13.手巻き寿司はみんなで
「んじゃ始めっか!」
「は!山本隊長!」
山本とキッチンにて夕飯作り。ビシッと敬礼しながら言うとははは何だ隊長ってーと笑われた。
つっこんでくれたと見なしていいんかな。
「で、あたしは何したらいい?」
目の前に並ぶ新鮮な魚達。
まあこれを捌けとか言われても無理やけど。
「そーだな、卵とかきゅうりとか切っといてくれっか?サラダ巻きもするだろ?」
「りょーかい!」
サラダ巻き大好きだよ、ツナマヨも作ろうと言って卵を焼いて冷ましている間にきゅうりの皮を剥いて切る。山本は鼻歌歌いながら魚を捌いていた。すげーな
「痛っ…」
「ん?」
何ていうかものすごい山本を見てたら包丁の先でちょっと指を切ってしまった。
あーあ、血…
「大丈夫か!?」
「うん、ちょっと切っちゃっただけ」
山本が駆け寄ってくる。
何でそんな冷静なんだってよくあることだからだ。とりあえず洗って部屋に絆創膏あったから取りに行くかとか思ってると山本が見せてみろとあたしの手をとる。
そしてあろうことかそのまま自分の口元に持って行った。
「…えええぇー!!??何してんのー!?」
驚いてばっと手を引けばきょとんとしている山本。
「ん?怪我はなめると治るって聞いたのな」
「いやいや!どこで聞いてん!それ迷信!吸血鬼とかの話やん!山本人間やろ!?」
誰やそんな間違った知識山本に吹き込んだのは!と思ってると山本の口からとんでもない言葉が飛び出した。
「なまえの血なら吸いたいのなー」
「はあぁー!?」
笑ってそう言いながらあたしの方に近づいてきた山本。
え、何!?近い近い近い!山本の顔が!首筋に!息かかってんねんけど!
肩に手を置かれ首筋に顔を埋められる。…動けへん!
「なまえ…オレが吸血鬼だったらどうする?」
そう耳元に低い声で囁かれ首に山本の唇が触れた。
ん…?…唇が触れた…?
「ちょっ!山本!?」
山本が吸血鬼とかありえへんやんな!?そんな設定聞いたことないから!嘘やろ本間に血吸う気…!?
「なーんてな!」
「…は?」
一人焦っていると上からふってきたいつもの明るい声。
「ハハハッ、冗談なのな!びっくりしたか?」
「〜〜っ!びっくりしたに決まってるやろ!本間に血吸われるか思ったやん!」
「ハハッ、わりーわりー!」
そう言って笑ながら山本はどこから取り出したのやら絆創膏を貼ってくれた。その爽やかな笑顔、絶対悪い思ってへんやん!てゆーか絆創膏持ってたんなら最初から貼って!
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そんなことがあった後夕飯の手巻き寿司の準備を全て済ませ広間へ運ぶ。
今日は全員揃っているみたいだ。いただきますをして各自手巻き寿司を作るみんな。
「こうやってみんなが毎日揃うのなまえが来てからなんだぜ」という山本の言葉を思い出し顔がにやける。
「ふへへ…」
「ちょっと何笑ってるの咬み殺すよ」
「不気味だぞ」
雲雀さんとリボーンに睨まれる。そんな巻き巻きしながら睨まれたって怖くないもんね!と思ったら2人にはたかれた。
雲雀さん読心術使えへんはずやのに!
