「くさかべ、いってきます!」

「行ってらっしゃい、なまえさん」

「何かあったら携帯に連絡して」

「はい、分かりました。お気をつけて」

なまえが哲に手を振りアジトの外へと歩き出す。
なまえはこの間山本武と外に出かけたのがとても楽しかったらしく、帰ったらすぐに「恭ちゃんともお出かけしたい!」と言われた。それから何日かして珍しく1日休みをとれたのでこうしてなまえと一緒に並盛に行くことになったというわけだ。

「みどりたなびくなみもりの〜」

歌いながら隣を歩くなまえは上機嫌だ。歌に合わせて繋いだ手がゆらゆらと揺れる。並中の校歌はヒバードが歌っているのを聞いて覚えたらしい。気に入ったのかこの間からずっと口ずさんでいる。草壁に聞いたところ僕がいない時もヒバードと一緒によく歌っているそうだ。

「なまえ、ちゃんと前見ないと転けるよ」

「はぁい!」

わくわくした様子で歩くなまえは本当に嬉しそうだ。それほどまでに楽しみにしていてくれたことに、こっちまで嬉しいだなんて柄にもないことを思う。

「着いたよ」

「わぁ!」

しばらく歩くとなまえが行きたいと言っていた公園に着いた。寿司を食べに行く途中色々寄り道して遊んだらしい。着いたとたんにぱっと走っていったなまえの後を歩いてついていく。

「たけちゃんがぶらんこでびゅーんってね、恭ちゃんとやりたかったの!」

なまえが真っ直ぐ向かっていったのはブランコだった。赤いブランコにちょこんと座って一生懸命こごうとしている。まだ上手くこげないらしい。
後ろから押してやるときゃーとはしゃぎながら楽しそうに笑うなまえ。

「なまえぶらんこすき」

「そう、よかったね」

「恭ちゃんもやろう?」

それは隣にあいているブランコに乗れと言っているんだろうか。ブランコに乗るなんて何年ぶりだろう。そう思いながらも乗ってみる。風が心地いい。隣で同じようにブランコに乗るなまえは僕を見て満足げな表情を浮かべている。
こんな小さな子どもと公園で遊ぶなんて自分らしくもないと思うけど、なまえの表情を見ているとたまにはこういうのも悪くないという気がしてくるから不思議だ。

そうして公園でブランコに乗ったり、すべり台をすべったり、砂場で遊んだり、のんびりと過ごしていると不意に携帯の着信音が鳴った。

「もしもし」

電話は部下からのものだった。

「なに。そっちで何とかならないの………うん、分かった。じゃあね」

トラブルがあったらしく行かなければならなくなってしまった。だけど、

「恭ちゃん?お電話?」

不思議そうに見上げるなまえを連れて行くわけにはいかない。…まだ明るいしそれほど時間もかからないからきっと大丈夫だろう。


いっしょにお出かけ


「…なまえ、僕が帰ってくるまでここでじっとしといてくれる?」

「うん、わかった」

「すぐに戻ってくるから」


back
第4回BLove小説・漫画コンテスト応募作品募集中!
テーマ「推しとの恋」
- ナノ -