6.笑顔の理由
「準備いいびょん?」
「うん。クロームは?」
「…大丈夫」
「来たびょん!」
骸様を迎えに行ったなまえが戻ってくるのを物陰に隠れて待つ。
今日はなまえの…
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最初は自分でもよく分からなかったんら。
「犬!いらっしゃい!」
「おう」
なまえと出会ってから数週間。あの日何故か毎日行くと宣言してしまってからオレは本当にほぼ毎日なまえの駄菓子屋に通っていた。
「暑かったでしょ?上がって上がって!お茶入れるからさ」
笑顔で言ったなまえ。店の奥に上がり座る。しばらくするとなまえがお茶とお菓子を持ってきた。冷たい麦茶をごくごくと喉に流し込む。
「…なんら?」
ふと気がつくとなまえがにこにこと笑ながらオレの方を見ていた。
「いやぁ、嬉しいなぁと思って」
「んあ?何がらよ」
「犬が来てくれるの。うち駄菓子屋だからさ、ずっとお客さんがいるわけじゃないし。1人じゃやっぱヒマだからね」
「1人って…ばあちゃんの店なんらよな」
前に自分は駄菓子屋の孫だって言っていたのを思い出して問いかける。
「うん。犬には言ってなかったっけ?うちのおばあちゃん旅行好きでね。平日は夜には帰ってくるけど土日は泊まりで旅行行くの。だから休みの日は1人なんだ」
うちのおばあちゃんパワフルでしょーと笑うなまえ。
「へー、両親は?」
何気なく聞いたことだったがしまったと思った時には遅かった。ぴた、と一瞬空気が止まる。
「…うち、おばあちゃんと2人暮らしだから」
「あ…悪かったびょん…」
なまえはそれしか言わなかった。ガラじゃないと思いながらも気づけば謝っていた。
「謝ることじゃないよ!学校の友達も誘ってみたりするんだけどさ、みんなもう駄菓子屋なんか来ないしね」
みんな遊びたいと思うしいいんだけど!と言ったなまえ。
「あ、ごめん、こんな話したら気にしちゃうよね。犬も無理して毎日来なくていいんだよ?」
そう言ったなまえの顔は少し切なそうな笑顔で。
「別に無理なんかしてねーびょん!オレが来たいから来てるだけらっつの!だからそんな顔するんじゃねーびょん!」
思わず声が大きくなる。だって本当に気をつかうとかじゃなくて。無理して来てる、なんて思ったことはないしなまえにもそう思ってほしくなかったからそう言った。
「…ありがとうっ!」
少し驚いた顔をしたあとぱあっと笑顔になって言ったなまえ。
心の中があったかくなった。
その時分かった気がした。
オレが毎日ここに来る理由。一緒にいてなまえが笑ってくれるならなんて思う理由が…
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「わぁ…!すごい!どーしたのこれ!」
「花畑ですー」
「クフフフフ…いい術ですね」
扉を開けて入ってきたなまえと骸さんとフラン。黒曜センターの一室は今一面色とりどりの花で埋め尽くされている。それは骸さんのいう通りクロームの術で。
「髑髏ちゃんがやったの?すごい!ありがとー!」
なまえがキラキラと目を輝かせてクロームを見る。
「…考えたのは犬」
「クローム!言うなっつったらろ!」
クロームの言葉になまえがくるりとこちらを振り返る。そしてとても嬉しそうに笑って言った。
「犬…ありがとうっ!」
オレはその笑顔がすきなんら
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