ふ、と顔を上げると山本が目に入った。みんなのことを見る山本の表情は優しくて、嬉しそうで。
あたしの視線に気づいた山本と目が合う。そしてにこっと笑った山本。
「なまえ、今日はありがとな!」
「…こちらこそ!」
にぎやかな夕飯時2人で笑い合う。何かいいなあって思ってたら山本が爽やかな笑顔で何かいいな、こーゆーの!って言ったからすごく嬉しくなって。
今日はいい1日やったと思いながらみんなと一緒に手巻き寿司を頬張った。
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「気持ちいーっ!!」
「バカ!暴れんな!振り落とされてーのか!」
只今獄寺のバイクの後ろ。
ご存知の通り今日は獄寺デ―なのです。朝出会った時に今日は1日つき合ってやるよと言った獄寺にあたしはバイクの後ろに乗せて欲しいと頼んだ。理由は漫画の未来編で獄寺がバイク乗ってんのがめっちゃかっこよかったから。
じゃあいいとこ連れてってやるよと本間に乗せてくれた獄寺。テンション上がって叫んだら怒られた。
「ごめんごめん!にしても風が気持ちいいな!あたしバイクの後ろ乗ったん初めてやわ!」
「ふん、そりゃ良かったな」
この位置、顔は見えないけど多分獄寺は笑ってると思う。
獄寺バイク好きそーやし機嫌いいんやろなきっと。
「うん!ありがとう!あのさ、このバイク何て名前?」
「名前?車種のことか?」
「ちゃうよ。沢田綱吉とか獄寺隼人とかそーゆー名前」
てゆーか車種とか聞いても分からんし。
「ねーよそんなの!」
「え、ないん?」
「普通バイクに名前なんてつけねーよ!」
「いやあ獄寺はつけてるかなと思って。愛ゆえに」
「意味わかんねーよ。何だ愛って」
だってどっかの主人公のバイクにも名前あったやん。だから獄寺もつけてるかなって。
てかあたしもチャリに名前つけてるしな。クラスの芸人目指してる男子もつけとったしな。
「よし、そんならあたしがつけたるわ」
「何でそうなる」
「そーやなぁ……決めた!獄寺ファイター8810!!」
「んだよそれ!」
「かっこええ名前やろ?8810にはちゃんと意味もあるねんで!知りたい?」
「別に」
「しゃあないなぁ教えたろ。8810はただの数字やない。はちはちいちぜろではやとって読めるねん!すごいやろ!?」
「すごくねーよ!つか人の話聞けよ!」
つっこみに怒鳴りっぱなしの獄寺。せっかくいい名前やと思ったのに…分からんかなぁこのセンスが。
そんなことを思いながら横を見るとキラリと光が目に入った。
「はいはい…ってあ!見て!横、海見えるで!」
「見れねーよ、運転中だ」
「ああそっか。あ、釣りしてるおっちゃん発見!おーい!!」
「だから暴れんなって!つーか知らねーおっさんに手振ってんじゃねーよ!」
1人ぽつんと釣りをしているおっちゃんが見えたので手を降ったらまた怒られた。
「いやあれはおっさんっつーよりおっちゃんやろ」
「同じだろ」
「違うから!」
「知らねーよ!耳元で叫ぶなバカ!」
おっさんとおっちゃんの違いについて語ろうかと思ったけどマジで振り落とすぞと怒られた(本日3回目)ので少し大人しくすることにした。
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「着いたぞ」
「わー…!」
海!久しぶりや!入るにはまだちょっと寒いけど青い空に青い海!
「めっちゃ綺麗なとこやな!」
「だろ?この時期は人も少ねーしな」
獄寺の言う通り見える範囲に人は見当たらない。
「はーっ、早く夏ならんかなーみんなで遊びに来たら絶対楽しいよな!」
「………」
「あれ?どーしたん」
返事がない獄寺を不思議に思い振り返る。
「…みんなってボンゴレのことか」
「?当たり前やん、他に知り合いおらんのに。あ、でも京子ちゃんとかハルも呼びたいな!」
ボンゴレーズと京子ちゃんたちとみんなで夏の海とか絶対楽しい!
「…ああ」
「さ!海来たからにはやっぱ裸足やんな!ほら獄寺も靴脱いで!向こう行って棒倒ししよー!」
「……夏になったら、か」
浜辺に向かって走ったあたしに獄寺のその言葉は聞こえなかった。
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