「………」

任務で敵対するマフィアのアジトにやってきた。こちらの話を聞かない彼らと最もシンプルな方法によって話をつけるという簡単な任務が終わり部屋を見て回る。すると、ある部屋に小さな女の子がいた。見た目からして5歳くらいだろうか。1人で窓の外を見ていた彼女が部屋に現れた僕を振り返る。特に怖がる様子もなく叫んだり泣いたりもしない。

「こんな所に子どもがいるなんて…このファミリーの子どもでしょうか」

「さあね」

後からやってきた草壁に返事をして少女に一歩近づく。彼女はなおも黙ったままこちらを見ている。

「あなたはここのファミリーの子どもですか?」

「…ふぁみりー?」

後ろから草壁がたずねると初めて口を開いた彼女はよく分からないというように首をかしげた。

「君、名前はなんていうんだい」

「なまえ」

「名字は?」

「しらない」

「知らない?両親はどこにいるの」

「りょうしん?」

雲雀の言葉にまたも首をかしげる彼女。草壁がお父さんとお母さんですよと補足する。

「おとうさんもおかあさんもしらない」

「じゃあ君はここで何をしてたんだい?」

「………」

そうたずねると彼女は困ったような顔をするばかりで何も言わなくなってしまった。どうしましょう?と草壁が問う。
どこの子か分からない以上親を探すことはできないし、このファミリーは雲雀の手によって壊滅してしまった。このままここにこんな小さい子どもをほっておくことはできない。

「君はどうしたいの」

「……なまえ、おなかすいた」

しばらく考えた末、そう言いながら小さな手がおさえたおなかからはくぅと音が聞こえる。
どうしたいかとは何がしたいかという意味ではなかったのだが。いかにも子どもらしい答えに自然と笑いがもれる。

「ふ、分かった。それなら来なよ」

「え、恭さん」

「連れて帰る。草壁、車回してくれる」

「しかし……はい、すぐに」

一瞬何かいいたそうにしたがすぐに準備に向かった草壁を確認しなまえの方に向きなおる。行くよと声をかければなまえはててっと走りよってきて隣に立つ。
その小さな女の子は僕の顔を見上げて初めて笑顔をみせた。


これが僕と君との出会い


「お名前は?」

「僕は雲雀恭弥」

「…きょうちゃん!」

「恭ちゃ……まぁいいか」



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