バレンタイン



「San Valentino…?」

なまえの家に向かう途中、ふと通りの看板に並ぶ文字に目がとまった。
何だか街が浮かれてると思ったら今日はバレンタインデーかぁ…。
イタリアでは普通男から女に贈るからオレにはあまり関係のない行事なんだが。
なまえは知ってるよなぁ…何か持ってくかぁ。

「バレンタインの贈り物でしたらやっぱりバラが一番人気ですよ」

なまえの家に行く途中にある花屋に寄ると店員が声をかけてくる。
いかがですか?と店員が勧めたのは赤いバラの花だった。

「いや…」

あいつはバラって感じじゃねーよなぁ…
なんつーか、棘刺さって怪我しそーだ。

「彼女さんにですか?」

「いや、違う」

「でしたらこちらのピンク色のものはいかがでしょう?」

棘が無いので安全ですよと店員が勧めてきたのは透明感のあるうすピンク色のバラ。

「あぁ、じゃあそれをもらう」

ありがとうございますと笑った店員から花を受け取ってなまえの家へと急いだ。


***


「う゛お゛ぉい…何だこれはぁ…」

ドアを開けると瞬間漂ってきた甘い香り。
部屋に入るとなまえはテーブルにうつ伏せてすやすやと眠っていた。
キッチンには使われた食器や鍋がそのままの状態で置いてある。
鍋の中には溶かしたチョコレートの余りが固まっていた。
あの甘い香りの原因はこれか…つーか作りっぱかよ。

「片付けろよ…」

「んぅ……」

机の上を見ると包装紙やリボンが散らばっていた。
なまえの手にはキレイにラッピングされた箱が見える。

「う゛お゛ぉい、なまえ起きろぉ」

「んー……スクアーロ?」

声をかけるとなまえは眠そうな目をこすって起きあがった。

「ふあぁ…おはよー…」

「おはよーじゃねぇよ。ちゃんと鍵締めろ」

「…あぁ」

なまえはスクアーロ来るからいいかと思ってと言ってくうっと腕を伸ばした。
いや、オレが来るにしても閉めとけよ。

「あ、これ、バレンタインの」

いつもお世話になってますと箱を差し出される。

「ありがとなぁ。これはオレからだぁ」

花を差し出すと予想してなかったのかなまえが目を丸くする。

「う、え?」

「ここはイタリアだぞぉ」

「あ、そっか。あたしも貰えるんだ…」

そう言うと理解したらしい彼女は照れくさそうに笑った。

「嬉しい、ありがとう」


それは幸せを送る日



「美味しい?」

「あぁ、ありがとなぁ」


――――――――――――

エヴリデイより
スクアーロとバレンタイン
2012.2.14









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