小説 | ナノ


ピンポーン、と甲高い機械音が部屋に鳴り響いた。うるっせえ。まだ5時だぞ。無視して瞳を閉じようとすれば、今度は連続で鳴り響く。ピンポンピンポンピンポン。
ああうぜえ!卓球ならよそでやれよ!
がちゃ、とノブをひねり、扉を開ける。途端に、視界がピンクに埋め尽くされた。そのピンクを持つ人物は案の定あの人を喰ったような情報屋だ。
突き出された淡いピンクの花弁はやんわりとした香りを漂わせる。つうか、なんだこれ。

「朝顔だよー」

「んなこと知ってるっつの。」

朝っぱらから何の用だよ。
鳴り響くインターフォンに低血圧な体を鞭打って起き出したら、満面の笑みを浮かべた臨也がでかい鉢に朝顔を生けて立っていた。その笑顔に怒る気力さえおきない。取りあえず部屋に招き入れ、俺はもう一度布団に横たわる。あーねみぃ。

「えー、シズちゃん、寝るのー?」

「うっせえ…まだ5時だぞ…寝る。」

「えーえーえー…」

ああもう、ほんとにうるせえ。しかもうぜえ。ここ最近あちいし蒸すし、ほんとにイラつく。こいつは夏になってもあの暑苦しいコート着てるし(これは夏仕様なの、とかなんとか言ってたが、とにかくうぜえ)(すこしは体のラインが見える服着ろよ)(ああでもそれはそれでうぜえけど)とにかくうぜえ。
ねーねーじゃねえようるせえな。あ、でもこいつ体温異常に低くなかったっけか。薄いシャツ越しに伝わる掌はひんやりとしていて心地がいい。

「あ、起き、たっ!?」

寝返えると、臨也は枕元に座っていた。嬉しそうに顔を綻ばせてる。肩に置いてあった細い手首を引き寄せると、いとも簡単に引き込まれてくる。
ああ、やっぱり冷たい。

「シズちゃんあついー」

「黙ってろ。」

もぞもぞ動く臨也の体を強く、潰さない程度に抱き寄せる。ようやく大人しくなった髪をくしゃくしゃと撫でた。あーつめてえ。 

「ねー」

「…んだよ。」

「朝顔咲いた。」

「…。」

臨也は胸に埋めていた顔をゆるゆるあげた。瞳はピンクを映している。柔らかな睫はぱちぱちと幾度かまばたきを繰り返した。

「…なんか俺も眠い。」

「あー…おい。」

「んー?」

目を擦る手を掴む。冷たかったのに、今は熱い。

「住むか。」

「へ?」

「一緒に。」

ぱちぱち。長いまつげは震えて、そしてゆるりと孤を描いたのだった。





かわいざやを目指して
ただのうざやでした。

タイトルのheaven gateは至上の幸せ…て意味…だった気が…


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