9.ファンですから




「なまえ、起きて」

目が覚めるとツナがいた。

「ん…ツナ…?ここどこ…」

「何?寝ぼけてんの?もう夕方だよ。ヒバリさんがキッチンで待ってるって。夕飯当番だろ?」

呆れ顔のツナ。あれ、ここってアジト?雲雀さんと並中おったのに…

「いつの間に帰ってきたんや…」

「はぁ…覚えてないんだね。ヒバリさんが連れて帰ってきたよ。爆睡してて起こしても起きないって。夕飯準備まで時間あるから寝かせてあげてって言われたからソファーに寝かしといたんだ」

「そーなんや…」

ていうか気づかんかったんか…。我ながら呆れる程の眠りっぷりやな。

「早く行かないと咬み殺されるよ」

「うわ、本間や!急がな!あ、その前に着替えな!」

「ヒバリさんが着替えたら咬み殺すって」

「何でやねん!まぁええわ。エプロンしよ」

「気をつけて。何かあったら呼んでね。いってらっしゃい」

「ん、行ってきます!…あ!」

ツナの咬み殺されるよ発言に慌てて部屋を出ようとしたところで立ち止まる。

「どうしたの?」

「ツナ!ありがとう!」

「は?何が?なまえを運んだのはヒバリさんだよ」

「でも毛布かけてくれたんはツナやろ?」

「……!」

目が覚めるとかけられていた毛布。だから暖かかったんやな、うん。

「おかげでゆっくり寝れたわ。ありがとーな。夕飯当番頑張るから期待しとって!ほな!」

さぁ急がないと!とバタンと扉を閉めて部屋を出る。


「……何でそういうとこには気がつくんだろう」

ツナがそんなことを言ってたなんてあたしは知る由もなかった。



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「遅い」

「すみません!」

キッチンに行くと案の定少し不機嫌そうな雲雀さんが待っていた。

「まさかずっと寝てたの?」

「すみません…」

「僕が起こしても全然起きなかったし。呆れるね」

「………」

はぁとため息をついた雲雀さん。悔しいけど返す言葉がない。

「まあいい。早速作ろうか。はい、エプロン」


雲雀さんはあたしにエプロンを渡して自分もエプロンをつけていた。ふ、何か可愛い…とか言ったら殺されるな。良かった雲雀さんが読心術使えんくて。

「で、何作るんですか」

「ハンバーグだよ」

「ハンバーグ??……好きなんすか」

「悪い?」

「あはは、だって似合わな…!って嘘!美味しいよなハンバーグ!あたしも大好き!」

「そう。じゃあ玉ねぎみじん切りにしといて」

「了解しました!」

前言撤回!やっぱ雲雀さん怖い!可愛くない!なんやあのオーラ!対応に慣れてきてる自分が悲しいわ…

「……何泣いてるの」

「雲雀さんの睨みが怖すぎて…」

「思ってもないこと言わないでくれる。玉ねぎでしょ」

「…ちっ、バレたか」

別に思ってもなくはないけどな。あかんねん昔から玉ねぎ切るといっつも涙出てくる。

「貸しな。僕がやるよ」

「すみません…ってわ!早!雲雀さんも意外に料理上手なんですねー。ってか目しみないんすか?」

「しみないよ。僕は強いからね」

「いや、強いとかは関係ないやろ」

トントンとキレイに切っていく雲雀さん。マジで上手いな…

「暇そうだね。ソースでも作っといてよ」

「はーい…」

何か骸の時と同じパターンや。今度は野菜切っただけじゃなくてソース作っただけになりそう…。いや、諦めたらあかん!みんなが驚く最強ソースを作るんや!

「…顔にソースついてるよ」

ソース作りに意気込んで鍋をかきまぜていると雲雀さんが言った。

「へ?どこですか?」

右とか左とか言ってもらえることを期待して顔を向けると思ったより近くに雲雀さんの顔があって。え、と声を出す間もなく頬に生暖かいものが触れる。

「ここ…」

雲雀さんと目が合う。

「……!?え!?な、いいい今…何…!」

「いが多いよ」

「だって!何してんすか!」

今、雲雀さん、あたし、頬、な、なめられ…!
何が起きたか理解すると同時に顔が熱くなるのを感じる。

「何ってソースついてたから」

平然と言い放った雲雀さん。

「ついてたからって!何でなめるかな!?おかしいやん!何なん!?」

「いいじゃない。なまえは僕が好きなんでしょ?」

「はあぁぁ!!?」

なんやそれ!どっからそんな話出てきた!?

