※美大生静雄×モデル臨也 ※あなたによって創られる と同じ設定です 「臨也、今日終わったら飯くってくだろ?」 そんな一言でも俺は酷くうれしくなって舞い上がってしまう。彼に他意はなく、親切心で言ってくれているのだろうけれど、期待せずにはいられない俺がいる。 シズちゃんの課題彫刻のモデルのバイト。代金はおいしいご飯とデザートと時々お土産。 ボランティアみたいなことだけど、でも俺はこのバイトが気に入っている。 シズちゃんの真剣な目に見つめられるのは恥かしいけど心地いいし、俺が緊張してるのをみてすこし笑うシズちゃんはかわいい。かっこいい。シズちゃんのご飯は絶品だし、甘党のシズちゃんはどんなお菓子を作らせたってその辺のお店で買うよりもおいしい。(すこし甘すぎるのが玉に瑕だけど、まあその辺は気にならないほどおいしい。) それになにより、ほんとに偶然出合って、一目ぼれしてしまったシズちゃんと時間を共有できることは奇跡だから、大事にしたい。あと何回こうしてここを訪ねてこれるかわからないけれど。 今日分のノルマは終わって、シズちゃんは彫刻刀をふき取ったり石膏を集めたりしている。俺はかたまってしまっている背筋を伸ばし、はあ、と大きく息をついた。彫刻の向こうから、シズちゃんが疲れたか、と声をかけてきて、俺は、ちょっとだけ、と答えた。 アトリエには昼間の高くなった太陽の光が差し込んできて、ガラス張りの天井が光を反射させて、きらきらとしていて綺麗だ。あたたかな陽光は心地よくて、俺は椅子に座ったままゆっくりと目を閉じた。次に起きた時に、シズちゃんがそこにいたらいいなあ、と思いながら。 # ノルマを終えて片づけをしていると、臨也がすうすうと小さな寝息をたてていた。 このアトリエは俺の前に住んでいた先輩から、綺麗に使うことと手入れすることを条件にかしてもらっている。寒さや暑さには極端に弱く、夏は冷房が、冬は暖房が欠かせないのだが、ガラス張りで、太陽の光を目一杯受け入れるここは気に入ってる。 そのアトリエでうたた寝をし始めた臨也から、俺は目が離せなくなった。屈折し、反射した陽光を受け入れ、吸い込むようにして肌の白さを際立たせ、それとは真反対の黒髪もきらきらと輝き、閉じられた長い睫は影をおとしつつ光の粒子を乗せていた。色づいた頬も薄く開かれた唇も何もかもが完璧で、美しい。 (目、離したく、ねえな) 臨也が起きる前に昼飯を作ろうと思っていたが、どうもできそうにない。 近くにおいてあったスケッチブックを手にとって、鉛筆であの美しさを閉じ込めようとしてみる。ときおり震える睫を眺めながら、俺はせわしなく鉛筆を動かした。 # 目が覚めると、辺りはすっかり暗くなっていた。アトリエのガラスにはカーテンが引かれている。俺、あのまま寝ちゃったのか。 きょろ、と見回してみるが、シズちゃんの姿はない。キッチンから美味しそうな香りと、音が聞こえてくる。俺は吸い寄せられるようにアトリエから出て、キッチンでシズちゃんの後姿を見つけた。 「ん、お、起きたか。飯、食ってくだろ?」 「ん〜。寝ちゃってごめんね。起してくれたらよかったのに。」 そう言うと、シズちゃんはすこし驚いた顔をして、もったいねえだろ、と言った。いや、もったいなくないよ、むしろ寝て過ごしちゃった時間のがもったいない。あ〜もったいない、寝ちゃうなんて、俺のバカ。 「よし、できた。臨也。皿出しといてくれ。その、でかいやつ。二つな。」 「はーい。あ、おいしそう。ピラフ!」 皿を並べて、グラスにお茶を注ぐ。シズちゃんの家でのご飯に慣れた俺は、どのお皿がどこにあるかだとか、グラスはどこだとか、あらかたのことは覚えてしまっていた。 シズちゃんと向かい合って、一緒のシズちゃんの作ったピラフを食べる。字面にしてしまうと簡単だけど、これってすごく、幸せなことだ。 「…なあ、お前っていつも、なにしてんだ?」 「?いつも、って?」 ピラフをお茶で流し込んで、シズちゃんは俺の目をじっと見ながら言った。俺は首を傾げる。いつもって、仕事ってことかな? 「いや、だから、学校とか、どこいってんだってことだよ。」 「へ?学校?って、大学ってこと?」 訪ねると、今度はシズちゃんが首を傾げた。ん、ん?なんだか、すごく、誤解があるような気がするよ? 「まってまって、シズちゃん、俺のこと、いくつだと思ってる?」 「…21、で、俺とタメ…じゃねえのか…?」 頭がいたいです、シズちゃん。 「俺は、26歳で、社会人だよ、シズちゃん。」 続いてしまいました^^ 年下攻めがな、すきなんや… |