小説 | ナノ


※来神捏造




ざざざ、とテレビが砂嵐を映し出した。薄暗い部屋に不快な音が響き、テレビの周囲だけがぼんやりと照らされる。
ソファーに浅く座り、俺は組まれた手のひらが湿っていくのを感じた。横でソファーに三角座りしている臨也を見やると、食い入るように画面を見つめている。俺は、兎に角こいつに自分が怖がっていることを悟られないように必死だった。




新羅が昨日セルティとホラー特番をみたようで、あいつは朝からずっとその話し(セルティがどれほど可愛かったかという内容でホラー的要素は皆無だったが)ばかりしていた。俺はいい加減新羅の惚気には飽き飽きしていたところだったから、適当に言い訳をつけて帰ってやろうとした。
臨也は立ち上がった俺のズボンを掴むと、にたりと笑ってこう言い放った。

え、シズちゃんそんな大きい図体して怖いの苦手なの?だっさぁっ!

それがことの始まりだった。
売り言葉に買い言葉。んなわけねぇだろ、つうか怖がってやがんのはてめえの方じゃねえか、と反抗した俺に臨也はじゃあどっちが怖がってるのか白黒つけようじゃないか、とまた笑った。
新羅はまだ一人で話し続け、門田はまたか、と溜め息を吐いた。




#



映画(あの有名な井戸から女がでてくるやつ)が始まってからまだ数十分しかたっていなかったが、俺ははっきりいってもう帰りたかった。なんで昼間あんなこと言っちゃったんだろう。いや、まあ単純にシズちゃんの家に行きたかっただけなんだけどさ。でもそんなこと恥ずかしくっていえないじゃん。それにシズちゃん、付き合い始めてから時々妙に余所余所しい時あるから(例えばプールの授業の後とか、体育の授業の時とか)、もし来んなとか言われたら、なんか、立ち直れない気がするし。

隣に座ってるシズちゃんを盗み見ると、つまらなさそうに画面を見つめてた。つうか、なにその冷静な感じ…今超怖いじゃん、なんか井戸から出てきてるじゃん!

「……っ、」

テレビから、テレビの中のテレビから、女が、でてきた。無理。




#




映画が佳境に入った辺りで、横の臨也が小さく息をのみ身じろいだ。確かに映画は怖いが、なんつーか、この女が妙にリアルすぎて、逆に怖さは感じない。
時計を見ると針は12時を少し過ぎたところを指している。見始めた時間が遅かったからな。
こんな夜中に臨也と居るのは初めてだ。

「……っひ、」

ずるり、嫌な音をたてながら女は徐々に主人公の男へと向かっていく。
臨也は大袈裟に肩を跳ねさせ、ぎゅ、と俺の上着の裾を握った。なんだこいつ。可愛いじゃねえかよ。

「う、うう…何やってんのなんで逃げないの馬鹿なの…?」

ぶつぶつ臨也はテレビの中の男に文句を言うと、更に強く服を握りしめる。勝負は忘れてしまったようだ。
いや、そんなことよりも。
この状況は、なんか、やばい。かなりやばい。
普段から臨也の行動や仕草や表情は俺にとってかなり扇情的だった。(例えばプールの後の首に張り付いた濡れた髪とか、体育の時のうすいジャージに包まれた華奢な体とか)
今は、薄いインナー一枚で、体はかなり密着していて、

「…っシズちゃっ…!?」

なんか、色々切れそうだ。ぐ、と肩を抱くと、臨也はこてんと体をこちらに預けた。

「な、なに、もしかしてシズちゃん怖いわけ?ふーんあっそ、そうならまあ俺が手握っててやんないこともないよ。」

怖がってんのはてめえだろ、とは、言わなかった。
とりあえず俺は映画が終わるまでは我慢しようと思った。





オチがNEEEEEE!!!!!


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