6.天使の笑顔




次の日。
了平さんについてやってきたのはカフェが一緒になってるおしゃれなケーキ屋さん。お店の中に入り窓際のテーブルに向かう。

「お兄ちゃん!」

すると聞こえてきたかわいらしい女性の声。見るとこっちに向かって手を振っていた。

「おう、京子!すまんな、待ったか?」

「ううん、ハルちゃんとお茶してたから大丈夫だよ」

そう言ってにこっと笑った…この人が10年後の京子ちゃん!かわいい!

「そうか、三浦も来たのだな!こいつがこの前話したみょうじなまえだ」

なんとなく了平さんの影に隠れていると了平さんにずいっと前に出された。
ちょっ、まだ心の準備が!

「はじめまして。なまえちゃんのことはお兄ちゃんとツナくんから聞いてるよ。私、笹川京子。よろしくね」

「はじめましてなまえちゃん!三浦ハルです!よろしくお願いします!」

「よ、よろしくお願いします!」

10年後京子ちゃんとハル!なにこのかわいさ!天使の笑顔や!

「なまえちゃんの分もケーキ頼もうか。何がいいかな?」

「やっぱりミルフィーユじゃないですか?ここのすごく美味しいんです!」

「は、はい!お願いします!」

何でもいいですっていうかむしろかわいい2人に会えただけでお腹いっぱいです。いや決して変態とかそういうのではなく。
緊張する。なんかさっきから上手く喋れてへんし。ちょっと落ち着こう。

「お兄ちゃんは何か食べる?」

「いや、オレはコーヒーだけでよい」

「ふふ、分かった」

あたしの前に並んで座る2人の空気を見てやっぱ兄弟やなーと和んでいる間に京子ちゃんとハルが注文をすませてくれた。お店の人とも仲よさそうやし常連さんなんかな。

「なまえちゃんは学生さんなんですよね!何歳なんですか?」

注文したケーキとコーヒーが運ばれてきてハルに尋ねられる。18ですと答えるとひゃー若いです!と言われた。
いやいや若いって。ハルは10年後もやっぱ天然なんかな。

「えーっと、京子ちゃ…さんとハルさんはツナと同い年やから23ですか?」

「うん。なまえちゃんは中学生のころの私たちのこと知ってるんだよね。呼び方、京子ちゃんでいいよ」

「ハルのこともハルいいですよ!」

そう言って2人が笑う。

「え、でも…」

京子ちゃんもハルもめっちゃ大人やし年下のあたしがちゃんづけとか呼び捨てとかってどうなんや。まぁツナたちには呼び捨てやしタメ口やけど。

「ふふ、気にしないでいいよ。なまえちゃんの呼びやすい呼び方で、話しやすい口調で喋ってくれた方が仲良くなれると思うな」

「そうですよ!ハルたちは気にしませんから!」

にこにこ笑って言った2人。
…なんて優しいんや!

