「水谷ー打てよー!」

「たまにはいいとこ見せろー!」

「みずたにんファイトー!」

「頑張って!」

「ん?」

体育の授業中。7、8組男子は合同で野球、クラス対抗の試合をしていた。水谷の番になり上から聞こえてきた声に顔を上げると窓から顔を出していたみょうじと目が合った。

「あ、花井ちゃーん!」

真上が9組の教室だったのか。泉に三橋、田島、浜田さんも窓からこちらを見ている。

「お前ら授業はー?」

今の時間帯はまだ授業中なはずで。訊ねると「自習なんだー」という答えが返ってきた。いくら自習だからって窓から叫んでたらダメだろ。相変わらずの自由な感じにため息をつく。

「意外に接戦なんだなー」

「あー、8組は元野球部多いからな」

泉の言うとおり試合は同点と接戦だった。7組にはオレと阿部、水谷と3人の現役野球部がいるが、経験者の数でいうと8組の方が多かった。野球はチームプレーだからな。

「花井、出番」

水谷は2塁打だったらしい。ここで点入れれば勝ちか。阿部に声をかけられ立ち上がる。

「花井ー!打てよー!」

「花井ちゃんファイトー!」

「花井くんっ、打てるよ!」

バッターボックスに入ると9組の教室から聞こえてくる声。んなプレッシャーかけんなよなっ…!

カキンッ

バットの芯に当たったボールは空に吸い込まれるように遠く飛んでいった。7組からおぉっと歓声が上がる。そして9組からも…

「せーのぉ!」

「ナイバッチー!」

頭上から聞こえる大きな声に7、8組の視線が集まった。


教室の窓から


「ナイバッチ花井!」
「よ、さすが野球部主将!」
「花井ちゃんステキー!」
「(あいつら…恥ずかしいっつの!)」



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