何もしてないわけじゃないもん」

スクアーロが好きなのは本当だけど。別に恋人になりたいわけじゃない。ていうか想像つかない。今のままでも楽しいし。

『あぁ?何の話だぁ』

「何でもないこっちの話」

今はこうやって電話したり一緒にご飯食べたり遊びに行ったりできるだけで十分なんだってほんとに思うんだけどな。


+++


「じゃあまたなぁ」

『うん、また明日』

明日会う約束をして電話を切る。なまえのテストが終わったらしい。あの日以来、久しぶりの電話だ。
あの日、なまえの家に行って勉強をみた日。突然笑い出したなまえに勉強しすぎて頭がおかしくなったのかと思った。けどその後は普通だったから大丈夫なんだろうと思っていたが…今日も何だか一瞬おかしかったよなぁ。
もともと何考えてるのかよく分からねーやつだったが最近はますます何を考えているのか分からない。
まぁ元気ならそれでいいんだがな。


+++


「“じゃあまたねなまえ”」

「“うん、また明日ね”」

授業が終わってリアちゃんと別れる。今日は家でスクアーロと一緒に夜ご飯を食べることになっているのだ。帰りにスーパー寄って食材買って帰ろうかななんて考えながら歩いていると向こうからレオくんが歩いてくるのが見えた。

「“お、なまえ、もう授業終わり?”」

「“うん、レオくんも?”」

「“おう、もう帰んの?”」

「“帰るよ。レオくんは帰らないの?”」

そう聞くと彼はちょっとなって笑った。ちょっとなんなんだろう。

「“そーいやなまえダンスパーティーの相手決まったのか?”」

ううん、と首を振ると前に言ってたやつ誘わねーのと言われる。

「“いやそれは…例え誘っても仕事だから無理だと思うんだよね”」

スクアーロ忙しそうだからな。まぁまずスクアーロとダンスとか考えられない。ていうかダンス自体日本人の私には未知の世界だ。

「“まぁなまえなら1人でも当日いっぱい誘われるよ”」

「や、そんなことはないでしょう…“レオくんは誰と行くの?”」

「“ん?オレ?リア”」

「“え?”」

思わず日本語で小さく呟いた後、返ってきた答えに驚く。リアちゃん…はもう色んな人に誘われてたような…ん、でも断ってたっけ。

「“まだ誘ってねえんだけどな。オレもあいつもあんなだからさ。でももうこのままじゃ嫌だと思って。リアが他の男といるのも見たくねーし”」

誰かにとられて後悔する前になって笑うレオくん。そうだったのかぁ…小さい時からずっと幼なじみって言ってたもんな。なんかちょっと嬉しい。

「“つーわけで、なまえあいつどこにいるか知らない?”」

「“あ、さっき図書館寄って帰るって…”」

「“そっか、ありがと。なまえも気をつけて帰れよ。また明日な”」

「“また明日…あ、レオくん”」

「“ん?”」

「“…応援してる、ね”」

そう言うと彼は少し照れくさそうに笑って図書館の方に歩いていった。


+++


「誰かにとられる前に、かー」

ご飯を食べて、皿を洗いながら昼間の会話を思い出す。ちなみにスクアーロはソファーで寛いでいる。
その発想はなかったな。前聞いた時はそういう人いないって言ってたけど。いや、結婚してないって言ってただけだっけ。確かにスクアーロに恋人がいたら嬉しくはないよなぁ。今みたいに会えなくなるだろうし。そう思うとちょっとだけくらいなら頑張ってみてもいいかもしれないなぁなんて…。うん、聞くだけ聞いてみよう。

「スクアーロって今度の金曜日ひま?」

お茶をテーブルに置きながらソファーに座って雑誌を読んでいたスクアーロに尋ねる。

「金曜日…?仕事だな」

「ですよねー」

うん、分かってたけど。

「なんかあんのかぁ」

「学園祭がね」

「あぁそういや言ってたな」

「そうそう、ダンスパーティーがあるらしくてさ」

「へぇ、そんなのがあんのかぁ」

「うん、スクアーロは学生の時なかったの?」

「あぁ、オレの行ってた学校は学園祭なんてなかったからなぁ」

「え、そんな学校あるんだ」

「まぁ色々と特殊だったからなぁ…」

「ふぅん?どんな学校だったの?」

「あ?あー…あれだ、日本でいう専門学校みたいなもんだ」

「へー」

少しだけ焦ったような答えだったからそれ以上は深くつっこまなかった。専門ってことは仕事関係なのかもしれない。スクアーロは仕事教えてくれないもんな。別にいいんだけど。何でなんだろうとはたまに思う。人に言えない仕事してんのかな。スパイとか国家機密員的なのとか。あぁでもヤバい系じゃなくて言うのが恥ずかしい系という可能性もあるかも。…ホストとか。


+++


「ふへっ」

「…何笑ってんだぁ」

「いや、何でも」

夕飯を食べ終わって話していると突然笑ったなまえ。…何に笑ったんだぁ。
さっきは少し焦った。学校の話しちまうなんて…あぶねぇ。こいつのゆるい雰囲気に流されるとこだった。気をつけねぇとなぁ…

「あ、お茶おかわり煎れてくるけどいる?」

「おぉ、頼む」

「はーい」

そう言って立ち上がったなまえが鼻歌を歌いながらキッチンに向かう。仕事のこと、オレのこと、こいつに知られるわけにはいかない。第一オレはマフィアどころか暗殺部隊の一員なんだ。本当なら一般的と関わるべきじゃないんだろうけど。

「はい、緑茶どうぞー…ってどうかした?ぼーっとして」

「いや、何でもねぇ。茶、ありがとなぁ」

「?どーいたしまして?」

今はまだこのままで。




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