「ありがとう、京子ちゃん、ハル!」

とあたしも2人に笑いかける。

「沢田たちには極限に呼び捨てタメ口だしな!」

ハハハと笑った了平さん…いや、まぁそうやねんけどバラさんでもよくないっすか…


その後は美味しいケーキを食べながら2人の中学時代のことからツナたちのこと、おすすめのケーキのことまで色々なことをいっぱい喋った。

「なまえちゃん今日はお兄ちゃんと夜ごはん作るんだよね。もう何にするか決めた?」

「あ、なんも考えてへんかった…了平さん考えてます?」

「いや、全くだ!」

「…ですよねー」

そうやとは思ったけど。あたしも京子ちゃんに言われるまで忘れてたし。
どうするかな…と思っているとハルがぽんっと手を叩いた。

「じゃあカレーはどうですか?ハルの家も今日はカレーなんですよ!」

「カレー?」

「わぁいいね!簡単だし美味しいし!私たちも昔ツナくんたちにつくったよね」

「はい!」

あれも楽しかったよね、と笑い合っている2人。昔…?あ、未来編の…ミルフィオーレの時か…

「よし、では今日はカレーで決まりだな!」

「ですね!」

野菜を切るだけという昨日の二の舞にならんよーに頑張ろ。
了平さんとやったらならんと思うけど。

「ぬ、もうこんな時間なのだな。なまえ、そろそろ帰るか」

了平さんが腕時計を見て言う。気づいたら外は日が暮れかかっていた。
楽しい時間はあっという間やな…

「そうだね。今日は楽しかったよ!ありがとうなまえちゃん!」

「ハルも楽しかったです!」

「いやいや、あたしこそ楽しかったです!ありがとう!」

「京子と三浦も帰るのなら送って行くぞ」

ああ、そっか。夜道は危険やもんな。了平さんてこういうところがさすがお兄ちゃんって感じ。

「大丈夫だよ。2人で帰るから」

「今日はお泊まり会するんですよね!」

「お泊まり会?」

ふふっと楽しそうに笑いあう2人。
いいなー…楽しそう。

「今度なまえちゃんもしましょう!」

「え、いいん!?」

「もちろんだよ。クロームちゃんや花も呼んでまたみんなでやろうね」

「うん!」

そんなこんなでまた会う約束をして2人は帰って行った。
優しい京子ちゃんとハルに癒された素晴らしい時間だった。



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「はぁー京子ちゃんもハルも可愛かったな〜!」

「極限に楽しそうだったななまえ!」

「そりゃあもう!」

楽しすぎたよ!
京子ちゃんとハルに会えたし、美味しいケーキ食べれたし、2人のケータイ番号までゲットしちゃったからな!

「京子もなまえに会えて楽しそうだったぞ!」

「本間?嬉しいな。ていうか了平さんって妹思いやんな」

「ぬ?そうか?まぁたった一人の妹だからな!」

「へへ、了平さんみたいなお兄ちゃんがいて京子ちゃんは幸せやな」

仲のいいふたりを見てたら微笑ましくてちょっぴり羨ましかった。

「なまえは兄弟は…いや、すまん」

言いかけて口をつぐんだ了平さん。

「はは、そこまで言っといてやめんとってや。なまえは兄弟はいるのか、やろ?
いるで。弟2人と妹」

「4人兄弟か、なまえは長女なのだな」

「うん。兄弟多いからうちは賑やかやで。みんな友達連れてきたりするし」

うちは両親が賑やかなのが好きだったからみんなよく友達を連れてきてた。
あたしもさいちゃんよく呼んだっけ。みんな元気かな。
そういえばむこうではあたしどうなってんねやろ。爆発やったしトリップにありがちな意識不明とか…いや、帰ったら時間経ってませんでしたーってのもあるかも。
…それはそれで寂しいな。考えんのやめよ。

「でも自分より上おらんからお兄ちゃんとかお姉ちゃんとか憧れるな」

「そんなものか?」

了平さんが不思議そうに聞く。

「そんなもんやで。よく上の子は下が欲しくて下の子はその逆っていうやん?」

まぁないものねだり、ってやつやねんけど。

「オレはそんなこと思ったことないがなぁ」

「そりゃあんだけ可愛い妹がおったらな」

「ハハハ、でもここではなまえも兄がいるようなものではないか」

そう言って了平さんが笑う。

「兄…ってツナたちのこと?うーん…どうかな…」

ツナたちはまあ年上やけど…マンガの、中学生のイメージが強いからなぁ…

「まああいつらはなまえを妹とは思っていないだろうがな!」

「え、何それどういう意味」

「なまえは妹以上に極限という意味だ!」

「意味分からんねんけど…」

了平さんがハハハと爽やかに笑ったからまぁ悪い意味ではないんやろうけど。

「お、なまえ、果物屋があるぞ!カレーの材料買って帰ろう!」

「果物屋さんで!?行くなら八百屋さんやろ!ちょっ、待って!」



前に見えた果物屋に向かって歩きだした了平さんを追いかけた。








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