4.居場所


「ただいま」

「クローム、骸様は?」

「…少し寄るところがあるから先に帰っててって」

買い物から一人で戻ると千種に尋ねられた。

「きっとナッポーでも買ってるんらびょん」

「犬…言いつけるよ」

「嘘に決まってんらろ柿ピー。言うなよ!」

「それならミーから言っときますー」

「やめるびょん!」

言い合っている犬と千種とヴァリアーの霧の人…。

「はい、もめないもめない。髑髏ちゃんおかえり!」

「なまえ…ただいま」

電話をしていたらしく少しして後ろからやってきてにこっと笑ったのはみょうじなまえ。

なまえと出会った日のことは今でもよく覚えてる。
あの日は急に雨が降ってきて…



********************



「ねえ!そこの黒曜生!」

「……?」

黒曜センターへの帰り道。
急に降り出した雨の中を走っていると女の子の声がして立ち止まる。

「雨宿り、してっていーよ!」

声の方を見ると駄菓子屋の前で私と同い年くらいの女の子が大きな声で叫んでいた。戸惑っていると早く早く、風邪ひくよと手招きされる。


「いやー急に降ってきたね。ビニール被せてたら黒曜の女の子が走ってきたからびっくりしたよ」

お店の屋根の下に入ると彼女はタオルを渡してくれた。

「…あなたは?」

「あたしはみょうじなまえ。黒曜中だよ。同じ学年だね。名前なんていうの?」

学年章を見たんだろう。彼女はそう言ってにこっと笑った。

「…クローム髑髏」

「…髑髏ちゃん。タオルでふくくらいじゃだめだね。良かったらお風呂入ってく?服貸すし。うん、それがいいよ!用意してくるからちょっと待っててね」

「え…」

断る間もなく彼女は奥へ行ってしまった。どうしよう。と思っていると中から髑髏ちゃん、できたよー上がってきて!と声がかかった。

そのままなりゆきでお風呂と服を借りてあがると居間にさっきの女の子…なまえがいた。

「あ、あがった?お茶入れたからどーぞ」

にこっと笑った彼女。

「………」

「ん?どーしたの?」

「…どうして」

会ったばっかりで何も知らないのにどうしてそんなにしてくれるのか理解できないで問いかける。

「…かわいい女の子が雨に濡れてんのほっとけないじゃん?この雨じゃちびっ子たちも来ないだろうからちょうどヒマだったしね」

あ、ヒマつぶしとかじゃないよ?と言ってにひっと笑ったなまえ。まあ座って座ってと言われるままに座ってお茶をもらった。

「髑髏ちゃん同じ学年なのに初めて会ったね。何組?」

「8組…」

「8!あたし1だからいちばん遠いな。どおりで会わないわけだ」

なるほどねーと納得している彼女。

「…あなたはこのお店の…?」

「うん、おばあちゃんのお店なんだけどあたしここに来てからおばあちゃん余生を楽しむとかってよく出かけてるの。だから学校終わったらいつも店番してるんだ」

若いでしょ?夏休みなんて海外まで行っちゃうんだよーと笑ったなまえ。
その後もお茶とお菓子を食べながら色々話した。なまえは何だか明るくて気をつかわないというか…ボンゴレの京子ちゃんやハルちゃん、イーピンちゃんともまた違って。とても話しやすい子だと思った。

大分時間がたった頃、携帯の着信音が鳴った。

「電話?あ…もうこんな時間か。ごめん家の人心配してるよね」

「…メール…そろそろ帰る」

メールは千種からだった。今から帰ると返信して荷物をまとめる。

「本当に送ってかなくて大丈夫?」

「大丈夫」

心配そうななまえに頷くと、そっか気をつけてねと彼女は笑った。

「……」

「ん?どうしたの?」

「服…洗って返すから…また来てもいい…?」

そう言って顔をあげると嬉しそうに笑うなまえと目が合った。

「もちろん!いつでも来てね!」

「…ありがとう」

これが彼女との出会い。



********************



「なまえ電話何だったの?」

「M・Mちゃんから。荷物送ったから届くと思うって」

「M・Mと連絡とってるんだ…」

「メル友だよメル友。髑髏ちゃんと3人で遊んだこともあるよね」

「…その3人で何話すんですかー」

「駄菓子についてとかイタリア語についてとかーあとはM・Mちゃんが六道さんについて語ったり?」

「へー…」

想像できないという顔の3人。私もなまえがいなかったらそんなことなかったと思う。

「あ、そういえば六道さんいなくない?髑髏ちゃん一緒に買い物行ったよね」

「今気づいたびょん!?」

「…骸様は寄るところあるって…もうすぐ帰ってくると思う」

「そっか。じゃあみんなこんなとこ突っ立ってないで座って待っとこ。髑髏ちゃん買い物ありがと。お茶入れるから行こ?」

そう言って笑ったなまえ。
骸様や犬や千種がいてなまえが私に笑いかけてくれる。それがとても幸せで。



この居場所をずっと守りたいと思うの。







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