小説 | ナノ


※来神捏造



じりじりと照りつける太陽が憎い。夏は嫌いだ。暑いから。それで、目の前のこの暑っ苦しい金髪も、嫌いだ。

「臨也ァ…てめえ、よくも水ぶっかけてくれたなあ…?あ?」

「いーじゃん、シズちゃん暑苦しいし、それでちょっとは涼しくなるんじゃない?」

は、と笑うと、シズちゃんはまたぶちぶちと青筋を浮かび上がらせ、こっちを睨んだ。ただでさえ暑いのに、ほんと嫌になる。
朝から汗かくしシャツは張り付いて気持ち悪いし。イラつきは最高潮。そこに夏でもイヤに元気なシズちゃんが妙に清々しい顔してたもんだから、校長が間抜けな顔してまいてたバケツの水をふんだくって、シズちゃんにぶっかけてやった。
案の定シズちゃんはぶちぎれていつものような追いかけっこが始まった。俺は朝練をやってるサッカー部を通り抜けて、野球部のバックネットまで走る。走ろうとした。でもすぐに捕まった。
いつもより暑いからか足は動かないしすぐ息あがるし、もーやんなる。
野球部のうるさい声が聞こえるなか、バックネットの裏の野球部用の物置に追い詰められる。
後ろには廃れた物置。前からは汗なのか水なのか(多分、大半は水だろう)わからない水滴を垂らしたシズちゃん。あーあ、全部鬱陶しい。

「シズちゃん、暑いしもうやめよーよ。」

「あ!?てめえが水ぶっかけてこなけりゃよかった話じゃねえか。」

「涼しいでしょ?水ぶっかかってさあ。水も滴るいいシズちゃん?は、うける。」

つうか、近付かないでくれるかな。暑いし、飛沫とぶし。
手をぱたぱた振って、あっちいけ、とジェスチャーすると、何故かシズちゃんはにたりと笑って、一歩足を進めてきたこと。ちょっと、離れろって意味のジェスチャーだったんだけど。どこまで単細胞?
視線から逃げるようにそっぽを向くと、乱暴に頬を掴まれた。いてえよ、馬鹿力。

「臨也ぁ、てめえよお…なんでそうも毎日毎日ふっかけてきやがんだよ?いい加減にしろよてめえ…」

ああ鬱陶しい。知るかよ。なんかシズちゃんの顔みるとイラつくんだよ。
ぎ、と睨んでやる。シズちゃんはなんだかよくわからない顔をしたあと、ぐい、と俺の腕を引っ張った。よろりとシズちゃんの濡れた胸に手をつく。びく、と一瞬シズちゃんの胸板がゆれた。ぱたぱたと頭に水滴が落ちてくる。なにすんだ、と視線上げた。

「…は、?」

「…いってえ、」

あげた視線の先には、先ほどまで金と肌色しかなかったはずのシズちゃんの顔に、赤が垂れていた。
そして、転がる、赤が付着した白球。

「な、なにしてんのシズちゃん…」

「うるせえ。…球飛んできてたんだよ。」

いや、みりゃわかるよ。問題はそこじゃない。

「なに俺のこと庇ってんだよ…」

驚きで、まともな言葉はでてこない。ただ真っ直ぐに本音をぶつけることしかできない。
シズちゃんはばつが悪そうに視線を逸らして、あーとかうーとかいっている。つか、なんだその顔。明らかに血ではない朱が顔を覆っている。なに赤くなってんのコイツ。まじまじと見つめると、見んなと言われて、顔を逸らされた。

「………」

「………新羅んとこ行けば…?」

ついでに頭もみてもらえよ、なんて言葉は、自分に返ってくるかもしれないから、言わなかった。ああ鬱陶しい。暑いせいだ。全部そうだ。だから俺の顔が熱いのも仕様がない。だって夏だし。あーあ。だから夏は嫌いだ。



(惚れたら負けだとわかってはいた)(…いた。いた。いたはずだった。)(でも俺が先ではないはずだし。)





臨也視点
最近夏のはなしばっかりかいてるなあ
静雄視点もいつか書きたい
title/ZINC


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