シズちゃんが好き。シズちゃんが大好き。それこそ世界中を敵にまわしてもいい位好きで、どうやらこの思いは俺の一方通行じゃなかったってことが、最近わかった。 それが嬉しくって、もっとシズちゃんと一緒にいたくて、くっつきたくって、好きっていいたくていわれたくて、抱きしめられたくて抱きしめたくて、キスしたくてキスされたくて、日に日に願望が募って、それでやっぱり会いたいから、今日は用もないのに池袋のシズちゃんのアパートまで来た。連絡もなしに来た俺を、シズちゃんは嫌がりもせず家にいれてくれた。 「ねーシズちゃーん」 「なんだよ」 「なんにもー」 「なんだ、そりゃ」 バーテン服じゃない、青い大きめのセーターを着たシズちゃんが新鮮で、かっこよくて、俺の気持ちはまた舞い上がった。 「…臨也」 ただぼーっとシズちゃんを見ていたら、(もちろんシズちゃんのことばかり考えてた)シズちゃんが不意に声をかけてきた。目を合わせて、首を傾げる。するとシズちゃんは明後日の方向を向いてしまった。 「…?、シズちゃん?」 「あー…、あれだ、臨也。お前、今日はもう帰れ。」 明後日の方向を向いたまま、シズちゃんは言った。え、何それ。 「…なにそれ、なんで?」 「なんでって…。なんでもいーじゃねーか。とりあえず、帰れ。」 シズちゃんはやっぱりこっちを向いてくれない。 俺は悲しくて、でも泣くのは止めようと必死でこらえた。 「…シズちゃんと俺の気持ちは、一緒じゃないの?」 声をだしたら泣いてしまいそうだったけど、どうしてもこれだけは聞いておきたかった。それで、少しでも頷いてくれれば、そうだって素っ気なくでもいい、言ってくれれば、俺はどうにか家まで我慢できるだろう。 「…いや、多分、ちげえだろ。」 ばきりと割れるような衝撃が体中を駆け抜けた。何事かと思って体を見下ろしたけど何もなくて、それが心がたてた音だって気付いた。 違うんだ。だったらいままでの嬉しさは俺の勘違いだったのか。あれ、馬鹿みたい。 数分前まではきっと、シズちゃんのどこが好きかって正座でもして100個くらい言えそうだったのに。(もちろん今でもきっと言えるんだけど) 「わかった。帰る。」 「あ、おい臨也。」 立ち上がった俺の手首を、シズちゃんはちょっと残念そうな顔をしながら掴んだ。何その顔。自分が帰れっていったんじゃん。 「次はいつ暇なんだ?」 「…あと二週間は暇なんてないよ。ごめん用事思い出したから、離してよ。」 そう言って手を振り払うと、シズちゃんは泣きそうな表情をした。泣きたいのはこっちだ。 「…臨也。」 「じゃあ、ばいばいシズちゃん。」 それだけ言って部屋を足早に出た。あれ以上あそこにいたら多分泣くし。 少し振り返ったときに見えたのはシズちゃんの暗い表情だった。  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄またちょっとつづきます。次で終わるはず。 リア充爆発しろ! |