12.爽やか並盛散策




「なまえ!」

「あ、山本」

寝る準備を終え飲み物を取りにキッチンに行った帰り、廊下で山本に出会った。おー、ジャージや。パジャマかな?

「もう寝るのか?」

「うん。山本も?」

「オレももうちょっとしたら寝るぜ。部屋戻るんだろ?送ってくのな!」

「へ?送るって屋敷内やねんけど。いいよ、さすがに覚えたし」

広いボンゴレアジト。確かに1日目とかは迷ったけどさ。今更送るっておかしくないか、と思い首をかしげる。

「…オレがもうちょっとなまえと喋りたいのな」

そう言ってにこっと笑った山本に送ってもらうことになり部屋に向かって歩き出す。

「…山本ってさーすごいよな」

隣でにこにこ笑う山本を見上げながらしみじみと思う。さっきのとかさ何でそんな爽やかにキュン死にセリフが言えるんやろう。そりゃモテるわ。

「ハハッ、ありがとな!なまえもすごいぜ?」

「はははどうも」

あたしの言うすごいの意味は伝わってないやろうなと思いながらも笑っておく。

「明日なんだけどさ、どっか行きたいとことかあるか?」

「明日?」

ちょうど部屋の前に着いたところで山本が言った。

「夕飯当番、オレとなまえだろ?オレ明日1日仕事ねーからさ。なまえの行きたいとこ連れてってやるのな!」

「え!いいん!?」

「おう!明日までに考えといてくれな!」

「うん!」

じゃあおやすみなーと帰って行く山本を見送ってドアを閉めた。


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「よ!なまえ、行きたいとこ決まったか?」

「山本!おはよう!」

朝廊下で山本に声をかけられる。
考えてきましたよ。楽しみで昨夜は寝れませんでしたよ…っていうのは嘘やけど。とか思ってると山本が「ん?」と爽やかな笑顔で聞いてきた。

「…並盛り散策に行きたいです!」


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というわけで始まりました並盛り散策!案内役は山本武さんでお送りします!

「はは、誰に喋ってんだ?」

「いや、ちょっとレポーター風に」

「ハハハ、ほんとなまえ面白いのなー」

「それ程でもー」

そんな訳で並盛りにやってきました。雲雀さんの時は車やったけど今日は散策やからというあたしの希望で歩き。にこにこ笑う私服の山本と並んで歩く。分かってたことやけど山本はつっこみせんなー…

「なまえはどっか行きたいとこあるか?並中はヒバリと行ったんだよな」

「うん、並中は今日はいいや。あたしバッティングセンター行きたい!」

「バッティングセンター?」

予想外だったのか山本はきょとんとしていたが山本が野球してるとこ見たいしと言えばおう、じゃあ行くか!と笑った。


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並盛りボール

「ここが並盛りボール…!」

マンガに出てた場所にいるって何か嬉しいなー

「久しぶりだなー」

全然来てなかったから懐かしいなーと嬉しそうな山本。そっか、今はマフィアなら野球やってないよな。

「なまえ先打つか?」

「は、ではお先に打たせていただきます!」

「おう、頑張れ!」

山本に見送られバットを持ってマシンの前に立つ。

カン…

「お!当たったのな!」

1球目、いいあたりとは言えないけれどボールは一応バットに当たってコロコロと転がった。…まだまだ!



「…はー久しぶりやったからあんましやったなー」

とりあえず1ゲーム終えて外に出る。結局空振りしたりもあってあんまりいいあたりは無かった。

「でも結構当たってたのな。よくやってたのか?」

「通学路にあったから放課後とかたまにね」

まあその時から大して上手くはなかったけど。1回あのホームランのとこに打ってみたいもんや。

「そっかー」

「さ、次は山本の番やで!」

「おう!久しぶりだから打てっかなー」

肩を回しながら言った山本。久しぶりでも打てるやろ山本なら。てゆーか普通に一番速いとこ行ったなー
そんなことを思いながら後ろに立ち山本を見守る。

カキン!

バキッ

「は…?」

「お?」

いい音がしたと思ったら山本の打ったボールは見事ホームランの的に当たり的は砕け散りました。

「ええぇ!?何それ!どんだけ威力あんねん!」

ありえへんやろ!ボールで的割れるって!まあちょっと古い感じはするけど。けど!

「ハハハ、びっくりしたなー」

「ちょ、山本笑ってる場合ちゃう…」

幸い他のお客さんはいなくて被害はなかったけど壊しちゃったしお店の人に謝らな…

「何かすごいが音したが…」

「!」

音を聞きつけてお店の人らしいおじさんがやってきた。砕け散った的を見て唖然としている。そりゃそーだ

「おっちゃん!」

「…武か!?」

「あれ知り合い…?」


出てきたおじさんは山本が中学の頃からいた人らしい。的のこともまあ古かったしな、と笑って許してくれた。懐かしいなー大きくなって!と盛り上がる2人。

「ところでこのお嬢ちゃんは?」

おじさんがあたしの方を見て言った。

「あ、みょうじなまえです」

ぺこりと頭を下げる。

「武の彼女かい?」

「おう、可愛いだろ?」

「違うから」

ニカッと笑って言った山本につっこむ。ほんまこの人何笑顔で嘘ついてんの。

「ハハハ、そーかそーか。それにしても久しぶりだなーまだ野球はやってんのか?」

「いやもうやってねーんだ」

少し寂しそうに笑って言った山本。

「そうか…まぁ色々あるんだろうがたまにはここにも来てくれよ。ほら、今日は奢りだ。お嬢ちゃんにもな」

そう言っておじさんはあたしと山本の前に紙パックの並盛牛乳を置いてくれた。

「おう、またなまえと一緒に来るのな」

「うん、次はあたしがホームラン打つから的直しといて下さいね!」

そう言うとおじさんはハハハと嬉しそうに笑った。


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「楽しかったなー」

あの後もらった牛乳を飲みながらおじさんと3人で並盛りの近況とか野球のこととか色々喋って。山本と2人で並盛りを散歩して。

「いつの間にやら夕方やなー」

「そーだなー」

夕日の綺麗な河原でのんびりタイム。

「今日夜ご飯何する?」

「んー…」

「…山本?」

気のない返事を不思議に思い山本の方を伺う。

「あのさ、手巻きにしねーか?」

「手巻き寿司?いいな!楽しそう!」

「へへ、なまえならそう言うと思った」

そう言って笑った山本。

「あたしならってどういう意味?」

「オレ手巻きってみんな揃ってやった方が楽しいと思うんだ」

「うん」

そりゃそーや。手巻きとか1人でやっても寂しいだけやとあたしも思う。

「今までも夕飯当番の時何回か手巻きやろーと思ったことあったんだけどさ、ヒバリも骸もあんまみんなと一緒にいたがらないしよ」

「…うん?」

まぁ雲雀さんは群れるの嫌いってずっと言ってるし骸もマフィア嫌いっつってるしな。言ってることは分かるけど言いたいことが分からず首を傾げる。

「今は夕飯の時ヒバリも骸も、任務の時以外はみんな夕飯揃ってるだろ?前まではみんな忙しくて夕飯揃うことってあんまなかったんだ」

「…そーなん?」

うちがそうやったからかもやけど夕飯って普通に全員揃って食べるもんやと思ってた…
だからさ、と山本が続ける

「こうやってみんなが毎日揃うのなまえが来てからなんだぜ」


ありがとななまえと言ってにかっと嬉しそうに笑った山本にあたしまで嬉しくなった。






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