「『あたしやっぱ雲雀さん好きやなー』」

雲雀さんの口から出たのはあたしが屋上で言ったセリフ…

「―!?な!まさか雲雀さん起きて…!」

「起きてたよ」

「っ!寝たふりとか!性格悪いで!」

「寝たなんて一言も言ってないしね。だいたいあんなすぐに寝るわけないだろ。君が勝手に勘違いしただけじゃないか」

「う!確かにそーやけど…!」

けど!だって返事せんかったやん!

「僕のこと好きなら問題ないよね」

そう言ってニヤリと笑った雲雀さんが近づいてくる。

「いや!なにが!問題なくないやろ!近い近い!好きってそーゆー意味ちゃうから!」

「…じゃあどういう意味?」

あたしの言葉を聞いてピタリと止まった雲雀さんに尋ねられる。う、真顔…

「えーと…そう!ファンみたいな!?リボーンもツナも獄寺も山本も雲雀さんもみーんな好きやねん!!」

どーんと効果音がつきそうな勢いで宣言する。うん、そーや。あたしは純粋なかてきょーヒットマンリボーンという漫画のファンや!

「………」

「あのー雲雀さん?固まってますけど分かってもらえました?」

何故か固まってしまった雲雀さんの顔を覗き込む。

「…まぁいいか。今はそれで」

そう言ってふっと笑った雲雀さん。
何やその笑み。まぁ分かってくれたんならいっか。

「ん、じゃあ盛り付けして夕飯にしましょう!」

「…今は、ね」

「ぎゃ!またソースこぼれた!って雲雀さん何か言いました?」

「いや。バカだね。僕がやるからかしなよ」

「ちょっ、バカって雲雀さんまで!」

「並中の制服汚されたら困るんだよ。また次行く時に着るんだから」

「また行くんや…」



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「お待たせしましたー!」

広間に行くと既にみんなが揃って待っていた。

「おっ!今日はハンバーグなのな!」

「おうとも!」

雲雀さんの大好きなハンバーグやで!というと余計なこと言わなくていいからと叩かれた。あーあ脳細胞減った。

「さぁみなさん冷めないうちに食べましょう!いただきまーす!」

「美味しい…」

「極限に美味いな!」

「ハンバーグもですけどこのソースが美味しいですね…なまえさんが作ったんですか?」

「うん!」

ランボに尋ねられ頷く。

「今日はソースしか作ってないけどね」

「ちょっ、雲雀さん!バラさんでもええやんか!」

せっかくみんな美味しいっつってくれてんのに…

「でも本当に美味しいのな!」

「本当、なまえが作ったとは思えねーな」

そう言ったリボーンにどーゆー意味かな?と問えばそのままの意味だと睨まれた。

「それはそうと並中はどうだったの」

ツナに尋ねられる。

「制服似合ってるぜ!」

「本当に中学生みたいだな」

「だからそれ嬉しくないから。楽しかったで!ソーメンパン食べた!」

「ソーメンパン?ああ、購買の…」

「まだあったのか…」

懐かしいなーと振り返っているツナと獄寺と山本。

「美味しかったでー初めての味で。屋上でってのも良かった。今度みんなで食べたいな!」

「…並中でか?」

微妙な顔で聞いてきた獄寺。

「もちろん!制服でな!」

「オレ達23なのに制服なんてもう着れないよ」

「大丈夫やって、雲雀さんも学ラン着とったから…ふっ」

「何で今笑ったの。咬み殺すよ」

「いや何でも!!」

雲雀さんに睨まれ慌てて首をふる。危ない危ない。ヒバリさんなんかもう24歳やのにとか思ったら思わず笑ってしまった。

そんなこんなで楽しい夕食を終え、雲雀さんと過ごす長い1日が終了した。



さて、今日1日で何回咬み殺すって言われたかな








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