回復



「………ん、今何時…」

朝、目が覚めいつも通りケータイに手を伸ばす。
開いてびっくり。いつもじゃありえない程の数の着信があった。

「………」

いたずら…?
な訳ないかとメールを開く。
山本からだった。最初は普通のメール。しばらくして返事ないけど大丈夫か?見てたら返事してくれ、と心配のメール。
そうだ、あたし風邪引いて何もできなくて寝てたんだ…
こんなにいっぱい…悪いことしたな…

山本に風邪治った心配かけてごめんとメールを送信しベッドから起き上がる。

「あれ…?」

部屋が綺麗になってる…?
最後に見た自分の部屋とは違う景色。床に散らばっていた服や本はなくなり引っ越してきたばかりの時のように綺麗になっている。
そういえばベッドの横には水が置いてある…おかしいなと思っていると枕の横に落ちていたタオルに気づいた。
…うちにこんなタオルあったっけ。
そんなことを考えていると山本からメールが返ってきた。

〈よかったのなーまぁスクアーロがいるから大丈夫だとは思ってたけどな!〉

「…スクアーロ?」

そのメールを見て昨日の記憶が蘇る。
そうだ、昨日はスクアーロがいた。あんまり覚えてないけどご飯作ってくれて何かあったら電話しろって…
てことは部屋を片付けたのはスクアーロ…あの部屋を見られたんだ…

呆然としているとインターホンの鳴る音が響いた。

「よぉ、回復したみてーだなぁ」

「スクアーロ…」

扉を開けるとそこにはスクアーロが立っていた。


+++


なまえの様子を見にアパートにやってきた。彼女はとりあえず元気になったらしく家の中にあげられる。

「熱は下がったのかぁ?」

「うん、おかげさまで。…あのさ」

言いかけて言葉を止めたなまえ。何だと促すと少しためらった後口を開いた。

「もしかして部屋、片付けてくれたのってスクアーロだったりする…?」

小さな声で言ったなまえ。
何だそのことか。あぁと肯定すればなまえはやっぱり…と俯いた。
何か悪かったかぁ…?

「…あたし片付け苦手なんだ。何ていうかすぐ散らかっちゃって…」

イタリアでは頑張ろうと思ってたのにとため息を吐いたなまえ。
…そんなこと気にしてんのか。…まぁ確かに驚いたが。

「せっかく山本が言わないでくれたのになー…」

「山本?」

何でそこであいつが出てくるんだ。

「あ、ほとんどの友達にはばれてないけど山本は知ってるからさ。でも聞いてないでしょ?」

「あぁ」

なまえの家に来たのは山本から連絡があったからだがそんなことは一言も言っていなかった。あいつも必死な感じだったしなぁ。

「まぁいいや。バレたもんはしょーがない!」

そう言って笑ったなまえはこんなあたしだけどこれからもよろしくお願いしますと頭を下げた。
よろしくって…意味分かんねえがとりあえずなまえが元気になってよかったと思った。




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