「あ、阿部ちゃんだ、おはよー」

「おう、みょうじ…ってお前なんでそんな濡れてんだ?」

昨日からの雨のせいで今日の朝練は休み。
朝、下駄箱で声をかけられ振り返ると雨に濡れたらしいみょうじがいた。
傘はどうした。

「もうちょっとのとこで傘壊れちゃった。風がびゅっとね」

みょうじはまぁ夏だからすぐ乾くさーと脳天気に笑っている。

「バーカ、風邪ひくだろ。これ使え」

「わわっ」

カバンからタオルを取り出し被せてやる。
ありがとうと言って髪を拭くみょうじ。その動きがふと止まった。

「どーしたんだ?」

「…阿部ちゃんのにおいがする」

「はぁ?」

何だよオレのにおいって。今日は朝練なかったしまだ使ってねーぞ。だいたい使ってたら貸さないだろう。

「あ、別に汗臭いとかじゃないよ!」

「ったりめーだろ使ってねんだから。何なんだよにおいって」

「んー洗剤かな?阿部ちゃん家のにおい」

「………」

こいつは三橋に比べればかなり話は通じる。
少し抜けてるとこもあるがしっかりしている方だとも思う。
それでも時々言ってる意味がわからない時がある。
まあ主に三橋や田島と話している時だが。

「あ、何その顔」

嘘じゃないよ!と言っている今がまさにその時だ。
嘘もなにもお前オレの家なんか来たことないだろ。

「…あ!みはちゃん!おはよ!」

みょうじの声に振り返れば三橋がいた。
気づいた三橋がやってくる。

「みょうじ さん、阿部くん、おはよう」

「おっす」

「みはちゃん!このタオル阿部ちゃんのにおいするよね?」

みょうじが三橋にオレのタオルを差し出す。
勝手に何してんだ。

「…ほんとだ」

最初ハテナマークを浮かべ戸惑っていた三橋がしばらくして呟いた。

「阿部くんのにおい だ!」

「ね!」

「おいお前らやめろ」

オレのタオルを一緒に嗅いで笑いあう2人。
頼むから変態みたいなことしないでくれ。こんな全校生徒が集まる場所で…野球部に変な噂が立ったらどうすんだ。

「おー、こんなとこで揃って何してんの?」

「あ、花井ちゃんおはよー」

「花井くんっ、おはよう!」

そうこうしていると花井がやってきた。

「おーおはよ、みょうじに三橋、阿部も。何そのタオル?」

オレのタオルを持つみょうじと三橋を見て花井が不思議そうに尋ねる。

「あのね、今…」

「もういいから早く教室行けっ!」

思わず声を荒げるとびくっとなる三橋。
みょうじは特に何も変わらない。

「ご…ごめっ…」

「もー阿部ちゃん声おっきいよー…あ、いずみんだ!みはちゃん行こ!」

「え、う、うんっ」

「阿部ちゃんタオルありがとう。洗って返すね!花井ちゃんもまたね」

「おーまたな……」

降り続ける雨と反対に爽やかに笑ったみょうじは三橋を連れて泉のもとへ走っていった。


雨の朝下駄箱にて


「朝から疲れた…」
「…何があったんだ?」
「いやちょっとな…っつーかあいつら廊下走んなよ!怪我したらどーすんだ!」
「とりあえず落ち着け阿部」



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