「お疲れ様です」

午前中の仕事を終え休憩に戻る。
今日の午後一番はリボーン様のお部屋にお茶を運ぶことになっていた。

「ふふ」

これも仕事の一つなのだけれどリボーン様と過ごす時間はとても居心地がよくて仕事だと思えない程楽しみにしている自分がいる。

「なまえ、何か上の人が呼んでたよ」

休憩室に入ると同僚に声をかけられた。

「上の人って?」

「んー、人事部の人だったかな?いないって言ったら後で電話してって。内線2230」

人事部…が私に用って…

「なまえー?聞いてる?」

「あ、うん、ごめんね。わかった。」

友人にありがとうと言って内線のボタンを押した。





「失礼いたします」

時間になりお部屋へ行っていつも通りコーヒーをいれる。さっきの人事部からの電話はやっぱり異動の話だった。業務の異動ではなくここボンゴレイタリア本部からの異動。どうして今?と思うけれど上の決定には従うしかない。

「元気ねーな」

「え?」

しばらくするとそう声をかけられた。リボーン様と目が合う。

「何があった?」

「何もありませんよ?」

何かあったかじゃなくて何があったと聞くところがさすがリボーン様というところか。なるべく普段通りに答える。異動のことはリボーン様とは関係ないことだ。それにここを離れたくない理由はただの私の我が儘だから。迷惑はかけられない。

「……たまには一緒に飲むか」

「え?」

しばらく考えるようにしたリボーン様はそう言って立ち上がりお部屋にある棚からカップを出してきた。

「座っとけ」

「でも…」

止めようとするといいからそこ座っとけと言われ戸惑いながらも言われた通りソファーに座る。勤務中なのにいいのかな…

程なくして目の前のテーブルに湯気を立てるカップが置かれた。中身は濃いめに入れられたココアだった。美味しそうな甘い香りが漂う。

「…いただきます」

カップを手にとり口をつける。

「美味しい…」

素直な感想と共にほうと息が漏れる。甘くて暖かいココアはとても安心する感じがした。

「…何ですか?」

顔をあげるとリボーン様と目が合う。うまいか?と尋ねられとてもと頷くとニヤリと笑った彼。

「オレがなまえのためにいれたからな」

「…からかわないで下さい」

赤くなってるだろう私の顔を見てくくっと笑うリボーン様は私がどんな気持ちなのか知らないんだろう。

その後はいつものように色々なことを話した。リボーン様はいつもたくさん話してくださるけれどこうやって一緒に座ってお話をするのは初めてだ。

「…元気出たか」

「え?」

リボーン様が何か呟く。何だろう、よく聞こえなかった。

「なまえ」

「はい」

「何かあったらオレに言えよ」

真剣な表情になって、でも優しい笑顔で言ったリボーン様。あぁ、心配してくださっていたのか。

「…はい、でも本当に大丈夫です。少し疲れていただけですから。お気遣いありがとうございます」

そう言って笑う。
この時の私にはこれが精一杯の作り笑いだった。


 


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