小説 | ナノ


※来神時代



カリカリとシャープペンシルの細い芯が紙を引っ掻き痕跡を残していく。
金曜日の六限目。明日からは休日。集中力散漫になってもおかしくはない。
俺は教師の呪文を聞き流しながら(エックスワイニジョウイコールウンタラカンタラ)隣席の臨也をちらりと盗み見た。
臨也は真面目に黒板と教師を目で追っていて、時折綺麗に整理されたノートに授業内容を板書していた。
窓の外からか体育のクラスの声が聞こえてきて、俺はうとうとと目を閉じた。
一瞬臨也がこちらを見たように感じた。


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「シズちゃん起きてったら!」

ゆさゆさと肩を揺らされて、俺ははっと目を開けた。教室は夕焼けに染まっていて、臨也が困ったような顔でこっちを見ている。

「よく寝てたねえ。私は学校であんなに寝れないよ。ああ君はずぼらだから…すいません殴らないでください。」

教卓前に立っていた新羅のペラペラよく動く口を一瞥で黙らせて、俺は固まった体を延びで解した。ぱきぱきと背骨が小気味よい音をたてる。
俺を起こした臨也はぺたぺたと黒板前まで歩いていくと、所狭しとかかれた魔法陣(ホウテイシキヲトイテソノトウヲエックスニダイニュウンタラカンタラ)を消し始めた。(そういえば臨也は今日日直だ)新羅は携帯を取り出し、ぱっと顔を輝かせた。

「臨也、静雄、セルティが呼んでるから僕はお先に失礼するよ!」
「えっ!?ちょ、しんら、まって……って早っ!」

新羅は鞄をひっつかむと普段の行動からは考えられないくらいの速さで教室を出て行った。臨也はぽかんとそれを見送り、そして一瞬ちらっと俺をみた。それに気付いて見返すと、ぱっと目をそらされてしまう。
耳が赤くみえるのは、夕焼けのせいだろうか。

きゅっきゅっと臨也が黒板を擦る音が聞こえる。
外からはキーンとバッドが高い音をたてて、ナイバッティーだとか、さがれさがれ!だとか、ランニングの掛け声だとかが聞こえてきた。
そっと黒板に近付いて、臨也の隣にたつ。
臨也は俺に気付いているけれど、こっちをみようとしない。
しゅっ、と黒板消しが情けない音をたてた。臨也は小さく背伸びをして上へ手を伸ばすが、二段になっている黒板の一番上までは届かないようだ。(ぷるぷるしててなんかかわいい)しゅっしゅっと何度か往復して、困ったように見上げた。
俺は臨也の手から黒板消しをとると、少しだけ残された白線の文字を消した。
つい、と臨也が俺のブレザーをひっぱって、ありがと、と聞こえるか聞こえないかくらいの声でいった。
俺はその手を握って臨也を上向かせる。
橙になった瞳を覗き込んでキスをすると、臨也は恥ずかしそうに目を閉じた。
唇を離して息をつき、臨也はまた縮こまって、恥ずかしいなあ、と腹を殴ってきた。
遅くなった日の入りと少し温かい風が冬の終わりをつげた。





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