テスト前の自覚



「何でこれがこうなるんだ…」

あたしは今イタリア語で書かれた問題集と戦っていた。もうすぐテスト週間だから勉強しているという訳だ。

「…難しいよー鮫太郎ー」

鮫太郎っていうのは水族館行った時にスクアーロにもらった鮫のぬいぐるみの名前だ。
ベッドに佇みつぶらな瞳でこちらを見ている鮫太郎を見てふと思い出す。スクアーロ元気かな。
テスト前と言ったからか単に仕事が忙しいのか最近全然連絡がこない。こっちからも連絡してないけど。
水族館行った後何回か電話したけど何かおかしいんだよね。前みたいに上手く話せないっていうか。変に緊張して。何なんだろう。

「だめだー、全然分かんない」

辞書と参考書を駆使してみるが分からないものは分からない。明日学校でもっかい友達に教えてもらうかな…
そんなことを思っているとインターホンが鳴った。

「はーい…あ」

「よぉ、久しぶりだなぁ」

ドアを開けるとスクアーロが立っていた。ほんとに久しぶりだ。会うのは水族館以来?

「来るなら言ってくれれば良かったのに」

テスト前だから机の上ぐちゃぐちゃだよと歩きながら言う。スクアーロを見れば何とも微妙な顔をしていた。

「…携帯見てねえのかぁ?」

電話もメールもしたんだがと言われて携帯を見る。

「あ、電源切れてる」

ほったらかしにしていたらいつの間にか充電がなくなっていたらしい。隣でため息をつかれた。

「夕飯はもう食ったのかぁ?」

机の惨状を見ながらスクアーロが言う。

「まだ。そういえば最近まともに作ってないなぁ…」

めんどくさくてここ3日くらい昼はおにぎりで夜はお茶漬けとかばっかりだ。

「んなことしてたらまた体調崩すぞぉ」

「家庭科の先生が米だけでもしばらくなら大丈夫って言ってたよ」

日本のお米には栄養素がちゃんと含まれてるのだそうだ。

「…何か作ってやるから机片付けとけぇ」

「はーい」

呆れたようにそう言ってキッチンに向かったスクアーロに返事して机を片付けに向かう。
なーんだ普通に喋れるじゃん。良かった良かった。


+++


「はーい」

なまえが片付けをしに机に向かったのを確認してキッチンに向かう。
久しぶりに連絡してみたら繋がらなくて心配してきたっつーのに…電話でなまえの様子おかしいと思ってたんだがオレの思い違いだったか?
テスト前だと言っていたから最近はあまり連絡もとっていなかった。
…いや、それだけじゃない。水族館以来連絡しづらかったのだ。理由は分かっている…が、分かっているからといってどうこうできる問題じゃない。

「…とりあえず作り始めるかぁ」


+++


「美味しかったーごちそうさまでした」

「テスト勉強は進んでんのかぁ」

「んーぼちぼち?」

「何だそりゃあ」

「あ、そーだ、スクアーロちょっと教えてくれない?」

「教えられるか分かんねーぞぉ」

人に教えるのは得意じゃねぇんだと言われる。
あぁ、確かにそんな感じ。言わないけど。
まぁイタリア語私より分かるでしょうということで教えてもらうことにした。

「どれが分からねーんだぁ?」

「えーっとね、これ」

「見せてみろぉ…」

そう言いながらあたしの前にある問題集をスクアーロが覗き込む。

「!!」

ち、近い…!思わずばっと離れると怪訝な顔をされた。

「…どうかしたかぁ?」

「別に」

何だこれ。動悸が激しい。体温も上がってる気がする。熱か?いやいや至って健康だから。
そこでふと気づいた。この症状ってあれなんじゃないか?

「う゛お゛ぉい、聞いてんのかぁ?」

「ふっ」

あぁ、なんだそういうことか。何で今まで気づかなかったんだろう。
分かったら何だか可笑しくなってきた。

「あはははは」

「………」

スクアーロが何とも引きつった表情であたしを見つめるけどしょうがない。気づいてしまったこの気持ち。
あたしはスクアーロが好きなんだ。




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