手料理



「何作ろうかなー」

学校が終わった帰り道スーパーで食材調達。今日はスクアーロに夕食をごちそうするのだ。スーパーを歩きながら献立を考える。
…イタリアンは無謀だよね。スクアーロは本場の人だしあたしの作るのなんてなんちゃってイタリアンレベルだ。
スクアーロは見かけによらず料理上手だもんなー…いつもびっくりする位早いし。

「となるとやっぱ和食かな」

あんまり無理せず作り慣れてるものを作ろう。それが一番失敗ないだろうし。
スクアーロも無理するなって言ってたしね。


+++


「いただきます」

結局作ったのは焼き魚にご飯とお味噌汁、煮物というなんとも普通な庶民の和食。
スクアーロとご飯なんて昨日もだったのに自分の作ったのってだけでこんなに緊張するのか。

「…どう?」

「普通に美味いぞぉ」

「よかった…」

スクアーロの言葉にとりあえず一安心して自分も箸を手にとる。
まぁ味見もしたから大丈夫とは思ってたけど。手料理を人に振る舞うって緊張するよね。人それぞれ味の好みとかあるし。

「…お前も料理できるんだなぁ」

ニヤッと笑って言ったスクアーロ。

「スクアーロには及ばないけどね」

あたしスクアーロの料理好きだよと言えば何故か顔を赤くしたスクアーロに何言ってやがんだと怒鳴られた。
…誉めたのに。

その後はいつも通り喋りながら食事を楽しんだ。残ったら明日のお弁当にしてもいいなと思って多めに作っていたけどスクアーロは全部食べきった。
何か嬉しいな。また明日のご飯炊かなきゃだけど。

「ごちそうさまでした。お皿洗ってくるね。お茶でもいれるから適当にしてて」

「おう」


+++


なまえがキッチンにむかったのでとりあえずソファーに座る。
適当にしててって言われてもな…まああいつらしいが。
特にすることもないためテーブルの上に置かれていた雑誌を手にとる。
“イタリア巡り虎の巻”
…何だこれは。パラパラとめくるとそれはイタリアの観光ガイドのようだった。所々折り目がついている。ほとんどが食いもんの店だな。

「お待たせ。和食だったしお茶でいいよね…あ、それ」

茶を持ってきたなまえがオレが見ていた雑誌に気づく。

「日本から持ってきたのかぁ?」

「うん、日本で買ったの。まだまだ行ってないとこいっぱいだけどね」

隣に座ったなまえはいつか制覇したいんだと言った。

「ほとんど食いもんの店だな」

「そーだね。スクアーロと行ったとこも載ってるよ」

そう言ってなまえが指差した先には初めて会った日に行ったレストランが載っていた。
そんなこともあったな…そんなに昔でもないのに随分前のことのようだ。

「……水族館?」

更にめくっていくとひときわ大きく印がつけられているページが目にとまった。

「あぁそこね、行ってみたいの」

日本にいた時からイタリア行ったら絶対行こうと思ってたのにまだ行けてないんだとなまえが言う。

「……行くか?」

「え?」

「次の水曜ならあいてる」

「一緒に行ってくれるの?」

黙って頷くと驚いた様子だったなまえの顔がぱっと明るくなる。

「ありがとう。楽しみ」

授業終わったら連絡するねと嬉しそうに笑ったなまえ。
こいつの笑顔を見ると何だかこっちまで嬉しくなるんだよな、なんてらしくないことを思った。




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