「あ」

部活が終わった後、いつもと同じように家まで自転車をこぐためのエネルギーを補給するため帰り道にみんなでコンビニに寄る。今日は篠岡とみょうじも一緒だ。各々がコンビニの中を見て回る中、冒頭の声を発したのはみょうじだった。

「ん?みょうじ?何見て……」

ちょうどオレの後ろにいた彼女の視線の先を追うとそこには花火コーナーがあった。季節外れのそれがこじんまりと置かれている棚には赤い文字でSaleと書かれた札が貼られている。

「見て、花井ちゃん。これだけ入ってこの値段って安くない?」

「あーそうだな。もう花火の季節も終わってるしな」

花火がたくさん入ったセットを手にしてそう言うみょうじに相槌をうつ。

「これ、野球部のみんなでやったら楽しいと思わない?ハマちゃんとさ、援団のみんなも誘ってやろうよ!」

「え、あー……」

花火を手にオレの方を見上げてきらきらと目を輝かせるみょうじ。
そりゃ楽しいかもしれないけど実際できんのか?と考える。ここでオレが話にのって出来なかったらがっかりするよな。場所の問題もあるし練習だってあるし…

「買っとけば」

そう悩んでいると不意に後ろから泉の声が聞こえた。

「泉?」

「オレはつきあってやるよ。あいつらも誘えば来んだろ。浜田は強制参加な」

その言葉を聞いたみょうじの顔がぱあっと輝いてみるみるうちに満面の笑みに変わる。

「ありがとう、いずみん。じゃあ買ってくるね!」

そう言ってそのままレジへと向かったみょうじにおーと相槌をうつ泉。

「ちょ、泉」

「なんだよ」

できるかも分からないのになに勝手なこと言ってんだよと言えば泉が面倒くさそうにため息をつく。

「別に野球部全員じゃなくてもできりゃいいだろ?来年やったっていいんだし」

実際出来なかったとして、みょうじはそんなことじゃ落ち込まねえよ、という泉。確かにそうかもしれないけど…

「え、なに?みょうじ花火買うの?」

「うん!いずみんと、みんなも一緒にできたらいいなぁって」

「いいじゃん!ネズミ花火も買っとこうぜ」

「オレ ヘビ花火やりたい…!」

レジの方を見るとみょうじの手にある花火に気づいた田島と三橋が楽しげに話をしている。
…なんかオレって心狭いのかな。いろいろと気になってしまうのは性分みたいなものだ。田島たちみたいに何も考えずに喜べたらどんな感じなんだろうか。そんなことを思ってると会計を済ませたみょうじが隣にやってきた。

「花井ちゃん、ありがとうね」

「……?なにが?」

お礼を言われる意味がまるで分からなくてそう尋ねると、彼女は小さく笑いながらううん、なんでもないと言った。…どういう意味だ?

「花井ちゃんも一緒に花火しようね」

「…おう」

にっこりと笑ったみょうじにつられて自分の顔にも笑みが浮かぶのが分かった。


季節外れの花火


「…それなら寒くなる前にやらないとな」
「…!うんっ!」


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